不破哲三氏死去
- 2026/01/18 06:37
- カテゴリー:時の話題
え、と驚く一本があった。産経新聞の社説が、日本共産党の不破哲三元委員長が亡くなったことを採り上げている。この一週間、在京六紙の社説は、首相が衆院解散を伝達、立民と公明が中道新党、日韓首脳会談、など各紙が揃って書いて賑わった。そんな中、今回は、産経新聞のこの一本を読み解いてみよう。その社説のタイトルは、「不破哲三氏死去 時代を見ぬ革命家だった」(1/13付け)。
産経新聞のこの社説には、同紙の右派保守としての鮮明な編集方針と、日本共産党に対する長年の批判的スタンスが強く反映されている。これは、一政党指導者への、単なる、追悼文ではない。
産経新聞は、皇室を日本の伝統・文化の中心として極めて重視する論陣を張っている。この社説内で不破氏による綱領改定を「戦術的擬態」「憲法秩序への挑戦」と厳しく批判している中には、共産党がかつて掲げた「君主制の廃止」という本音を見逃さないという、同紙の強い警戒感を見て取れる。
不破氏は、長年に渡り、日本共産党の知の巨人として君臨し、同党の路線の決定権を握って来た。産経新聞は、その不破氏の死を単なる個人の死去ではなく、戦後共産党の一時代を築いた象徴の終焉と捉えている。同紙にとって、保守主義の対極にある共産主義の象徴を総括することは、自らの言論のアイデンティティを確認する作業でもある。
産経新聞は、防衛力の強化や日米同盟の堅持を強く支持する。社説の中で、不破氏が「中国の脅威」に対処するための現実的な防衛政策転換を行わなかったと非難するのは、日本の安全保障環境が悪化する中で、共産党を、現実を直視できない存在と見なしているからだ。
産経新聞の読者は、共産主義や左派勢力の動向に対して厳しい監視の目を向ける保守的な層が多くを占めている。他紙が不破氏の功績を淡々と報じる一方で、あえて「時代を見ぬ革命家」と断じる辛辣な評価を掲載することは、読者の期待に応え、保守メディアとしての存在感を示す狙いがある。
という具合に、産経新聞は、不破氏を日本の伝統的秩序を脅かす思想の象徴と位置付け、もはやその思想が時代に適合していないと強く主張している。そうすることによって、共産主義の時代の終わりを宣言し、同紙の読者層である保守層の価値観を代弁する。右寄り高市政権への高い支持率や、隣国の脅威による安保意識の高まりという今の日本の空気が、同紙にこの社説を書く勇気を与えたに違いない。
しかし、どんなものだろうか。訃報に接して、「時代に取り残された」と書く姿勢は、言論機関としての品位に欠ける。その言説は、死者への礼節を欠いた不当なバッシングだし、同時に、右傾化する日本社会を象徴する不寛容さの表れだ。
とても危険なニオいがする。
# 六紙社説(サイト内)。共産党元議長の不破哲三さん死去 天皇制や自衛隊容認の「柔軟路線」(朝日新聞、2025/12/30)、不破哲三さん死去 日本共産党前中央委員会議長(しんぶん赤旗、2005/12/31)