ノースライト
- 2020/11/14 07:12
- カテゴリー:工芸・美術
経験が才能や理念に勝るのは一定のレベルまでのことで、それを超えれば、人ひとりのちっぽけな経験など、大いなる才能が紡ぎだす理念理想の前に跪くしかない。
横山秀夫著「ノースライト」(新潮社、19年)から(p162)。最寄り図書館に予約を入れたのは半年ほど前のこと、ようやく順番が巡って来た。
良質のミステリーでありながら、ブルーノ・タウトの評伝を織り込んだ、ちょっとした芸術論でもある。芸術とは、質とは、建築家とは、そういう興味深い議論があちこちに顔を出す。いわく、「新奇なものを作ろうとする欲求そのものが、既に質と矛盾している」、「家がもし、人を幸せにしたり不幸にしたりするのだとしたら、建築家は神にも悪魔にもなれる」、「承認欲求のない芸術家が芸術家と言えるのか」。
# 円卓、漱石が見た芸術と科学の美(いずれもサイト内)、滂沱(ぼうだ)、椅子の図面、ブルーノ・タウト|Wikipedia