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カテゴリー「時の話題」の検索結果は以下のとおりです。

林外相のG20出席を阻んだ者

林外相が、インドで開かれた主要20か国・地域(G20)外相会合を欠席した。参院での予算審議の優先を求めた参院自民党と立憲民主党の意向を踏まえたと報じられた。

ロシアによるウクライナ侵略をはじめとする国際情勢が激動する状況下、今年G7の議長国を務める日本の外相がG20への出席を見送るとはどういうことか。

社説も当然意見する。「与野党の判断には、失望を禁じ得ない」(読3/2)、「政府と国会の見識を疑う」「国益を損ねる判断というほかない」(産3/2)、「硬直的な国会の慣例にとらわれて国益を損なう事態を二度と起こしてはならない」(経3/5)。

憲法63条には、閣僚の議院出席の権利と義務が定められている。それに、衆参の予算審議では基本的質疑の間は「全ての閣僚が出席するのが原則」と1999年に与野党の国会対策委員長が申し合わせた(経2/28)。そうであればこそ、G20会合の日程は1月には判明していたのだから、より適切な「日程調整のあり方」(読3/2)があったはず。「政府と国会の判断は、世界に対する責任を果たさないものだ」(産3/2)、その苦情に反論はできまい。

3日の「政界地獄耳」は自民党内の声を紹介している。「林を止めたのは野党や憲法の縛りではなく」、自民党の世耕弘成参院幹事長が「理屈で押し切った」と。「衆院で予算が上がり、参院が軽視されることを嫌った世耕のプライド。参院から衆院に鞍替えした林への嫌がらせ。世耕も衆院鞍替えを模索したがうまくいかない八つ当たりとも」。

実の所、原因は一人の人物の思惑にあり、その動機は、プライドや、嫌がらせ、八つ当たりだったりする。世間一般によくある話だ。ただ、今回の参院幹事長の件では、徳の高い方ではないのだろうか、容赦なく書き立てられてしまった。あの人は私情で国益を損ねた、と皆の記憶に留められることになる。

さて、2/27週の六紙社説は、そのほかに、自民党大会、中国の停戦案、死後再審、学術会議と政府、出生数80万人割れ、五輪談合起訴、新宇宙飛行士、韓国大統領の演説、諫早湾非開門で決着、中学教員刺傷、放送法巡る内部文書などを話題にした。

六紙社説(サイト内)。日本国憲法第63条|Wikipedia、政界地獄耳「参院のメンツを立てて国益を損ねた?」(日刊スポーツ、3/3)、自民・世耕氏「外務省からどうしても出たいと説明なかった」林外相のG20外相会合欠席巡り(日テレNEWS、3/3)

三菱重工旅客機撤退

三菱重工がジェット旅客機の開発を断念。22日に毎日新聞が社説を掲載した。これで在京六紙の社説が出揃った。

「致命傷は、TC取得のノウハウが無かったことだ」(東2/10)。TCとは機体の安全性などを証明する型式証明のこと。「技術だけでは事業化には至らないというのも、今さらではあるが重要な教訓だ。だが、果たして技術力そのものも十分だったのか」(朝2/14)

「自力で航空機全体を設計・製造する能力は不十分だった」(読2/14)。「自前の技術を過信し、海外の先進技術を取り込むことに慎重すぎた」(産2/15)

「歴代経営陣の責任は重い」「問題なのは、弱点を認識して早期に対処するという基本動作を怠ったことだ」(毎2/22)。本社・三菱重工と事業会社・三菱航空機との間で「主導権争いもあったとされる」(経2/10)

開発ノウハウ、技術力、それに経営陣の力量、どれもこれも足りない、と断ずる。各紙とも手厳しい。

その矛先は、本事業に5百億円もの血税を投じた国にも向けられる。「官庁には、有望な技術を見極める能力が欠けているという自覚が求められる」(朝2/14)と。ま、確かにそうなんだろうけれど、そう言う新聞はどうなんだ。

