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大人国・小人国

  • 2018/05/24 16:46
  • カテゴリー:読み物

だいいち、優越感とか劣等感を棄てなければならないのだ。民族感情としてのコンプレックスは、封建社会から尾を曳くものなのだ。民族主義が徹底すれば、すなはち、平等社会が確立すれば、優越・劣等のコンプレックスは消滅すべきものである(略)。どういうふうにして、コンプレックスを追放すべきであるか。いわば精神分析療法である。それはコンプレックスの根源をさぐりだすことである。文学的にいへば、むしろこれまでの劣等感に徹してみることである。優越をもとめるといふ代償作用を排して、ひとつこのコンプレックスに最後のところまで身を委ねてみることだ。

荒正人著「第二の青春・負け犬」に収載の「大人国・小人国」から(p219)。この本は、冨山房百科文庫の一冊(冨山房、78年)であり、先日読んだ宮田昇著「図書館に通う」で知った。「第二の青春」「負け犬」いずれも二次大戦後に出版された評論集。「大人国~」の文末には、1946年8月5日の日付がある。

荒正人(あらまさひと)の名は、恥ずかしながら知らなかった。wikipedia によると、「世代論、知識人論で加藤周一、中野重治らと論争を交わした。夏目漱石の研究でも一家をなし、」とある。この「第二の~」でも、三十代は、四十代は、と世代に関する記述が散見される。

https://ja.wikipedia.org/wiki/荒正人

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