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Re: 米欧金融不安の先行き

アメリカの地銀が、また一つ、破綻するかもしれない。この度は、カリフォルニア州に拠点を置くファースト・リパブリック・バンク。「崖っぷち」、「株価急落」、「市場では再び金融不安を引き起こしかねない事態に警戒」。

やはり、と言うべきか。在京六紙の社説は、4月になって、前月に比べて本数は減ったものの、金融不安への警戒を解くべきではないと呼び掛けていた(3月10本、4月4本)。

「国際的な銀行規制の点検と再構築を急げ」(経4/8)。「金融動揺の世界経済への波及を注視せよ」(経4/13)。「インフレ圧力は根強く、(物価抑制のための)利上げが続けば、不安が再燃しかねない」、G20は「危機回避へ連携する時だ」(毎4/15)。「米銀が抱えるリスクへの警戒を怠るな」(経4/23)

日本の我々にとって、遠い国の話、と高みの見物で済むだろうか。ひと度、不安の連鎖が起きればどんなことになるか判らない。できる範囲で、自衛の策を講じておくに越したことはない。

さて、4/23週の六紙の社説は、そのほかに、衆参5補選、スーダンから邦人退避、将来の推計人口、米韓首脳会談、日銀政策会合、民間機月面着陸失敗、武器輸出緩和、ドイツ脱原発完了などを話題に採り上げた。

六紙社説、米欧金融不安の先行き(いずれもサイト内)。米地銀 ファースト・リパブリック・バンク株価急落 警戒強まる(4/28)、米ファーストリパブリック銀、再び崖っぷちに(4/29)、米監督当局の人員不足が浮き彫り、中堅2行破綻の検証報告(4/29)

首相襲撃テロと民主主義

岸田首相が衆参補欠選挙の遊説中に襲われて一週間経った。この間、在京六紙は計9本の社説でこの事件を採り上げた(朝1、毎1、東1、読3、産2、経1)。

「民主主義の根幹である選挙の期間中に、言論をテロで封殺するような行為は断じて許されない」(経4/16)、「民主主義を損なう」(産4/16)、「民主主義揺るがす」(朝4/16)などと、記事には「民主主義」が頻出する。これは、安倍元首相殺害事件の折と同じだ。

各紙の社説第一報で、「民主主義」もしくは「民主社会」が、何回使われているか数えてみよう。結果は、朝4、毎2、東4、読0、産4、経1であり、一紙のみ、読売(4/16)はその用語を使っていないことが判る。

読売は、2本目(4/18)でも使わない。3本目(4/22)になって、ようやく、「自分の主張が通らないから暴力に訴えるというのなら、民主主義は成り立たない。テロは厳しく指弾されるべきだ」と登場させる。

「テロ」の登場回数も数えてみた。朝0、毎0、東1、読5、産13、経2(読売は社説3本の、産経は2本の各々合計)。政治家の暗殺を意味するこの表現を使う使わないで、見解や主張が別れるようだ。

各紙とも慎重な物言いをしている印象を受ける。それは、首相に爆発物を投げつけ威力業務妨害容疑で逮捕された木村隆二容疑者(24歳)の黙秘とも関係するのだろう。徐々に犯行の動機は明確になって来るのだろうか。またしても、政治的意図のない私怨などとなると、民主主義やテロの言葉は宙に浮いてしまう。

さて、4/17週の六紙社説は、そのほかに、技能実習制度廃止案、G7外相会合、米機密情報流出、地方議員なり手不足、スーダン内紛激化、原発推進法案、EVシフト、学術会議法案見送り、日本の科学技術、知床観光船事故1年などを話題にした。

六紙社説、中身のない常套句安倍元首相が死去(いずれもサイト内)。首相演説会場に爆発物 事件から1週間 いったい何が?【詳報】(4/21)、首相演説会爆発事件1週間 容疑者黙秘続ける 動機を慎重に捜査(4/22)

