衰退の物語、3つ
- 2024/10/15 05:59
- カテゴリー:読み物
図書館で、新着本コーナーなどから、適当に選んだ3冊。郵便局、中世日本の政治、そしてデンマーク家具。時代もジャンルも異なるけれど、共通して衰退の物語があった。
先人の活躍と公的なイメージにすがり、中身が伴わない事業形態をただ変えないことに固執し、法律で現状維持を無理やり規定させた
社会の変化に合わせ、あるべき郵政ビジネスを築く覚悟と本気度が抜け落ちていた。藤田知也著「郵便局の裏組織」(光文社、2023年)から(p336)。副題は、「全特」-権力と支配構造
伝統と先例、儀式が幅をきかせ、過去を再現することに努力が傾注されます。栄光も規範も「むかし」にあるわけですし、祖父や父と同じことをするのが望ましく、一人一人の才覚が抜きん出る必要はない。新しいことへの挑戦はやむを得ぬ場合にのみなされる
世襲が社会の根幹にある。人間一人の器量では大きな変化を起こすことはできない。本郷和人著「権力の日本史」(文春新書、2019年)から(p226)。同著者「天皇はなぜ万世一系なのか」(2010年)の増補改訂版。
新作を開発する余裕がなくなってしまった。黄金期の人気商品が飛ぶように売れたことによる慢心があったとも考えられる。
1940年代から60年代にかけて黄金期にあったデンマーク・モダン家具デザイン、70年代には長い衰退期に入る。多田羅景太著「流れがわかる!デンマーク家具のデザイン史」(誠文堂新光社、2019年)から(p48)。本書副題、なぜ北欧のデンマークから数々の名作が生まれたのか
黄金期にはアメリカ中心に大きな需要があった。その影で、新作の開発を疎かにし、後継者の育成を怠った。家具職人やデザイナーは高齢化する。自慢のデザインも、最早、流行らなくなった。属人的要素が小さくない。
新しいものを創り環境の変化に対応しなければならないがそう簡単にはいかない。いずれの物語も将来を見通せなかったことに衰退の原因がある。将来のことを、どれほど遠くまで、そして、どれほど深く、イメージできるか、あらゆる事業の成否や寿命は、それにかかっている。想像力の勝負だ。
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