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ピークとは何か

  • 2022/01/14 06:32
  • カテゴリー:読み物

ピーク時に当該本人がはたしてそれと意識できるものなのか、どうか。すなわちそれと認識し対象化することはすこぶる難しいことなのではないか。それこそあとになって、振り返って改めて気づくことでこそあれ、ピークの渦中にあってそれと思い及ぶことは困難なのではあるまいか。

野呂邦暢は42歳で他界した。芥川龍之介や、梶井基次郎、中島敦らは三十台で夭折。皆ピーク時に病で斃れた。深谷考著「野呂邦暢、風土のヴィジョン」(青弓社、2018年)に収載の「ピークとは何か」から(p114)。

作曲家の吉松隆氏による分析では、著名な作曲家の多くは、26-29歳の頃に最初の傑作を書き、ほぼその十年後の35-45歳頃に代表作となるような力作を生むピークを迎えている。あの天才モーツアルトの場合、29歳で「フィガロの結婚」やハイドンセットを世に出し、死の年、35歳で、レクイエムを書いた。

当時それを読んで自分のことを考えた。大きな成果と言えるものを実行したのは、果たして何歳のときだったろうかと。「あのクロスライセンス契約をまとめたのは、34歳のときだった。そして、海外二社との大部な契約を行ったのは、48歳のとき」。そんなことを書いている(2013年12月)。音楽や文学の大家たちと比べるのはおこがましいけれど、自分にもピークらしきものがあったのかもしれない。還暦の今年、あらためて思い返してみよう。

野呂邦暢中島敦(いずれもサイト内)。吉松隆著「モーツァルトがもう少し長生きしたら、もっと傑作を残しただろうか?」(河出書房新社、2013年、KAWADE夢ムック文藝別冊モーツァルト、p103)

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