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落城記

  • 2022/02/17 06:38
  • カテゴリー:読み物

もしかしたらとわたしは思う。盥はすべてを映す。わたしが身をひけば盥の影は消える。この世に生きるということは、つかのま盥の水にわが影を投げることではないのか。

腹違いの兄を殺し自分も跡を追う、「死を怖れていないつもりでも実は怯えていた」。生も死も自身で決められる。梨緒は水に映る自分の姿を見てそのことに気付く。迷いは去り心の安らぎを得たのだった。野呂邦暢著「落城記」(文藝春秋、1980年)から(p171)。

著者の「諫早菖蒲日記」と同じく諫早を舞台とする歴史もの。菖蒲日記の方は、幕末動乱が背景。この「落城記」はさらに二百数十年遡り、時代は豊臣秀吉の世。西郷家歴代分限帳や伊佐早図誌などの文書を焼く挿話(p89)は、時を経た二つの物語を繋ぐかのようだ。

野呂邦暢(サイト内)

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