国の地方への指示権
- 2024/05/26 06:01
- カテゴリー:時の話題
国が、非常時に、自治体に指示権を発動できるようにする地方自治法改正案、これについてもう一度採り上げよう。きのう(5/25)、「審議が、衆院で大詰めを迎えている」と産経新聞の社説が伝えた。
前回、昨年12月に見たように、この改正は、コロナ禍の際の医療対応を巡り、地方と政府との調整が難航したことがきっかけとなり提案された。が、感染症に関する法律が改正され自治体への指示規定なども拡充された今、コロナ禍や何か別のパンデミックに対応するための改正ではないことは明らかだ。
いったい何のために、地方自治法を改正しようとしているのか。在京六紙の社説も、かなり怪しんでいる。
本改正案は「地方分権の推進と矛盾するのは明らかだ」(東4/5)。「これほど強大な権限の新設がなぜ必要なのか。何を想定しているのか。疑念は尽きない」(朝4/20)。「最大の問題点は、この法案がなぜ必要で、どのような事態と措置を想定しているのかが不明なことである」(毎4/22)。「政府はどんな事態が起きたときに指示を出すのか、具体的な説明を避け続けている」(朝5/26)。
政府は何を考えているのだろうか。少しヒントになるような記述もある。
「自治体の職員数がこの30年間で50万人近く減少したことも、自治体の緊急時の対応能力を低下させた面があるのではないか。人口減少が進めば、自治体の機能が一層低下する恐れもある」(読5/8)。
日刊スポーツのコラム「政界地獄耳」(5/24)は、さらに踏み込む。タイトルは「地方自治に逆行する自治法改正の裏に衰退国家の準備」。「背景には今後の人口減と地域の過疎化による情報共有の困難さや鉄道などのインフラの集約化があるのだろう。衰退国家の準備が始まったということだ」と、政界関係者の声を紹介している。
どの辺りに政府の狙いがあるにせよ、国会での丁寧な審議に期待したい。
さて、5/20週の六紙社説は、そのほかに、政治資金改革、エネルギー戦略の改定、皇位継承議論、イラン大統領墜落死、大企業の好決算、国立大の学費、リニア工事、横浜市教委による裁判傍聴妨害、車のデジタル化、台湾頼政権発足と中国による軍事的威嚇などを話題にした。