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叔母が姪に遺したもの (1)

このあいだ帰省した折のこと。こういうものが届いたと母が一通の封書を取り出した。東へ百キロほど離れた街が差出人の納税通知書だった。なぜ、そんな遠い街が税金を払えと言って来るのだろう、ちょっと嫌な予感がした。

母が言った。届いてからしばらく放って置いたけれど、やはり気になるので書面に印刷されている課税係へ電話した。すると、叔母さんが亡くなり、未納分の住民税を遺した、代わりにそれを払ってもらうために納税通知書を送付した、と言われた。叔母には子供らがいるのだから、こちらは払うつもりはないと応えた、と。

あの人が亡くなったのか。母の叔母さん、私からすると大叔母さん。随分前に一度会ったことがある。歌舞伎に造詣の深い人で手習鑑だったか何か時代物について話したことを覚えている。30年は前だと思う。母も、それ以来、やり取りはなかったと言う。その通知のことがあるまで叔母がその街に住んでいたことも忘れていたようだ。

その書面をつぶさに見た。日付けは2か月前。益々嫌な感じが募った。実家に滞在中、平日を待って、その東の街の課税係へ電話をかけ、経緯を訊ねた。

こういう事情だった。母の叔母は、満100歳で亡くなった。その方の相続人が誰かを係の方で調べた。遺言書はなかった。配偶者は既に亡くなっている。相続第1順位の子は相続を放棄していることが判った。第2順位の両親も既に亡くなっている。第3順位の兄弟姉妹も皆さん亡くなっている。よって、相続権は、その子らつまり甥や姪に移動している。その方の長兄の子で存命している一番年長の人に納税通知書を送付した。それが、私の母のところへ届いた書面だった。

その叔母さんの子、つまり母にとっては従姉妹、とは交流が途絶えていたので、叔母さんが亡くなったことや相続放棄のことはその人達から伝わって来なかった。遠くのお役所からの連絡でその事実を知ったことになる。

嫌な予感は的中した。相続が放棄され、それでこっちへお鉢が回って来たのだ。その未納分の税金は2万円に満たない額。その支払いを避けるために放棄されたのだろうか。いやそうではない、ほかに負の遺産がある、と考えるべきだろう。

対応を急ぐ必要があった。つづく

帰省、25年1月(サイト内)。No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

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