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キーワード「戦争」の検索結果は以下のとおりです。

マイナス・ゼロ

  • 2021/07/16 06:32
  • カテゴリー:読み物

中河原伝蔵は、予備役の陸軍歩兵一等兵だったのである。最近、よそで召集令が来たという話はぜんぜん聞かない。おととし、満州で事変が起こったときは、東京からも出征兵士がだいぶ出たそうだが、その後、事変のほうもある程度落ちつき、現役の兵隊だけで間に合っているのだろう。それなのに、中河原伝蔵にとつぜん召集令が来たのは、彼が共産党員だということで、懲罰の意味なのに違いない。

これから「地下にもぐる」共産党員の戸籍を買いその人物に成り済ましたところが、えらい目に遭う。広瀬正著「マイナス・ゼロ」(河出書房新社、1977年、広瀬正小説全集1)から(p193)。

歩兵第一五旅團司令部からの令状。召集部隊は歩兵第三〇聯隊、到着地は新潟県高田市。応召は、昭和8年(1933年)4月。「二年ぐらいだと思ってたのに、あっちこっちいかされて」(p201)、「最初はホーペイ、それからシャントン、チャンスー」、そして1942年フィリピンに転属、45年米軍の捕虜に、その時の階級は「兵長」(p219)だった。復員したのは、昭和23年(1948年)1月のこと。

この本を読むのは何度目だろうか。これまでさらっと読み流していた部分が、ずいぶん印象が違う。ここ一年ほど、1930年代や50年戦争に関する本をいくつか読んだからだろうか。

# 河北、山東、江蘇。台児荘の戦い(山東省最南部、1938年3-4月)

日露戦争の世界史

  • 2021/07/14 06:31
  • カテゴリー:読み物

日露戦後の日本の優先課題は、先ずこのような報復と圧力を回避することであった。日本としては韓国の《保護》を《併合》にするためにもこれは必ず解決しなければならない緊急の課題だった。このことは、列強は常に満州と韓半島を同じ枠のなかで考えていたということでもある。

露による「報復」であり、満州の門戸開放を要求する英米による「圧力」だった。それこそ既成事実あるいは時間の問題とされた韓国併合までに、日露戦争(1904-05年)後、5年もの年月を要した理由はこれだった。引用は、崔文衡著「日露戦争の世界史」朴菖煕訳(藤原書店、2004年)から(p261)。原著韓国版タイトルの直訳は「国際関係史から見た日露戦争と日本の韓国併合」。

米国の「フィリピン占領政策と中国門戸開放政策とは表裏一体」であった(p48)。1898年から翌年にかけてこれら政策が成立する。この辺りが「アメリカ世界戦略の出発点」と見れば良いだろうか。同時期にハワイ併合も済ませている。

訳者が、あとがきで、「日露戦争の目的の核心といえる日本の朝鮮併合」はまともに研究されておらず、司馬遼太郎「坂の上の雲」でさえ、「韓国(朝鮮)問題は出ていない」と指摘している(p408)。まともに研究されているかどうかは判らないけれど、少なくとも「坂の上の雲」には出ていたように思う。

坂の上の雲 (3)(サイト内)

2.26事件 (5)

  • 2021/07/07 06:36
  • カテゴリー:読み物

かれらの最大の挫折の原因は天皇の激怒にある。

松本清張著「昭和史発掘9」2.26事件Ⅴ(文春文庫、2005年、新装版)から(p369)

青年将校らの蹶起はなぜ失敗したのか。上部工作の不手際、宮城占拠の挫折、すべてを束ねるリーダーの不在、そして天皇の激怒。さらには国民の不支持もある。「海外への暴力(日清、日露、シベリア出兵、満州事変など)には馴らされていた国民も、国内の流血手段には神経質であった」(p373)

内心では助命を期待した赤穂浪士との類似性(p205)。神聖な本拠を農村出の兵隊に泥靴で占拠されたエリート幕僚部の屈辱感と憎悪(p226)。九割九分までの黒に一分の白をもって全体を白といいくるめる真崎公判(p307)。破滅戦争に向かう足音(p323)。解説加藤陽子(p385)

2.26事件加藤陽子(サイト内)

最適物流の科学

  • 2021/04/19 06:47
  • カテゴリー:読み物

リベリアなどは、福島第一原発事故による放射能漏れへの懸念から、一定距離内の海域での航行回避を推奨する勧告を出しました。

そんなことがあったんだな。京浜港への寄港を取り止めたドイツの船会社もあったとか。菅哲賢著「最適物流の科学」(ダイヤモンド社、2017年)から(p199)。

有事の際に、諸外国の船、外国籍の日本の船も含む、が、必ずしも協力的な態度を示すわけではない。想像を超える大災害に見舞われる、戦争に巻き込まれる、そのような事態において、物資輸送の主力を担っている「コンテナ船をどれだけ確保できるかが、国の命運を左右するともいえる」。

# Non-Vessel Operating Common Carrier (NVOCC)。船籍構成(日本の外航海運会社、2015年)は、パナマ61.3%、日本7.7%、リベリア5.9%、シンガポール5.3%、香港4.4%など。Marine Traffic

近現代史をどう見るか

  • 2021/04/15 07:02
  • カテゴリー:読み物

戦争は、敵とされた相手国の政治の基本的枠組・秩序=「憲法」に対する攻撃という形をとる

これを述べたのは、18世紀の哲学者ルソーだった。遺稿「戦争および戦争状態論」にて。誰が言ったことなのか調べようと思っていた矢先、たまたま手にした本に答えがあった。加藤陽子著「一九三〇年代の戦争は何をめぐる闘争だったのか」、岩波新書編集部編『日本の近現代史をどう見るか』所収(岩波新書, 2010年, p108)。

著者は、19世紀の法学者ローレンツ・フォン・シュタインも、「面白いことに、ルソーとほぼ同じこと」を述べたと指摘している。

幻燈辻馬車(サイト内)。長谷部恭男著『憲法とは何か』(岩波新書、2006年)、長尾龍一編『カール・シュミット著作集1』(慈学社出版, 2007年)所収の「政治的なものの概念」

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