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首相秘書官更迭、再び

側近を見れば、君主の頭の良し悪しが判る、と書いたのはマキャベリだったか。側近がぼんくらなら、それを雇ったリーダーのオツムの程度は知れている、ということだ。

岸田文雄首相が、政務秘書官の更迭を決めた(6/1付け)。昨年末、首相公邸に親族らを招き、公的なスペースで忘年会を開いていたことが理由。その秘書官は首相の長男で、以前にも公用車で観光地巡りをするなど、ぼんくらぶりを指摘されていた。

その忘年会では、赤絨毯の階段で記念撮影するなど「組閣ごっこ」が繰り広げられた。その様子をすっぱ抜いたのは週刊文春。写真付きで報じた。

在京六紙の社説はどう書いているか見てみた。反岸田はもちろん、親岸田でさえ、記事に擁護の言葉は一切ない。なお、日経は今のところ社説では採り上げていない。

「更迭は当然だ」(読5/31)。「非常識と言うほかない」(毎5/30)。「およそ公的な空間にふさわしくない、公私混同の不行跡」(朝5/28)。「30歳を超えた人物による思慮を欠いた行動で、あまりに子供じみている」(産5/31)

そもそも、秘書経験わずか2年半の長男を「秘書官に起用したこと自体が誤りではなかったのか」(東5/31)

週刊文春(電子版)での初出は5月24日。首相は、当初、更迭を否定。「対応が遅きに失したのは、首相の気が緩んでいるからとしか思えない」(読5/31)

長男の更迭を否定していた首相が、一転、クビにしたのはなぜか。「内閣支持率への影響や野党の追及を避けるためだろう」(東5/31)。ま、そういうことなんだろうけれど、こちらの脳裏によぎったのは衆院解散のことだった。解散は、国会議員、四百数十人のクビを切ることに他ならない。大量にクビ切りするのに、自分の息子のクビ一つ切れないのか、と非難されないよう事前に手を打ったのではないか。解散の時期は、意外に近いのかもしれない。

現政権で首相秘書官が更迭されるのは初めてではない。今年2月、差別発言をした荒井某がクビになった。それから半年も経たないのに更迭二人目。マキャベリならこの事態をどう評するだろうか。

さて、5/29週の六紙社説は、そのほかに、長野4人殺害事件、入管法改正案、IPEF会合、トルコ大統領再選、役所広司カンヌ最優秀男優賞、同性婚判決、NHK違反予算、北朝鮮の偵察衛星発射、藤井聡太新名人、飲む中絶薬承認、少子化対策財源、日野ふそう統合などを話題にした。

六紙社説、人権意識、政権と新聞(いずれもサイト内)。マキャベリ著「君主論」、岸田一族「首相公邸」大ハシャギ写真 階段に寝そべり、総理会見ごっこ(5/24)

核兵器なき世界は来るのか

東京新聞の社説「首相とサミット 核廃絶の覚悟が見えぬ」(5/23)は、今回の広島サミットに対して感じたことを代弁してくれている。

G7が自らの「核保有や核抑止力維持を前提とし、条件付きで核廃絶・核軍縮を訴えては、熱意が疑われて当然だ。それが広島からの発信ならなおさらである」(東5/23)。

他紙はどう書いているだろうか。在京六紙の社説は揃って5/22付けで広島サミット閉幕を採り上げた。そこから核廃絶に関する言及を拾ってみよう。

核軍縮に関する共同文書「広島ビジョン」は、「核兵器なき世界に近づく新たな策を示していない」(毎5/22)。「岸田文雄首相をはじめG7首脳に核なき世界に本気で取り組む覚悟があるのか疑わしい」(東5/22)。「核抑止の維持が正当化された」(朝5/22)

日経はややトーンを下げる。G7やインドの首脳は「機会あるごとに被爆の実相を目の当たりにした思いを率直に国民に語ってほしい。それが国際的な世論を喚起し、核兵器のない世界への道筋を切り開くに違いない」(経5/22)。

