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台湾と香港、22年4月

タイトルに台湾を掲げた社説を久しぶりに見た。六紙社説では、ウクライナ危機以降で初めてだと思う。それとは別に香港に関する社説もあった。

まず、「台湾の防衛体制 ウクライナ危機が強化促した」(読4/13)。米国は、台湾に対し「防空システムの支援など、関与強化の姿勢を示している」。が、台湾は、米国がウクライナ危機に、直接、軍事介入しないことに「不安」を感じている。「米国頼みの防衛」でいいのかと。自助で「蔡政権は防衛予算を増やし、ミサイル戦力や艦船の増強」を進める。さらに「軍への動員体制を見直す方針を示した」。

髙橋洋一氏が「戦争確率を減少される要因」として、1)防衛費、2)同盟、3)相手国の民主主義などを挙げている。これで台湾の事情を考えてみよう。中台の場合、3) は期待できない。2) の後ろ楯があやしいので、自分たちでコストかけて何とかする、という判断だろう。

読売のこの社説は、香港を引合いに出す。「香港では力ずくで民主派を壊滅させ、一国二制度を骨抜きにした」。習国家主席は、台湾にも空々しく一国二制度に基づく「平和統一」を言うが「武力統一を排除していない」。台湾への「力ずく」は軍事侵攻になる。

その香港に関する社説「香港行政長官選 消えた一人一票の希望」(東4/14)。5月の長官選挙で、「李家超(りかちょう)氏の当選が確実視されている」。中国政府が現職の林鄭長官に見切りをつけ、「警察官僚出身で民主化運動弾圧に強権をふるった」「タカ派の李氏に乗り換えた」と見られている。香港が「さらに厳格に管理された警察都市に変わってしまう」と懸念される。

さて、4/11週の六紙社説が、そのほかに採り上げた題材は、ウクライナ情勢、米印首脳会議、北欧2国NATO加盟か、日比2+2、欧州IT規制、外国籍の子供に日本語教育、東証市場再編、悪い円安、諫早湾干拓、文書費改悪、ヤングケアラー、新電力の撤退、佐々木投手完全試合などだった。

六紙社説(サイト内)。ウクライナ侵攻で日本の野党は「防衛費」と「原発再稼働」というタブーにどこまで迫れるか|髙橋洋一「ニュースの深層」。ニクソン訪中50年 台湾海峡の平和が原点だ(毎2/21)

出生数最少に

出生数が急減している。昨年2021年、これを題材とした六紙社説は9本。日本経済新聞が4本で突出して多い。経済紙が注目するほどに、少子化は経済に大きな影響を及ぼす可能性がある。

日経は今年2月にも書いた、「急速な少子化は社会、経済の活力を奪い、社会保障制度の維持を危うくする」。つい先日、東京新聞も採り上げた。それらタイトルにこうある、「出生急減に危機感をもっと」(経2/26)、「効果的な対策をもっと」(東4/4)。二つ並べてみると、だいぶ足りていないことが伝わって来る。

チャーチルが何か言っていたように思う。"チャーチル 名言 ミルク"でweb検索すると出て来た。そうそうこれだ。「どんな社会であれ、赤ん坊にミルクを与える以上に素晴らしい投資はない」。出生や子育ての問題は、政策によって大きく改善できる。近年のフランスのように奏効した例もある。社説も言う、政府は「若者たちが安心して結婚・出産できるよう効果的な対策をいくえにも打ち出し、確実に実行する」ことが不可欠(東4/4)と。

昨年の出生数は「80万台割れは避けられたもよう」(経2/26)とある。今年還暦の1962年生まれは162万人。団塊世代と団塊ジュニアの山脈に挟まれた谷間の世代ではあるけれどそれくらいの数があった。60年経って、半分になってしまったんだな。

さて、4/4週の六紙社説。首都キーウ近郊の虐殺や避難民受入れなどウクライナ情勢について各紙が書いた。そのほかには、コロナ第7波や、東証の再編、温暖化報告書、岸田政権発足半年、私立大の改革、文通費改悪、米核戦略見直し、などが話題になった。

琉球新報の記者が取材中に米兵に銃口を向けられた件、東京新聞が怒っている。「報道の自由への威嚇だ」(東4/6)と。

六紙社説(サイト内)。2021年の9本 朝0毎1東1読1産2経4。「少子化対策 予算も増やしてこそ」(朝2020/12/17)

改正沖縄振興法

改正沖縄振興特別措置法が成立した。3月末だった期限がさらに10年延長。50年前の復帰以来5次にわたる振興計画が策定されて来た。改正を受け、沖縄県は、第6次計画を5月目処に正式決定する。

政府は新年度の振興予算について、10年ぶりに3000億円を下回る2680億円に減額した。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、反対姿勢を強める玉城デニー知事と、政府・与党の対立も影響しているのだろう。

減額されたのは態度が悪いからだよ、と忠告してくれているのかな。読売新聞の社説「改正沖縄振興法 未来を形づくる歩み着実に」(4/1)から。この改正を伝える六紙社説は他に見当たらない。読売は一年前にも「国と協力して経済の再生図れ」と沖縄振興計画を社説で採り上げた(2021/4/5)。

こういう声も紹介している。「公共事業での高い補助率や税制優遇措置などがかえって競争力を弱めているのではないか」(読4/1)。地元紙の沖縄タイムスも、「自立へ着実に前進を」と社説(4/1)に書いた。「延長はこれが最後という覚悟も沖縄側には必要」とも。

社説の沖縄、21年(サイト内)

道警のヤジ排除は違法

2019年参院選の際、安倍晋三首相(当時)の街頭演説にヤジを飛ばし、北海道警に現場から排除された聴衆二人が起こした訴訟で、札幌地裁は表現の自由の侵害を認め、道に賠償金の支払いを命じた。

