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蝦夷地別件

  • 2021/10/26 06:22
  • カテゴリー:読み物

地道に何かをやりつづけるやつにはだれも適わねえってことさ。おれはそこそこの小まわりは利くが、ただそれだけのこった。おめえさんみたいに地に足をつけてじぶんの考えをじっくり押し進めていくなんて芸当はどう転んでもできねえ

厚岸で養生所を開く洗元に向かって、無頼の徒のような静澄が言う。船戸与一著「蝦夷地別件」(新潮文庫、1998年)から(上巻p438)。大部な文庫本全3巻、原稿用紙で2.8千枚の巨編。読み終えるのにだいぶ日数がかかった。

洗元と静澄、彼ら僧侶二人は長生きする。他の主要な登場人物、例えば、松前藩の番頭、幕府の間諜、国後アイヌや救国ポーランド貴族団の面々が、ばたばたと逝ってしまうのとは対照的だ。

六十数年経ち、静澄は、また、洗元と自分とを対比する。「行動する人間はたえず何らかの戒めと向きあわざるを得ず、観察する人間は踏み外すべきかどうかをみずからに問うべき戒めを持っていない」(下巻p670)。自分は、時の流れを傍観しただけでそこから何も得ることがなかった。やるべきと思うことをやり抜こうと「炎のように生きた」洗元が眩しかったと吐露する。

# 広敷添番御庭番、新井田孫三郎の長曾禰虎徹、葛西政信の備前長船盛光

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