一方、こういう声もある。「核抑止をなぜ語らない」、「G7側が核抑止態勢を整えざるを得ない点を岸田文雄首相らG7首脳は正直に説くべきだった」(産5/22)

読売は、特にコメントしていない。被爆地ヒロシマでのサミットなんだから、核廃絶、核抑止力維持、どちらにせよ、何か明確に述べるべきではないのか。

さて、5/22週の六紙社説は、そのほかにもG7関連の話題が多かった。ふと目に留まったタイトルは「国会残り1か月 実のある議論が少なすぎる」(読5/23)だった。

六紙社説(サイト内)。G7広島サミット 成果と課題(5/22)、G7広島サミット 核の脅威は(5/23)、鈴木宗男氏 G7ロシア大統領呼ばず「話にならない」(5/22)

沖縄復帰51年

15日は、沖縄本土復帰の日。51年経った。50年だった昨年は、在京六紙が揃って社説で採り上げた。が、今年はわずか2本(朝東)。

この一年、在日米軍施設の7割が集中する沖縄の基地事情はどうなっているだろうか。

在沖米軍は「海兵隊を改編し、離島に機動的に展開する即応部隊を創設する方針」。「基地強化の流れはいつの間にか既成事実化し、国は基地負担軽減どころか、沖縄との溝を深める方向へ突き進んでいる」(朝5/16)。

そればかりか、岸田政権は昨年12月、安保三文書を改訂し、沖縄を安全保障上極めて重要な位置にあると明記。敵基地攻撃能力保有のため、南西諸島に「自衛隊の配備が相次ぎ」、沖縄が「再び戦火に巻き込まれる」懸念が高まっている(東5/14)。

社説は意見する、

「有事への舞台作りに邁進するのではなく、近隣諸国との連携や外交努力もあわせ、基地のあり方を幅広い視野に立って考え直すべき」(朝5/16)、「沖縄が基地のない平和な島にならなければ、真の本土復帰とは言えず、日本の戦後も終わらない」(東5/14)と。

政府や本土の人たちは、一体、これら意見をどんな気持ちで読むのだろう。沖縄は「本土を守るための盾や捨て石」(東5/14)、それでいいではないか、ということなのか。

さて、5/15週の六紙社説は、そのほかに、G7財務相会議、ジャニーズの性加害問題、タイ総選挙、企業決算好調、LGBT修正案、マイナカード混乱、日米首脳会談、G7広島サミットなどを話題にした。

六紙社説、実質的にまだ占領下にある米製兵器を買わされる日本沖縄復帰50年と日米安保(いずれもサイト内)。沖縄 本土復帰51年「基地の過重負担 いまだに変わっていない」(5/15)、沖縄 本土復帰から51年 安全保障に伴う負担いっそう重く(5/15)

シャトル外交とお詫び

岸田文雄首相が、7日、ソウルで尹錫悦(ユンソンニョル)韓国大統領と会談した。日韓首脳が相互訪問するシャトル外交は12年ぶり。

首相は、朝鮮統治をめぐって反省とお詫びに言及した1998年の日韓共同宣言に触れ、その立場を「引き継いでいる」と尹氏へ伝えた。さらに今回、個人の見解としながらも、元徴用工を念頭に「心が痛む」とも述べた。

在京六紙の社説が、どう評価しているか見てみよう。

引き継いでいるなど「遠回しの表現も多い。より直接的に反省やおわびを示すことで、自国内の批判覚悟で対日関係改善に乗り出した大統領の気概に応えるべき」(東5/9)

「韓国側にはなお明確な謝罪と反省を求める声が強いが、首相自らの言葉で思いを伝えたことは評価できる」(朝5/8)。「踏み込んだ」(毎5/9)。

「首相の思いが韓国の人々に届くかを見極めたい」(経5/8)