対話型AIの功罪

対話型AIに関する社説がにわかに増えて来ている。4月の前半だけで、在京六紙で4本を数えた。今年は、それまでに2月の1本だけだった。それはこう問い掛ける、「社会は生成AIの進化にどう向き合うか」(経2/5)と。

対話型AIは、生成AIとも呼ばれる(AIは、Artificial Intelligenceの略、人工知能と邦訳される)。「人の指示に応じて文章や画像、プログラムコードなどを自動で生み出す技術で、社会全般に大きな影響が及ぶだろう」(経2/5)。生産性向上に寄与する可能性がある。

この新技術に対し、推進派にしても慎重派にしても、今はまだ過剰な反応が目立つ。例えば慎重派の声はこう、「安易に頼れば人の思考力を衰えさせかねない」(読4/2)、AIの基になる「膨大なデータは、誰がどのように入力したのか、不明なものが多い。信憑性が十分ではない」(読4/14)。とにかく規制を急げと、強硬に訴える。

代表的な対話型AIである「チャットGPT」は、自らの欠点を尋ねられ、「情報の正確性に限界がある、創造性に限界がある、誤解や偏見を持つことがある、意思決定を行うことができないなどと答えた」(東4/8)。しっかりと弁えている。曖昧な点はどこなのか、誤解や推測はどの程度入っているのか、など、情報の信憑性に関しても、併せて、語らせたらよろしかろう。

「刃物でも自動車でも、人間の技術にはメリットとリスクがある。新技術が登場するたびに人間社会は法規制や社会規範を作って活用してきた。AIについても功罪両面をふまえ、社会はどう向き合うべきか考える必要がある」(経4/10)。冷静な議論が求められる。

さて、4/10週の六紙社説は、そのほかに、統一地方選前半戦、台湾周辺で中国軍演習、植田新日銀総裁、国交省の天下り介入、北朝鮮のミサイル発射、大阪のIR計画認定、米機密文書流出、金融不安とG20、岸田首相襲撃などを話題にした。

六紙社説(サイト内)。Ubuntu日和【第25回】Stable DiffusionをUbuntuとGTX 1650で動作させる方法(4/15)、直子の代筆|Wikipedia、「AI(人工知能)」ニュース一覧

台湾総統訪米をどう見る

5日午前(日本時間6日未明)、台湾の蔡英文総統が訪米し、米共和党のマッカーシー下院議長と会談した。7日朝、在京六紙の社説は、一斉に、これを採り上げた。

「民主主義の連帯を確認した意義は大きい。中国の威圧に屈することなく、両氏が会談を実現させたことを評価したい」(産4/7)。「中国が台湾への威嚇を強める情勢下で、米台の枢要な立場にある人物が連携を確認する意義は大きい」(経4/7)。「民主的に選ばれた政治家同士の交流が非難されるいわれはない」(朝4/7)

中国からの経済支援や投資を期待し、台湾との外交関係を断つ国が増えている。「台湾が経済力で中国の外交攻勢に対抗するのは困難だ。自由や民主主義などの価値観を共有する国々と連帯し、存在感をアピールするしかないだろう」(読4/7)。「与党・民進党は、蔡氏の訪米を通じて米国との強固な関係をアピールする必要に迫られていた」(毎4/7)

6つもあるのに、全部が全部、今回の訪問を手放しで評価するのは、あまりにも偏っていると思いきや、一紙はこう書いて、辛うじて、完全な偏重を免れたか。米国でのマ下院議長との会談が「中国の神経を逆なですることは目に見えており、強行すべきだったかは疑念が残る」(東4/7)と。その東京のタイトルには「米中対話で緊張回避を」とある。

さて、4/3週の六紙社説は、そのほかに、日中外相会談、英TPP加盟、対話型AI、立民小西氏サル発言、後半国会、坂本龍一逝く、北欧加盟でNATO拡大、こども家庭庁発足、富士山噴火避難計画、同志国へ軍備供与(OSA)、NTT通信障害、陸自ヘリ事故、日銀新体制などを話題にした。

