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消えた弟

  • 2022/08/26 06:22
  • カテゴリー:読み物

たぶんそのころだったのだろう、数字に脅えるようになったのは。首の曲がった邪悪な7。妊娠した6。忍び笑いをする2。ぼやけた数字がページから立ち上がって、激しく脈打つ黒い肺のように膨らんだりしぼんだりする。

マネット・アンセイ著「消えた弟」坂口玲子訳(文芸春秋、1999年)から(p84)。

数字ではなかったけれど、何かの文字に脅えた覚えがある。小学生の頃だ。身近にあった本の挿絵や、衣紋掛けにぶら下がっていた何かが恐ろしかった時期もある。反対につまらない物にちょっと心がときめくようなこともあった。主人公アビーが語る過去のエピソードに刺激されて、古い記憶が芋づる式に出て来る。そんな不思議な体験ができる物語だ。

読みたい本リストの底の方にあった。確か、目黒考二氏のおすすめをメモしたのだった。

# プロコフィエフのピアノ・ソナタ(p196)

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