「首相が自らの言葉で思いを述べたのは、尹氏の政治決断を評価し、韓国国内の反発を和らげる狙いがあるのだろう」。が、「首相は、相手の立場に配慮する大切さを忘れてはならない」(読5/9)

徴用工をめぐっては「日本側に謝罪したり賠償金を支払ったりするいわれがない」「岸田首相の発言は加害者という印象を植え付ける。主客転倒の誤った発言」(産5/8)

評価するという声が複数ある一方で、足りない、もしくは、そもそも謝る必要ない、という意見がある。これくらいにバラついている方が、ある意味、健全なのかもしれない。

さて、5/8週の六紙社説は、そのほかに、能登の群発地震、プーチン演説、首相のアフリカ外交、米国債のデフォルト懸念、銀座仮面強盗、コロナ禍の検証、LGBT法案などを話題にした。

六紙社説(サイト内)。岸田首相訪韓 日韓新時代(NHK、5/9)

憲法記念日とセブン50年

在京六紙は、例年通り揃って、憲法記念日にまつわる社説を掲載した。

「憲法は、先の大戦の悲惨な体験を踏まえて生まれた」「平和を願う国民は歓迎した。だからこそ定着し、今日まで続いている」(毎5/3)

「戦争に突き進まず、自由や基本的人権を守るには、九条だけでなく、憲法条文に込められた先人たちの決意を読み取り、不断の努力を続ける必要があります。それこそが不戦の誓いというバトンを受け継ぐ今を生きる私たちの使命ではないでしょうか」(東5/4)

「政府が説明や議論を軽んじ、憲法が主権者と定める国民を置き去りにしたまま、国の大事な原則を次々と変えていく。真に恐れるべきは、民主主義の形骸化である」(朝5/3)

「時代や安全保障環境の変化を踏まえ、最高法規のあり方を建設的に論じ合い、必要な部分については改めなければならない」(読5/3)、「国会は改正原案策定急げ 9条、緊急事態が最優先だ」(産5/3)、「緊急時への備え含む憲法論議の加速を」(経5/3)

護憲、改憲、様々な立場や意見はあるだろう。前文や第9条の基本理念は「護」るべきだと思うけれど、「改」めるべき点についてはしっかり議論すれば良い。時世にそぐわなくなっている条文があるという意見には説得力がある。なにせ施行から76年も経っているのだ。

憲法記念日の3日、一本、まったく毛色の違う社説があった。日経の「セブン50年の成果と課題」。コンビニ大手のセブン‐イレブンが一号店を開いて50年を迎えるのだとか。記事には、1974年に東京・豊洲にオープンした一号店の写真が添えられている。

関西出身なので、セブンよりはローソンの方が馴染みがある。「開いってまぁす、あなたのローソン」のCMはよく覚えているし、それより古い地味なバージョンも記憶にある。が、当時、実際にコンビニで買い物をすることは、ごく限られていた。まだ、どこにでもあるという存在にはなってはいなかった。

京都の街にローソンが溢れていて驚いたことがある。あれは、確か1983年の秋だった。チェロ弾きの先輩と二人で京都へ行った。至る所にローソンがある。街にこんなに沢山コンビニがあって、それもローソンばっかり。大学へ戻って、そのことを誰かに言うと、「今の京都はローソンの牙城」と教えてくれた。え、大阪じゃないのか、と思いつつも、妙に納得した。それほどまでにローソンの看板は京都の街で目立っていた。

さて、5/1週の六紙の社説は、そのほかに、トヨタグループの不正、中国反スパイ法、首相アフリカ歴訪、G7のAI声明、金融不安再燃、米利上げ継続、こどもの日、コロナ5類感染症へ移行、能登震度6強などを話題にした。

六紙社説、憲法記念日、22年コロナ下の憲法記念日(いずれもサイト内)。コンビニエンスストア|Wikipedia

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