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2026年03月03日の記事は以下のとおりです。

N響公演はどう語られるか

N響公演の放送での案内役が今の方に代わって何年になるだろうか。彼女の、はしゃぐような語り口は、どうもしっくり来ない、と聞く度に思う。公共放送のNHKにとって、自局専属オーケストラであるN響の演奏会放送は、文化枠での中核番組だろう。それにはそぐわないように感じられて仕方がない。
 
口調の好き嫌いなど趣味の問題、と言ってしまえばそれまでだけれど、番組を放送しているのは天下のNHKだ。案内役に誰を選び、その人に、どのように語らせるか、そこには制作者側の意図が込められているはず。その意図を解き明かしてみようと考えた。
 
2月にNHK-FMで放送された第2055回定期公演(【解説】舩木篤也【案内】金子奈緒)を採り上げることにした。同じ解説者による第2045回、第2047回、そしてN響「第9」演奏会が手元に音源が残っていたのでこの3本も追加。さらに、別の解説者による第2049回(【解説】野平一郎)を対象区とした。【案内】金子奈緒は、5本すべてに共通している。なお、いずれの音源も、らじる★らじるからスマホのアプリらくらじ2でダウロードした。
 
分析資料をつくるために、語り部分の音声ファイルを作成。普段は、その語り口を聞きたくないので、すっ飛ばしている語り部分だけを、元音源(m4a)からffmpegで切り出し、繋ぎ合わせて一つの音声ファイルにする。一回分で15分前後の長さになった。
 
そして、その音声ファイルから逐語文字起こしする。これはAIに手伝ってもらった。何が面倒くさいって文字起こしはその最右翼だろう。これをAIがやってくれるから、この一連の作業をやる気になったと言っても良いくらいだ。かなり頑張って文字にしてくれる。
 
ただし、その精度には限界がある。例えば、解説者がしゃべっている時に案内役が相槌を挟む場面。話者が区別されなかったり、相槌が抜け落ちたり、ということが起きる。現在無料で使えるAIの場合、モデル選定や条件設定を慎重に行っても完璧は期待できない。そこそこ発生する。以下はその例、
 
修正前)解説:はい。えーっと、これはあの、非常に軽快な演奏でしたね。えー、軽快だからって言って何もその内容がどうのこうのということではなくて、非常にこうテンポ感がいいというか、あー、どんどん、どんどんこう楽想が進んでいくっていう意味で、非常にあの軽快な演奏だったと思います。
 
修正後)解説:はい。えーっと、これはあの、非常に軽快な演奏でしたね(案内:はい)。えー、軽快だからって言って何もその内容がどうのこうのということではなくて、非常にこうテンポ感がいいというか(案内:ああ)、どんどん、どんどんこう楽想が進んでいくっていう意味で(案内:はい)、非常にあの軽快な演奏だったと思います。
 
という具合に、AIによる文字起こしテキストに対し、手作業で、修正、追記を施す。相槌や笑い声が語りの雰囲気に影響するので丁寧に書き入れていく。手間はかかるけれど、一から文字起こしすることを思えばだいぶまし。
 
資料づくりの最後に、語り機能タグ、[鑑賞補助]、[価値誘導]、[感情共有]、[祝祭フレーム]などを、相当する発言に付ける。
 
そして分析。その結果は、自分でも驚くほどはっきりしていた。案内役は、どうやら番組の中で明確な役割を与えられているようで、同調シグナルや、感情温度の上げ下げ、フレーム補強は常に発動している。解説者が、祝祭方向に強く振ると共振するし、構造説明に振ると抑制的に働く。解説者の語りを増幅する係になっているのだ。あのべちゃべちゃと纏わり付くような口調でそれをやられると、いやほんと、閉口する(あくまでも個人の意見)。
 
これに関連してコラムを一つ書き、NHKへの投書を二通送った。以下は投書の一つ。
 
いつもN響公演の放送を愛聴しています。最高水準の演奏を全国どこでも共有できる公共放送の役割に深く感謝しています。一つ番組制作への提案があります。以前から、案内役の方の語り口が「感動の先導」に傾いているように感じています。「室温が上がるほどの熱狂」といった演奏後の感情的な形容や、「ゲネプロも拝見したのですが」という関係者目線の発言は、熱意の表れと理解しつつも、ラジオの前の聴取者には「身内のサロン的熱狂」に聞こえ、疎外感を覚えることがあります。オーケストラ鑑賞の醍醐味は、響きの変化を聴取者自身が真っ新な耳で受け止め、独自の解釈を深める「余白」にあります。案内役には、聴取者の感動を規定・先導するのではなく、客観的な情報の提示と専門家の解説をフラットに引き出す「静かな伴走者」であって欲しいと願います。聴く者の想像力を信頼する、より成熟した番組作りを期待します。
 

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