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キーワード「文庫100冊」の検索結果は以下のとおりです。

名君の碑

  • 2022/04/02 06:24
  • カテゴリー:読み物

食べたあんずの種は、土に埋めればまたあんずの木へと育つかも知れない。政事というのは、この種を埋めるようなことなのです。

正之は、家臣保科正近からそう教えられたことを思い出す。中村彰彦著「名君の碑-保科正之の生涯」(文藝春秋、1998年)から(p186、398)。その場面の前後、正之と正近のやり取りは感動的でさえある。

帯に「真の指導者とは。混迷の世におくる清冽な物語」と記されている。リードする立場にある人たちにとって得るところが多い書だろう。

最終章で、寛文8(1668)年に成った「会津藩家訓」十五か条が紹介される(p617)。この中に「士を選ぶを本(もと)とすべし」とある。ここまで読んで来れば、これは納得の一条だ。何十年に及ぶ執政での実感だったろう。と言うか、このマネージメントの本質に気付いたことが、正之をして名君たらしめたのかもしれない。

文庫100冊(サイト内)。仁政(p401)、大国を治むるは小魚を煮るがごとし、誰をバスに乗せるのか(コリンズら「ビジョナリー・カンパニー2、飛躍の法則」)

  • 2022/03/01 06:27
  • カテゴリー:読み物

古来、切腹には一定の型があるといわれている。しかしそんな型は、あるといえばあるし、ないといえばない。型があって切腹があるのではなく、切腹あっての型なのである。

綱淵謙錠著「斬」(文春文庫、1975年)から(p47)。

余談として三島事件のことが語られる。1970年11月の市谷、二人が割腹自刃した際には介錯がなされた。事件を介錯の視点から眺め、斬首が「いかに専門的修練と厳しいプロ意識を要請される性質のものであったか」を考察している。

文庫100冊(サイト内)。三島事件|Wikipedia

将棋の子

  • 2022/02/11 06:29
  • カテゴリー:読み物

夢を目指す人間は、閉ざされたときの覚悟はできている

大崎善生著「将棋の子」(講談社、2001年)から(p178)。

自分のことを「こっち」と言う成田英二はじめ、夢を閉ざされ棋士になれなかった男たちの物語が綴られている。舞台は、棋士養成コースである奨励会。プロを目指す天才たちが全国から集まって来る。街の将棋教室で大人たちにも負けなかった少年たちは、ひと度この天才集団に入るや自分が平凡な存在であることを思い知らされる。

成田は、高校生の時に奨励会に入る。5年後、まだプロになれず悶々としている頃に、羽生善治が入会して来る。この10歳年下の「子供」に勝てない。奨励会での成田の対羽生戦は「0勝4敗」だった。その後の二人の歩みは惨たらしいほどに対比を見せる。羽生が弱冠15歳で奨励会を突破しプロ入りを果たす一方、前後して、成田は奨励会を退会。片や七冠すべてのタイトルを制覇し1億円プレーヤとなる。片や夢破れて故郷に帰り「落ちるところまで落ちる」。

成田は、ビル解体清掃業やパチンコ店などの職を転々とし、本書の著者が訪ねて行った時には、古新聞回収業者に雇われていた。全寮制で月々の手取り1万から2万円の「ほとんど無収入に近い状態」。サラ金に借金もある。恋人に会いにも行けない。それでも奨励会を退会した時に記念でもらった駒は肌身離さない。将棋を「自分の支え」に生きている。

切ない物語もエピローグを読むと救われる。後日譚が少し語られるのだ。「その駒を眺め消えかけていく勇気を辛うじて振りしぼった」彼に拍手を送りたい気分になった。

※敬称略

文庫100冊聖の青春(いずれもサイト内)。羽生善治|Wikipedia、羽生善治九段、A級から初の降級 連続29期で途絶える 順位戦(毎日新聞、2/4)。沢木耕太郎著「敗れざる者たち」。「末路哀れは覚悟の前やで」四代目桂米團治。敗者の背中に学ぶ 挑戦の価値大切にしたい(産経新聞、2/11)

その女アレックス

  • 2022/02/05 06:18
  • カテゴリー:読み物

つくづく思った。長年仕事を共にしてきた仲間のこととなると、こいつのことはなんでも知っていると思い込みがちだが、実はなにも知らないのだ。そしてある日、事故か事件か病気か死が降ってわいたときに、ようやくそのことに気づく。それまで抱いていたイメージは、たまたま入手した断片的な情報に基づいたものでしかなかったと思い知らされる。

ピエール・ルメートル著「その女アレックス」(文春文庫、2014年)から(p78)。橘明美訳。日本語訳がこなれていてたいへん読みやすい。訳者はあとがきで、下訳を担当した三人の名を紹介している。

これは、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ第二作。読み終えた段階では上記の「つくづく思った~」ではなく、「やるべきことがいくつもあり、どれから手をつけたらいいかわからないときは、もっとも優先すべきはなにもしないことである」(p196)を引用箇所に選んでいた。あとで第一作「悲しみのイレーヌ」を読み、差し替えた。

文庫100冊ピエール・ルメートルもう年はとれない(いずれもサイト内)。ジョエル・ディケール著「ハリー・クバート事件」橘明美訳(東京創元社、2014年)

イン・ザ・プール

  • 2022/01/31 06:29
  • カテゴリー:読み物

これはシビれるよ。つまらない悩み事なんて確実に吹っとぶ。なにしろ追われるわけだからね。命すらあぶないときに、どうして家や会社のことなんかにクヨクヨできるのよ

不定愁訴(ストレス性の体調不良)で悩んでいるなら別のことに目を向けるべきと精神科医がアドバイスする。例えば、繁華街で頬キズ裏街道のお兄さんでも襲ってみればと。奥田英朗著「イン・ザ・プール」(文春文庫、2006年)の表題作から。ページ数をメモし損ねたまま返却してしまった。

地震など大災害もいいけれど「呼んでも来ない」ので、頬キズ裏街道が妥当な線では。「休みをとって紛争地帯へ行く」という手もある。

文庫100冊(サイト内)

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