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遠い唇

  • 2019/11/24 07:32
  • カテゴリー:読み物

イソップのウサギも、《相手がカメの時くらい、せめて横になりたい》と思ったのではないか。周りから《ウサギ》は四六時中、走るものと決めつけられ、疲れ果てていたのではないか。

北村薫著「遠い唇」(KADOKAWA、16年)に収載の「ゴースト」から(p136)。人生に疲れ気味の主人公は、自分にかかって来た電話の主を取り違えてしまう。先方の苗字が、その時、頭を占めていた人と同じだったのだ。似たようなことを経験したことがある。学生時代、おれはオケの後輩と二人で一軒家をシェアしていた。ある日、留守の間におれ宛ての電話があったと後輩がメモ書きを残してくれていた。かけて来た人の名を見て、《あの人》からだ、と心に灯がともるような感覚があった。再度の電話は、その日の内にあった。出てみると、声が違う。《あの人》ではない。が、知っている声だ。急いで「記憶のページをめく」る。いつだったか高校時代の同級生から手紙が届いていた、それには結婚したとあった。そうか、彼女が嫁いだ先の苗字がそれだった。こちらは《あの人》と決め込んでいるからしばらくトンチンカンなやり取りをすることになってしまった。もう35年は経つだろうか、古いエピソードを思い出した。

# 「その後、唇は硬く結ばれた」(p15)、「合理的なはずの推理の材料」(p68)。北村薫著「八月の六日間」

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