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誰かをさがすために

  • 2020/01/12 19:43
  • カテゴリー:読み物

まだ逢つたこともない人なんですが
その人にもしかしたら
けふ会えるかと尋ねて歩いてゐるのです。

室生犀星の「誰かをさがすために」から。不思議な気分にさせる詩だ。その誰かはずっと心のどこかに住んでいる、その人に巡り逢うことはきっとない。北村薫著「八月の六日間」に犀星の「昨日いらしつて下さい」のことが出ていた。山小屋に置いてあったその詩集を主人公が手にするのだ。おれも読んでみようと最寄り図書館へ出かけて、日本の詩歌15巻「室生犀星」(中央公論社、68年)を借りて来た。詩集「昨日~」全106篇の中から11篇が収録されている。この「誰かを~」もその一つ(p391)。機会があれば抜粋ではなく全篇読もうと思う。

ふるさとは遠きにありて思ふもの、と始まるあの有名な詩は、犀星作だったんだな。今回借りて来た本に出ているのを見てあらためて認識した(p14)。この詩はかつて国語の授業で習った、中学でだったかな。「異土の乞食(かたゐ)となるとても」というフレーズが恐ろしい呪文のようで今でも耳に残っている。教師が我々生徒に問うた、作者がこの詩を詠んだのは、生まれ故郷、それとも東京、さあどっち。確かに、それが判っていないとこの詩の味わいはだいぶ異なる。

八月の六日間(サイト内)

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