世界のメジャーオーケストラを仮に30楽団とすると、その定期演奏会に必要なピアニストの数はせいぜい14、5人、ヴァイオリニストは7、8人、チェリストに至っては2人で十分
とも言われる。にも拘わらず、国際コンクールは、第一位や入賞者をどんどん吐き出している。予備群や次世代の奏者を見付けておく必要はあるだろう。それにしても「コンクール優勝者が多過ぎる」(p273)。国際コンクールは、もはや第一級の名コンサート・ソリストを見出す場ではなく、素人のど自慢大会的な「研究発表会」(p309)という風に、その性格を変えてしまっているのかもしれない。引用は、中村紘子著「チャイコフスキー・コンクール-ピアニストが聴く現代」(新潮文庫、12年)から(p302)。単行本はバブル期の88年刊、その翌年、第20回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
「蜜蜂と遠雷」を読んでこの本のことを思い出し30年ぶりに再読。小説とノンフィクションの違いこそあれ、各々、一つの国際コンクールを題材にしている。第6回芳ヶ江国際ピアノコンクール(架空)と、第8回チャイコフスキー記念国際コンクール(86年)。
# 蜜蜂と遠雷(サイト内)、中村紘子(1944-2016年)、庄司薫(1937年-)、クラシック音楽の非本場人(p54)、あの偉大なノギ大将(p143)、きちんと弾くが個性に乏しい(p222)、先生たちは何をしているのだ(p269)、Pf演奏のトライアスロン(p281)