例えば、各紙社説は、W杯カタール大会で16強止まりだったサッカー日本代表に対して、ダメだったけれどよく頑張ったね、と手放しで称賛した。これは、良くて16強、優勝なんてあり得ないと最初から見限っていたからだ。

国産旅客機開発の失敗に対しては、どの社説も、ダメだったけれどよく頑張ったねとは言わない。これは、成功するものと勝手に決め付けていたからだろう。「有望な技術を見極める能力が欠けている」のは、官庁だけでなく新聞も、ということだ。

さて、2/20wの六紙社説は、そのほかに、北朝鮮のICBM、立憲民主党大会、米中外交トップ会談、商工中金改革、竹島の日、ガーシー氏処分、原子力規制委の議論、露ウクライナ侵略1年、核軍縮の停止、はだしのゲン、沖縄北部の無人島、マイナンバーカードの普及、日銀総裁候補の所信などを話題にした。

六紙社説、サッカー日本、戦い終えて(いずれもサイト内)

中国が戦狼外交を転換か

軍備が理由で互いを信頼できないのではありません。互いを信頼できないから軍備を行うのです。

米レーガン大統領による演説から。この中で、ソ連のゴルバチョフ書記長に対し、ベルリンの壁を壊せと諭す。映画「アトミック・ブロンド」(2017年)で引用されていた。壁崩壊前後の東西ベルリンを舞台にしているこの映画では、当時のニュース・フィルムが度々登場する。[Filmarks 3.6]

中国は、2023年の年明け早々、外相が米国へ協力関係推進を呼びかけ、強面スポークスマンの左遷も行った。これまでの過激で好戦的な「外交姿勢を転換させたのではないかとの期待がふくらんだ」。背景には、「ゼロコロナ政策で疲弊した経済復活のため、欧米との関係改善を図りたい事情」や、「ウクライナ侵攻をめぐり、友好国ロシアと距離を置く」意図があるようだ。東京新聞の社説「中国の戦狼外交 転換本物か見極めたい」(2/15)がそう伝えている。

中国の戦狼外交からの転換について社説で述べたのは、在京六紙の中では東京新聞以外にはない。さすが、多様性や寛容に敏感な同紙だけのことはある。と思いきや、米国による偵察気球撃墜への対応の件で「戦狼の地金が出た」、協調外交は打算的な演出に過ぎず、習近平政権の「世界秩序に挑む姿勢」に変化はないのではないか「しっかり見極める必要がある」と冷やかな目を向ける。

そう懐疑的にならずに、もう少し、信用や信頼を養う姿勢があってもいいのでは。ロシアと離れたら親しい友はもう誰もいない、と中国は感じている。日本は、手を差し伸べて、信頼関係を回復する絶好の機会ではないか。「互いを信頼できないから軍備を行」おうとしている今、日中の関係次第では、軍備増強の議論に関して違う観点が得られる可能性がある。新聞は、近隣諸国、特に大国、中国へのより良いアプローチについて、もっと意見すべきではないだろうか。

さて、2/13wの六紙社説は、そのほかに、日銀新総裁、国産旅客機撤退、臓器斡旋事件、マスク着用緩和、原発60年超容認、戸籍に読み仮名、偵察気球への対策、スマホアプリ市場寡占、核ごみ最終処分、被爆2世の救済、H3ロケット中止などを題材とした。

六紙社説、ABEMA(いずれもサイト内)。Remarks on East-West Relations at the Brandenburg Gate in West Berlin | Ronald Reagn Presidential Library & Museum、アトミック・ブロンド|Wikipedia

人権意識、政権と新聞

「隣に住んでいたら嫌だ」と、LGBTや同性婚カップルを差別する発言をした荒井勝喜首相秘書官が更迭された。在京六紙は揃ってこれを社説で採り上げた。

「更迭は当然」(毎2/5、産2/5、東2/7、経2/7)、「驚きあきれる」(朝2/5)、「度を越している」(読2/7)と、各紙とも差別発言をした首相側近を許しはしない。では、これに対してはどう考えるのか。荒井氏の言葉が引用されている部分(毎2/5)、

