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終りなき夜に生れつく

  • 2021/06/01 06:45
  • カテゴリー:読み物

男はぼくに向かって笑顔を見せ、「お客さまは、お目が高うございます」といった。ぼくは、この男とどこかお互いに通じ合うものがあるのを感じた。

これがどういう意味なのか気になった。読み終えて判然とした。「お前もワルよのう」ということだ。アガサ・クリスティー著「終りなき夜に生れつく」乾信一郎訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、1977年)から(p25)。

そう、ぼく(主人公マイケル・ロジャース)はワルだ。それなのに、なぜか、善良な青年だと思い込んで読み進める。結末を知った後に読み返してみると、引用した部分の仄めかしどころか、定職に就かず、女好き、と自分で言っているではないか(p20)。手には災厄の相(p17)、心には野心(p31)、と他人の評価もある。善良なんてどこにも書いていない。まんまと、作者の術中にはめられたわけだ。

昔読んだケーススタディに「エリック・ピーターソン」というのがあった。若きジェネラルマネジャーの物語。確かハーバードだったかな、MBAを修了。読み手は、その経歴を見て彼は優秀なマネージャーだと思い込んでしまう。だが・・・

# わが終りの時に始めあり、クリスティー自選ベストテン

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