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「ロウソクの科学」

  • 2025/12/22 06:01
  • カテゴリー:読み物
2007年の4月か5月、その頃だったと思う。ある大学の先生、経営学の教授、から、本との出会いについて語ってくださいと漠然とした問いがあった。それに対して以下のように答えたことを覚えている。私は化学メーカーで研究開発に携わって来た。ここに至るまでの原点を探ると、小学校時代の理科実験や、その頃に読んだファラデーの「ロウソクの科学」にまで遡ることができると思う、と。
 
元はクリスマス・レクチャーだったこの著作をまた読んでみようとProject Gutenbergのその項を開いた。読み始めて思い付いたことがあり、GoogleのAIに次のように尋ねてみた。
 
Q)マイケル・ファラデーが著した"The Chemical History of a Candle"(1861年)を村上春樹調に邦訳するとどうなりますか。その調子が特徴的に表れている箇所を5つほど例示してもらえませんか。The Project Gutenberg eBookの原文を用いてください。
 
すると、冒頭など5箇所を選び出した上で、各々を村上春樹調に訳してくれた。
 
村上春樹に続いて、同じ5箇所について、三島由紀夫、宮本輝、筒井康隆、森鴎外、山田風太郎、松本清張、中島敦、そして久生十蘭、各作家風の邦訳もお願いした。七五調や小学生向け解説風なども。一連の、Gemini(AI)による翻案は、2025/12/21に実施。
 
いずれも、それっぽくて随分楽しめた。いくつかを何回かに渡って披露しようと思う。まず最初に原文を載せることを考えたが、AIが用いた原文は、必ずしも指定したGutenberg版ではなく、どうやら「現代英語にリライトされた別のエディション」からも採られているようなので、そのままの引用は遠慮することにした。
 
代わりとして、AIが選び出した5箇所について、私なりに訳したものを載せておこう。今後掲載する◯◯風訳文の比較対象となるだろう。
 
素っ気ない訳文:「ロウソクの化学」
 
1. 冒頭
ロウソクの仕組みを考察することほど、自然の摂理を学ぶのに好適な入口はない。
 
2. 液溜まりについて
芯の根元に生じる窪みがとても良くできている。この窪みにロウが溶けた液体が溜まるようになっているからだ。別の器が用意されているわけではない。
 
3. 毛細管現象について
液体が上っていく様子が見えるだろう。ここに自然現象の一貫性や自由度を見て取ることができる。
 
4. ダストについて
このロウソクやそれが溶けた液体には、燃焼によっても消えることのないダストが含まれている。それが、炎に赤い彩りを添えることになる。
 
5. 結び
さあ、話はもう尽きつつある(何事にも終わりがあるものだ)、若い君たちにはぜひロウソクのように周りを照らす存在になって欲しいと希望を述べて講義を終えることにする。
 
つづく
 

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