嘘をもうひとつだけ
- 2019/01/02 12:39
- カテゴリー:読み物
嘘を隠すには、もっと大きな嘘が必要になる
東野圭吾著「嘘をもうひとつだけ」(講談社文庫、03年)から(p51)。加賀恭一郎シリーズ第6作は短編集(初出96-99年)。加賀の所属は練馬警察署。年齢は30代前半と思わせる記載がある(p111、174)。
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嘘を隠すには、もっと大きな嘘が必要になる
東野圭吾著「嘘をもうひとつだけ」(講談社文庫、03年)から(p51)。加賀恭一郎シリーズ第6作は短編集(初出96-99年)。加賀の所属は練馬警察署。年齢は30代前半と思わせる記載がある(p111、174)。
おまえには作家になる才能はあると思うよ。だけどそのことと、作家になれるかどうかってことは別だ。もう一ついうなら、売れる作家になれるかどうかってことも才能とは関係ない。そこまで行くには、特別な運ってものが必要なんだ。これは幻みたいなものでね、誰もが掴もうとするが、絶対に思い通りにはならない
東野圭吾著「悪意」(双葉社、96年)から(p196)。加賀恭一郎シリーズ第4作(初出95年8月-、96年9月刊)、この中で加賀は、依然、警視庁捜査一課の刑事だ。前作の第3作(96年6月刊)で練馬署所属だった。刊行の順が逆になったのだろう。
加賀のおおよその年齢が判る。中学の社会科教師として「新卒で赴任」したものの、「二年で教鞭を捨てる」(p28)、それが「十年前」(p122)のこと。単純に計算すると、大学四年卒22歳に12年を加えて34歳となる。パソコン通信で原稿をメール送信する話が出て来るこの第4作は、90年代前半の設定だろうか。ならば、加賀は、1960年前後の生まれのはず。なお、第2作「眠りの森」(89年刊)では、「三十前後に見え」るとある(p15)。
殺人事件は日常茶飯事だが、時刻表トリックも密室もなく、ダイイングメッセージもない。そして現場は孤島でも幻想的な洋館でもなく、生活感溢れる安アパートや路上だ。動機といえば殆どの場合が、「思わずカッとなって」である。それが現実なのだ。
とあるのは、誰かや何かに対する当て擦りか皮肉だろうか。東野圭吾著「どちらかが彼女を殺した」(講談社ノベルス、96年)から(p160)。加賀恭一郎シリーズ第3作、加賀は本庁ではなく所轄の練馬警察署にいる。
容疑者は二人。謎解きはされず、読者も推理に参加する。実際のところ、読み終えて、男と女どちらが犯人か判然としなかった。今一度ぱらぱらと拾い読みして、加賀が言う「破壊」(p142、244)が重要な意味を持っていることに気付いた。被害者がかつて開けた封筒、現場に残された粉薬の小さな袋二つ(指紋の偽装あり)、そして、もう一つ、薔薇の絵が描かれたゴミ箱に捨てられた薬の袋、各々の破り方を加賀は比べた。それによって、事件は自殺ではなく他殺であることを、そして、それを実行した犯人を、彼は知った。なるほど。それならば、犯人はこっちだ、とおれも確信が持てた。
# 眠れる森の美女(p225)