成都の切り絵
- 2026/02/12 06:10
- カテゴリー:工芸・美術
中国の成都へ何度か行った。数えてみると7回だったようだ。一度、先方の都合か何かで打合せがキャンセルとなり、市内観光に出かけたことがあった。15年前、卯の年のこと。
その時、武侯祠を訪ねた。蜀の皇帝・劉備と天才軍師・諸葛孔明、君臣を合祀する廟、三国志の聖地の一つ。ここで、諸葛孔明の「出師の表」などを見物した。
周辺に土産物店が立ち並んでいた。お祭りの出店のような構えも少なくなかった。その中に切り絵(剪紙)を実演販売する露店があった。店先には老夫と若い女性の二人。各々、ハサミ一つで何やら複雑な形へと切り進めている。下絵の線はない。ハサミさばきは素早い。しばし見とれた。そこで何枚か買い求めたのだが驚くほど安い対価だった。
人にあげたりして、もうなくなってしまったと思っていた。去年片付けをしていて、いくつか切り絵が手元に残っているのを見付けた。額装することにした。
切り絵の色が映える木材を選び、サイズに合わせて額縁をつくる。表側にはガラスを嵌め込む。そうやって額装したのは4点。一つは、早、友人へプレゼントした。色は赤。真ん中に陰陽と八卦、その周りを十二支の動物が配置された円形の切り絵。
もう一点は、知人への引っ越し祝いにしようと思っている。B4サイズほどのその大振りな切り絵は、武侯祠の入口が題材になっている。武侯祠の扁額があり、柱には詩の一節がいくつかぶら下がっており、実物通りに文字が切り出されている。例えば、對、顧、酬というような複雑な文字も、1センチ角ほどのサイズに収まって、しっかりそうと読める。これを、どうやってハサミで切るのか、見事な技だ。
この武侯祠の一枚には、「剪紙藝術彝族龍玲」と描かれた小さなパンフレットが添えられている。切り絵芸術、彝族(少数民族)の龍玲(女性、Long Ling)という意味。著名な切り絵作家のようだ。
自分で買い求めたものではなかった。切り絵に興味を示した私を見た、取引先のL嬢が、その次の成都出張の折に用意してくれていた。作家の名が添えられた立派な作品だ。随分、高かったのでは、と問うと、啤酒(ビール)一杯分くらいよ、と彼女は笑ったのだった。