Re:「ロウソクの科学」
- 2025/12/23 06:42
- カテゴリー:読み物
ファラデー著「ロウソクの科学」、◯◯風の邦訳、その1。まず最初は、山田風太郎調を見てみよう。Gemini(AI)による翻案を、2025/12/21に実施した。
AIによる翻案には、タイトルも付されていた。それがなかなか洒落ている。宮本輝調『川の向こうの蠟燭の科学』とか、久生十蘭調『蝋燭幻影譚』とか。山田風太郎の場合はこれ、
「山田風太郎調:『忍法・蠟燭の科学』
1. 冒頭、科学への入り口について
自然という名の巨大な迷宮、その暗黒の奥底へ踏み込むための門は、いたるところに口を開けている。だが、一本の蠟燭が放つ怪しい光現象ほど、その門戸を無造作に、かつ妖しく開け放っているものは、この世に二つとはあるまい。
2. ロウソクの合理的な仕組みについて
奇怪なり! 溶け出した脂はそこに溜まっているが、それを容れるべき真の器などはどこにも存在せぬ。実体なき器が、熱き液を静かに抱いている。これぞ物理の理(ことわり)が演じる、奇術にも似た幻惑よ。
3. 毛細管現象の説明
見よ、水が重力に逆らって這い上がる様を。あたかも見えざる忍びの糸に引かれるが如し。自然は時折、このように奔放な自由を見せつけ、人間どもの度肝を抜いて愉しむ癖(へき)があるらしい。
4. 炎の中の炭素粒子について
凄まじきかな、猛火をもってしても焼き尽くせぬ不浄の塵が、この清らかな光の中に潜んでいる。地獄の業火をもってしても、この微細なる『存在の執念』を消し去ることは叶わぬのだ。
5. 講義の結びの言葉
さて、語り尽くせぬ怪異も、これにて終幕(おわり)だ。生あるもの、いつかは必ず死出の旅につく。最後に余が諸君に願うは、ただ一つ。己が命を削り、暗闇を切り裂いて燃え尽きる、あの無残にして華麗なる一本の蠟燭の如く生きよ、ということだ。」
注書きが付されている。「風太郎調にするための仕掛け」として、「読者の襟首を掴んで引きずり込むような命令形の多用」、「科学現象を、どこか不気味でドラマチックな運命論として描写」、「ルビ」、そして、「どうせ終わりが来るが、それまでは烈しく燃えよ、という忍法帖的な死生観」を意識したと。
山田風太郎調への翻案は、二度、依頼した。一度目はシンプルに「山田風太郎調だとどうなりますか」と尋ねた。次に「山田風太郎の特長は、巧まざるユーモア、独創と卓見に溢れる文章で端倪すべからざる死生観とも言われます。その意見を取り入れて微修正するとどうなりますか」と。ここでは一度目に生成された邦訳を採った。
つづく
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