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暖流

  • 2024/05/07 05:51
  • カテゴリー:読み物

仕事の面白みは、なんとしても、大会社の庶務課長より、小さくとも独立した事業を一人で切り廻すことにある

主人公の日疋祐三は、製薬会社のポストを袖にして、落ちぶれた病院の再建に挑む。岸田国士著「暖流」から(p23)。岸田国士全集13巻小説6(岩波書店、1991年)。

何度か、映画化、ドラマ化されている。なるほどそうさせるだけの魅力がこの原作にはあるのだろう、借りて来て放っておいたのだけれど、読み始めると一気に読んだ。

日疋についてこう書かれている(p112)。「記憶のすばらしさ、熟慮断行といふ言葉が実によくあてはまるやうな万事の処理のしかた、相手との微妙な関係を即座に読み取つて、抜きさしならぬ応対の呼吸を見出す勘、かういふ特徴をあげればいくらでもありさう」

「たとへ言葉では素気なく拒まれようと、彼の身近に自分を感じる一つ時さえ得られるなら幸福の道は決して閉ざされてはゐない」、いじらしい石渡ぎんはそう思う(p193)。ドラマ化されたこの物語が強く記憶に留まっているのは彼女の存在が大きい。昔観たドラマでぎんに扮したのは中田喜子だった。

「暖流」を読んでみよう(サイト内)。「誠実であろうとすることと、誠実であることとの隔たり」(p196)

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