左派3紙(朝毎東)が社説に書いた、「警察の言論制限を戒めた」(毎3/29)、「許されぬ憲法の軽視」(朝3/29)、「警察は言論を奪うな」(東3/30)。しんぶん赤旗も黙ってはいない、「表現の自由封じた警察を断罪」(3/31)。

在京六紙の内ほかの3紙(経読産)は、今のところ社説では採り上げていない。表現の自由はメディアにとっても生命線だろうに。この判決に意見しないのは何か都合が悪いことでもあるのだろうか。

安倍首相は、2017年の都議選では、政権批判する人たちを選挙カー上から指差し「こんな人たちに負けるわけにはいかない」などと言い放った。2019年の参院選では日程を明かさないステルス遊説。「批判の声を表に出さない戦略だったとされる。道警のヤジ排除は同じ思考回路でできていたのではないか」「道警は首相に忖度したのか」(東3/30)。

政界地獄耳(日刊スポーツ、4/2)が、人間関係の機微を教えてくれている。「当時の警察庁警備局長・大石吉彦(現警視総監)は局長に就くまで安倍の首相秘書官を長く務めた。当時の北海道警本部長・山岸直人は大石と同期入庁。組織内で幹部同士の忖度があったかもしれない」。北海道以外でも似たような事態が、複数、起きたようで、ヤジ排除すべきと警察内で「組織の通達があったことは容易に想像がつく」とも同紙は書いている。

さて、3/28週の六紙社説、ウクライナ情勢がらみの本数は激減、前週の半分にも達しない。停戦合意が近いのだろうか。とにかく関心は薄らいで来ているようだ。

そのほかに複数紙が話題にしたのは、上に書いたヤジ排除裁判や、急激な円安、高校教科書検定、濱口作品に米アカデミー賞、5千円バラマキ一転白紙に、プラごみ新法、新型コロナ第7波へ、中国の感染拡大、ミャンマー軍増長、米核戦略見直し、18歳で成人に、こども家庭庁設置などだった。

六紙社説(サイト内)。前週28本今週11本

ウクライナ大統領演説

他国への侵攻は許されない行為だ。人命が危機に晒されるなら尚のこと。ただちに停戦すべき。当事者どうしで折り合いがつかないのなら、第三国は、最大限、仲介に奔走しなければならない。武器の提供はもとより参戦など以ての外。死者を増やすだけだ。と基本的な考えを述べた上で、日曜恒例、社説の話に移ろう。

ウクライナのゼレンスキー大統領が、23日、日本の国会でオンライン演説した。それに対して六紙社説はどんな反応を示しただろうか。

当事者の一方だけじゃなく、ロシアのプーチン大統領にも演説してもらうべき、と1紙ぐらいは書くだろうと思いつつ読み進めたけれど見当たらなかった。我が国は民主主義国家ではなかったのか。

各紙の意見を少し拾ってみた。ロシアへの「圧力をかけ続ける必要がある」(毎3/24)、ロシアに影響力のある中印などに「率先して外交力を発揮すべき」(経3/24)。どんな支援ができるのか「検討を急がねばならない」(読3/24)、戦災復興など「日本らしさで応えたい」(東3/25)、日本は、国連改革の「論議を主導する責任がある」、避難民を「国内へも受け入れ」よ(朝3/25)。

こんな問い掛けもある。我が国のリーダーたちはゼレンスキー氏のように「日本と国民のために命を賭して働けるか」。「その覚悟があるなら」日本の抑止力を強化せよ(産3/24)。

とにかくロシア制裁とウクライナ支援に正義あり、と言わんばかりだ。在京六紙がこうなんだからテレビも主要メディアは皆そうなのだろう。揃って同じ方を見ている。アブないニオいがする。

今回の侵攻に関連して思うところを少し並べてみよう。

ウクライナの指導者は何かを間違ったのではないか。日本も、ロシアの隣国で領土問題を抱えている点で同じ状況にある。では、北海道がロシアに攻め込まれるだろうか。そんなこと起こりはしないと誰しも思っている。外交努力によってロシアとの関係はそれなりに維持されているからだ。であれば、ウクライナはその努力を怠った可能性がある。

果たしてウクライナは清く正しい国なのか。北朝鮮がミサイルの試射を続けている。先日も米本土をも射程に収める新型ICBMをぶっ放し、いよいよ好戦的だ。あの国のミサイル開発はウクライナ企業の技術が元になっている、と何年か前にドキュメンタリー番組で暴かれていた。国は関与を否定していたが本当だろうか。それとウクライナの親中もよく知られているところ。

もう一点。今回の騒ぎ、誰かが裏で糸を引いているように思えてならない。戦争が起きると儲けるやつが必ずいる。まず思い浮かぶのは軍需を主要な産業にしている国。それと今回の場合は産油国。両方に重なるのは、ロシアを除くと、米、英か。そう言えば、シェールの増産が報じられていた、景気刺激策で時々戦争をやりたがるあの国での増産だ。

さて、3/21週の六紙社説では、そのほかに、高松塚壁画発見50年や、電力逼迫警報、ロシア北方領土交渉中断、春闘満額回答相次ぐ、北のICBM発射、公示地価上昇、東芝分割案否決、G7首脳会議、サッカーW杯出場決定などが題材になった。

注目の話題が登場、「自民京都府連 資金配布 明快に説明を」(朝3/23)。六紙社説では初めてだと思う。しんぶん赤旗の主張(社説)では初旬に採り上げられた、「組織的買収は濃厚 解明不可欠」(3/2)。

六紙社説、ロシア軍ウクライナ侵攻(いずれもサイト内)。「金正恩の野望」シリーズ第3集「核・ミサイル 隠された真意」(NHKスペシャル、2018/4/22)

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