古建築を受け継ぐ
- 2025/07/09 06:12
- カテゴリー:読み物
文化財の概念が形成される以前の前近代においては、〈受け継ぐ〉ことを本質に据えており、そのメンテナンスは近代以降の文化財保護の理念には不足する「寛容さ」を備えている。
海野聡著「古建築を受け継ぐ-メンテナンスからみる日本建築史」(岩波書店、2024年)から(p304)。著者の名前に見覚えがあり借りて来た、図書館の新着本コーナーより。
過去、つっかえ棒による応急処置、別の場所への移築、五重塔を三重にする縮退など、大らかなメンテナンスは珍しくなかった。日本古来の「寛容な」継承の理念に学ぶことは多い。
著者は、明治神宮外苑の再開発への反対運動に触れ(p327)、明治神宮は、外苑の収益を維持費に充てている、という「もうひとつの側面」を忘れてはならないと指摘する。大きな寺社の維持管理には莫大な金がかかる。古くから、門前町の借地経営によってその維持費をまかなって来た。これも「寛容さ」だろう。神宮外苑の再開発もこの延長線上にある。