紫式部の欲望
- 2025/01/09 05:56
- カテゴリー:読み物
源氏物語において、正妻をほとんど無視し、正妻であることの虚しさを描いたことは、紫式部の、正妻という存在に対するちょっとした復讐だったのかもしれません。
そう言えば、大河ドラマ「光る君へ」で、まひろ(紫式部)が、自身と藤原道長との不義について、道長の正妻である倫子に直接語る場面があった。訊ねられたから答えたとはいうものの、正妻を痛めつけるなかなかエグい展開だった。
引用は、酒井順子著「紫式部の欲望」(集英社、2011年)から(p165)。最寄り図書館で借りて来た。
正妻に復讐したい、頭がいいと思われたい、選択したい、娘に幸せになってほしい、乱暴に迫られたい、など、「紫式部の欲望」を彼女の著作から読み解く。なかなか面白い。
紫式部は「道長のお手つきとなったとも言われ」、「道長とのラブ・アフェアもあったようですが」、「藤原道長と一時交際があったという話ですが」と、道長の名前がちらちらと登場する。朧月夜に迫った源氏のように、道長も迫ったのかもしれない。「時の第一の権力者が、自分という女をこれほどにも強く欲しているという状態に、紫式部はうっとりしたに違いない」(p115)と著者は書いている。