2.26事件 (1)
- 2021/06/28 06:25
- カテゴリー:読み物
「ここ一か月程は、松本清張の『昭和史発掘-2.26事件』を読んでいました。ちょうど最終章です。コロナ禍対策で図書館が休館なので、こういう時に厚い本を読もうと、全5巻を借りたのです。登場人物がやたらと多いので閉口」云々と、先日、T氏宛てメールの中で書いた。一冊目は、統制派の永田軍務局長が、皇道派の相沢中佐に惨殺される「相沢事件」の章から始まる。
時間的な切迫が二・二六事件発生の心理的な引き金となった。「時間」が彼らを二月の「蹶起活動」に追いこんだともいえよう。
皇道派・急進青年将校の実力行使は、なぜ、あの1936(昭和11)年2月だったのか。松本清張著「昭和史発掘5」2.26事件Ⅰ(文春文庫、2005年、新装版)から(p137)
1935年7月 皇道派・真崎甚三郎教育総監の罷免、8月 相沢事件、12月頃 第一師団の満州移駐が内定。翌年2月26日、この大事件が起こる。相沢事件に接し「大きな刺激と昂奮とをうけた」青年将校らは、激しく行動的な心理に駆り立てられる。満州移駐前のタイミングを逃すわけにはいかなかった。
菱刈隆は「薩摩の最後である」(p56)。「人間は一晩考えると、意見が決まることがある」(p122)。「長州閥名残り」の寺内寿一(p235)。天保銭組(陸大卒)と無天組、昭和初年の農村の疲弊と青年将校の単純な正義心(p278)。「まるで森の中に魚が降ってきたような意外事」(p351)