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中身のない常套句

新聞や政治家が示し合わせたように『民主主義への挑戦』と表明したことに違和感がある、というのは自然な感覚だと思います。誰が何に対して挑戦したのか、はっきりさせないで使う民主主義という言葉は、中身のないクリシェ(常套句)になっている

宇野重規氏がインタビューでそう述べている。

一方で、民主主義の問題ではない、という意見にも違和感があるのだとか。1) 選挙や言論や訴訟で自身の境遇を変えられる「そうした認識がなかったとしたら、これは民主主義の敗北だ」、2) 「自分の意見を言っても大丈夫だ、危害を加えられることはないんだという、民主主義の基盤が揺るがされ」ることになった、3) 政治家の「体現する政治的な価値に対する挑戦であり、そういった価値をもった政治家同士が競い合う民主主義の否定」と言える。

なるほど。言い換えると、1) 諍いを私闘で決着する、2) 異論を述べる者の口を封じる、これらは民主主義に反するというわけだ。その通りだと思う。しかし、被害者が政治家の場合に限らない。他殺は年に3百を超える。その犠牲者の多くは、私闘に斃れるか、不都合な存在として消される。だからと言って、メディアが、都度、民主主義の問題だと騒ぎ立てるわけじゃない。今回の場合は、被害者が政治家それも元首相なので、3) の点が重く見られ、殊更に、民主主義、民主主義と叫ばれている。現行犯逮捕された男が、政治信条への異議ではないと述べていても、おかまいなしだ。

政治家への襲撃は民主主義とどう関係するのか、もう少し納得できそうな説明はないものだろうか。あらためて見直してみた。事件翌日の社説(東京新聞、7/9)にこうある。今回の凶行は「政治家を選んだ主権者たる国民に対する暴力にほかならない」と。これはだいぶ判りやすい。

安倍元首相が死去(サイト内)。元首相銃撃は「民主主義への挑戦」か 宇野重規さんが考える「敗北」(7/18)

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