六紙社説、米下院議長、台湾訪問台湾と香港、22年4月(いずれもサイト内)。中国、台湾対岸で実弾演習 蔡総統訪米への対抗措置か(時事、4/8)、軍事演習は台湾「包囲」のリハーサル 中国国営テレビ(AFP、4/8)、【詳しく】中国 台湾周辺で軍事演習と発表 蔡総統「平和追求」(NHK、4/8)

米欧金融不安の先行き

全体の様子が見えて来ると、リーマンショックとか、S&L危機とか、名前が付けられる。今回はおそらくコロナ後の金融緩和の巻き戻しのようなことだろうが、まだ適切なネーミングが決まらないところからすると、全体としては半分行っていないのじゃないか。峠は越したと言いたいところだが、まだ安心できない。

エコノミストの吉崎達彦氏がそんな話をしていた(3/27)。同じ27日の朝、朝日新聞が社説を掲載し在京六紙が出揃った。米シリコンバレー銀行(SVB)の破綻に端を発する米欧金融不安に関する六紙社説は、計10本に達した(朝1、毎1、東1、読2、産1、経4)。

今回の金融不安は沈静化するだろうか。日本へ波及するようなことはないだろうか。社説から先行きの見通しを拾ってみよう。日付はすべて3月。

10日にSVBが破綻。「市場の動揺を沈静化できなければ、金融システムや世界経済は甚大な被害を受けかねない。日本にとっても最大限の警戒が必要な局面である」(産3/21)

「日本の地銀は個人預金が多くSVBとは事情が異なる面はあるものの、経営体力に比べ多額の米国債などを保有する例が指摘される」(経3/14)。「日本の金融機関への影響は現時点では限定的だが、地方銀行では国内の超低金利による運用難の中、米国債などに投資しているケースが多い。地銀各行の含み損は膨らんでいるという」(読3/18)

12日には米シグネチャー銀行も破綻。「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が破綻した米銀二行の株式や債券を昨年三月末時点で計五百五十億円程度保有している。GPIFは含み損の実態把握を急ぎ資金運用の安全性を高める措置を講じるべきだ」(東3/21)

「政府・日銀も17日、SVB破綻などの日本の金融への影響を巡り協議した」(経3/19)

19日、スイスUBSがクレディ・スイスの買収を決めた。金融不安が欧州に伝わり、かねて経営不振のクレディはいよいよ怪しくなった。この「買収はスピード優先だったため、問題含みであることは否定できない」、「今後、損失が発覚する懸念もある」(経3/21)

米銀2行の破綻に関しては「預金の全額保護」、UBSによるクレディの「救済買収」、日米欧の6中央銀行が協調して「市場へのドル供給」、これら「一連の対応で市場はひとまず落ち着いたが、金融不安はくすぶる」(経3/24)

米欧の中央銀行はインフレ抑制のため利上げを続行、「金融不安の火消しとは逆行する面もあり、慎重なかじ取りが求められる」(朝3/27)。「急ピッチの利上げに伴い、債券価格は下落している」、「破綻の連鎖を招かないか、警戒が必要」(毎3/26)。「金融不安が続くと、銀行の貸し渋りが起きる可能性がある」、「資金調達が厳しくなるなどし、経済全体に大きな打撃を与えることになる」(読3/26)

4月になって、どうなることやら。まだ予断は許されない。

さて、3/27週の六紙社説は、そのほかに、IPCC温暖化報告書や、東芝買収案、露の核配備ベラルーシへ、文化庁京都移転、政府の追加物価対策、中国の邦人拘束、量子計算機、教科書検定、少子化対策、トランプ前大統領起訴、英TPP加盟などを題材に採り上げた。

六紙社説(サイト内)。マイ!Biz「金融不安 連鎖の先行き」吉崎達彦(双日総合研究所チーフエコノミスト)▽マイあさ!(NHKラジオ第1、3/27 6時台)、米国の中小銀行、預金流出一服 MMFは3週連続流入(4/1)、中国がアステラス製薬社員を拘束した「本当の狙い」、元公安捜査官が解説(4/1)

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