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20年前の声

企業年金について訊ねたいことがあって、最初に勤めた会社へ電話した。15年間働いて退職届を出したのは今から20年前のこと。

辞める際にもらった書面に電話番号が記載されている。それで繋がった。女性が出た。知っている人の声にとても似ている、その人はかつて研究部門の同僚だった、本社にいるはずない。そんなことを考えながら質問事項を伝えた。調べてもらうことになった。

折り返し電話がかかって来て先方が名乗った。やはりその人だった。こちらのことは、すぐに判っていたようだ。なにせ名前を伝えたわけだから。それとも声を聞いて誰だか思い当たったのだろうか、私が20年経っても声を覚えていたと同じように。

そう言えば、十数年前の声を聞き分けるというエピソードがあった。確か横山さんの「64」だったかな。昔聞いた声を追い求めて電話帳のア行から片っ端に電話をかける。無言のまま先方の声にじっと耳を傾けて目当ての人物を突き止める。そういう話だった。また図書館で借りて来よう。

# 横山秀夫著「64」(2012年)

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