「秘書官室もみんな反対する」とも述べた。

差別意識を持っている首相秘書は自分一人じゃない、と荒井氏は白状した。たまたま本音を吐いてしまった者がクビにされて済む話ではない、ほかにも更迭されるべき秘書官がいるのだ。新聞の社説は、差別主義者をあぶり出せ、と容赦なく質すべきではないのか。「政権の人権意識の欠如が厳しく問われねばならない」(朝2/5)、「周囲にこうした考え方を容認する空気があったのでは、との懸念が拭えない」(経2/7)、せいぜいその程度で、六紙社説は揃って鈍感ぶりを発揮している。

ところで、「みんな反対」発言は、毎日のほかに朝日の社説も引用している。が、「述べたという」と伝聞になっている。「述べたとされる」という表現もある。この辺りの事情について「政界地獄耳」(2/9)が教えてくれている。荒井氏の差別発言はオフレコを前提とした懇談の場でなされ、朝日はそれに「参加していなかった」と。

オフレコの禁を破って報道したのは毎日だった。それについて六紙社説では、読売が唯一コメントしかつ批判している。「取材される側が口をつぐんでしまえば、情報の入手は困難になり、かえって国民の知る権利を阻害することになりかねない」(読2/7)と。オフレコの約束を厳守すべきであって、たとえ政権中枢の差別主義者であっても指弾すべきじゃなかった、どうやら、そういう論調のようだ。どこかが禁を破らなければ、各紙、黙り通したのだろう。新聞の人権意識は一体どうなっているんだ。政権中枢からの差別発言に対してとやかく言う資格はあるのか。

さて、2/6週の六紙社説は、そのほかに、中国の偵察気球、日産とルノー、東京五輪談合逮捕、トルコ大地震、バイデン氏一般教書演説、闇バイト強盗指示役逮捕、日比首脳会談、三菱重工旅客機撤退、北朝鮮軍事パレード、日銀次期総裁などを話題にした。

六紙社説(サイト内)。政界地獄耳「オフレコ懇談、参加可否の論議を」(日刊スポーツ、2/9)

「探る’23」

未来の地質学者は、この時代の地層から、おびただしい量のプラスチックや核実験の生成物であるプルトニウム、重金属などを見つけることになるだろう。コンクリートなど地球上の人工物が、総重量で生物を上回ったとの試算もある。

地質年代は「人新世」に入ったのではないかと言われる。横文字ではAnthropocene、人の世という意味のギリシャ語に由来するらしい。引用は、毎日新聞の社説「探る’23 人新世の地球 成長の方程式改める時だ」(1/6)から。

もはや限界の大量消費モデル、そこからの転換を図るためには、「短期的な利益や効率を優先する経済構造を変えなければならない」、GDP偏重を見直し「経済を評価する物差しを変える必要がある」と説く。

1月、同紙はこの社説と同じく「探る’23」を冠したシリーズで将来を展望した。元日に始めて30日までに合計11本。1月の同紙社説は、全部で49本だったので、2割以上をこのシリーズに費やしたことになる。

扱ったテーマは、民主主義の再生、米中と国際秩序、安全保障、大量消費モデルの限界、世界経済、日本経済、エネルギー政策、デジタル技術、格差の連鎖、地方議会の再建、そして30日は、外国人との共生。いずれの題材も、かなり地味。

茶の間に受けそうにないテーマに対して地道に意見する、それができるのは新聞、特に社説の強みだろう。そうするのが役割でもある。世相に媚びずに大切なことを見極め、これをどう考えるのだ、と問題を提起する。老舗のメディアとして、ぜひ、範を示し続けてもらいたいものだ。

さて、1/30週の六紙社説は、電力不正閲覧、広域連続強盗と闇バイト、中国ビザ再開、日産とルノー、ミャンマー政変2年、政府の財政試算、石垣市が尖閣調査、日NATO会談、児童手当の所得制限、米利上げ縮小、一票の不平等、マイナンバーの用途、富雄丸山古墳の副葬品などを話題にした。ぎりぎり荒井勝喜首相秘書官更迭も入った。

六紙社説、新年展望、23年(いずれもサイト内)。人新世|Wikipedia

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