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百年前の山を旅する

  • 2020/12/02 06:37
  • カテゴリー:読み物

今、われわれは奥多摩駅から青梅まで歩くという発想そのものがない。鉄道が延び、車道ができ、昔の道がなくなってしまったため、われわれに歩くという選択肢そのものがなくなってしまったのだ。発想がなければ行為はなく、行為がなければそれにともなう感情もない。

服部文祥著「百年前の山を旅する」(東京新聞出版部、10年)から(p97)。著者自身による「サバイバル登山」の紀行文をいくつか集めた一冊。古道や廃れてしまったルートを、当時の装備や食料を携えて歩きそして登る。例えば、ウェストンらが初登攀(1912年)した奥穂高岳南壁ルート。島々から徳本峠を越えて上高地へ入り、岳沢をつめて南稜から奥穂高岳へ登る。

第4話の「鯖街道を一昼夜で駆け抜ける」では、「京は遠ても十八里」の小浜街道いわゆる鯖街道を歩いて、実際にサバを京都まで運ぶ試みを行っている。福井県小浜の魚市場でサバを買う。これが若狭で獲れたのではなく、宮城県金華山沖から回って来たものだった。日本産ならまだしも、今や、街角で売っているのり弁当や定食屋の焼き魚定食などそれらのサバやアジのほとんどは、随分遠くからやって来る。サバならば、例えば、ノルウェーで水揚げされ、タイで加工された後に日本に運ばれる。現代の鯖街道は、三千里にも及ぶ(8.6千キロと4.3千キロ、計1.29万キロ)。

旅人の表現術(サイト内)。ウォルター・ウェストン|Wikipedia。石丸謙二郎の山カフェ「山びとの生き方~服部文祥さん」(NHKラジオ第一、11/21 8:05-)

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