「開化もの」
- 2021/05/04 06:23
- カテゴリー:読み物
明治ものというと、そのころは、とかく編集者から敬遠されたものだった。現代ものでもなく、時代ものでもない。何か谷間のようなしろもので、読者になじめないというのが常識だった。だが、私は明治ものが好きで、芥川龍之介の作品の中でも開化ものをもっとも愛好している。大仏次郎氏の作品についても同じことがいえる。
松本清張全集35巻「短編1」(文藝春秋、1972年)の「あとがき」で、著者が「恋情」について触れている。引用はそのくだりから(p524)。「恋情」、1955年初出。
芥川龍之介の「開化もの」は、5作品、「開化の殺人」(1918年)、「開化の良人」(1919年)、「舞踏会」(1920年)、「お富の貞操」(1922年)、そして「雛」(1923年)。大仏次郎の方は、「霧笛」(1933年)や、「幻燈」「花火の街」「薔薇の騎士」「その人」など15作ほどが知られているようだ。