サイエンス小話
- 2021/03/20 06:37
- カテゴリー:読み物
古い銀食器の黒ずみや温泉地での銀の指輪やネックレスの黒ずみは、よく観察されますが、これは銀が空気中のイオウ成分と反応して硫化物が生成するからです。
そうか、硫化物なんだな。引用は、中西載慶著「サイエンス小話-身近な物質から好奇心を育てる本」(東京農業大学出版会、2011年)から(p47)。
銀でそこら中を真っ黒にしてしまったことがあった。最初に勤めた会社で研究所に配属されてしばらく経った頃のこと。ある国との共同研究で植物由来の化合物を扱うことになった。HPLCで分析してみるとピークの形状がシャープじゃない。その原因は、先方が知らせて来た化学構造式から推測がついた。側鎖の途中に二重結合がある、おそらく、cis/trans 異性体が混ざっているのだろうと。試しに、移動相に硝酸銀を入れてみた。するとピークは見事二つに分離。この系で分析やら分取やら検討を進める内に、いつの間にか少しずつ液が漏れ出し、液クロのポンプと言わずカラムと言わず、辺りの金属類が黒ずんで行くのだった。結局、あの研究はどうなったんだったか、忘れてしまったなぁ。
# The Coordination of Silver Ion with Unsaturated Compounds - JACS