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マクナマラの誤謬

マクナマラの数字第一の戦略は、アメリカの政策を正しく導けませんでした。計測できるものは計測して、計測できないものは忘れようと考えるのは、致命的な失敗への第一歩

社会学者のダニエル・ヤンケロビッチは、定量的観測にのみ基づいて決断を下することをマクナマラの誤謬と名付けた。マクナマラはベトナム戦争時のアメリカ国防長官。ベトコンの死者数を指標として戦いの趨勢を見極めようとしたが、その数が増えても戦況は悪くなるばかりだった。

映像の世紀バタフライエフェクト「ベトナム戦争 マクナマラの誤謬」から。

数字にばかりこだわり全体の状況が把握できない、これはよくあることだ。

例えば、日本製鉄によるUSスチールの買収もこの誤謬のニオいがする。経済的な観点からは両者が一緒になることは双方にとって好ましい。しかし、日本企業による買収を、米国の国民や政権がどう感じるかはよく検討されなかったのではないだろうか。

働く人のモチベーションは、昇給や昇格だけで左右されると考えがちな管理職や組織が抱える過ち。これなんかもこの誤謬に通じるものがあるような気がする。

USスチール買収阻止モティベーション論(いずれもサイト内)。映像の世紀バタフライエフェクト「ベトナム戦争 マクナマラの誤謬」(NHK総合、1/23 23:50)、Robert McNamara(1916-2009)、Daniel Yankelovich(1924-2017)

優勝決定巴戦

昨年9月、NHKのテレビ番組の中で、巴戦が公平かどうかという話題があった。強さが互角の三人の場合、最初に控えに回った力士が不利、と示された。確率の計算でそうなる。これを見て巴戦が俄然楽しみになった。が、9月、11月両場所では巴戦にはならなかった。

そして、きのう(1/26)。初場所の千秋楽は、三人が同星で並び、優勝決定は巴戦にもつれ込んだ。平幕の金峰山と王鵬、そして大関、豊昇龍の三力士。

注目の控えは、くじ引きで王鵬となったのだが、結果、豊昇龍が他の二人を圧倒しさっさと連勝してしまった。こうまで力量に差があると、最初の控えが不利とか関係ないな、と観ていて思った。番付の違いを見せ付けられた。

豊昇龍は横綱へ昇進するだろうか。この初場所では、照ノ富士が辞め、琴櫻が10敗もして負け越した。一方で、王鵬12勝、伯桜鵬と尊富士が10勝。世代交代が着々と進んでいる印象を受けた。

ところで、二人なら対談、三人なら鼎談と言う。鼎と巴、字の成り立ちとか何か関係があるのだろうか。今度また調べてみよう。

尊富士の新入幕優勝(サイト内)。「3か月でマスターする数学」第9回「これで人生大逆転!? 確率」秋山仁、横山明日希、塚原愛(NHK-Eテレ、2024/9/4 21:30)、大相撲初場所 豊昇龍が優勝 横綱昇進に向け臨時理事会開催へ(1/26)

中居氏問題でフジ会見

仕事を取る。取引の関係を強くする。そのために手厚い接待をする、どこの業界でもよくある話だろう。飲ませる、付け届けをする。それに留まらず、抱かせる、が、罷り通っていた時代があった。世の中、良くなって、そんな悪しき慣行はなくなったと思いきや、芸能界やその取り巻きであるメディア業界では対応が遅れがち。

昨年末、週刊誌が、元SMAP中居正広氏と女性の間で性的な問題が起きたと報じた。フジテレビ社員の関与も指摘され、同社の社長が謝罪会見。収拾はつかず、スポンサー企業のCM差し止めが相次ぐ。結局、第三者委員会による調査が実施されることになった。なお中居氏ご本人は芸能活動から引退することに。

在京六紙の社説がどう書いているか見てみた。一週間ほどの間に8本もある。

「テレビと芸能 業界の透明化へ調査を」(朝1/19)。テレビ局が起用したい「芸能人との関係を強めるために、女性を性的に利用していないか」、これこそが世の人が「同社に抱く不信感の核心」。

「中居氏問題でフジ会見 疑問に答える徹底調査を」(毎1/19)。謝罪会見では多くの質問に対して回答を拒み、「真相究明よりも、組織防衛に腐心していると受け取られても仕方がない」。

「フジは丁寧な調査と説明を」(経1/20)。今時ハラスメント問題を蔑ろにすれば、従業員含めステークホルダーから見放される。「業績や株価への影響も無視できない」。

「フジテレビ会見 企業統治不全が深刻だ」(東1/21)。視聴者やスポンサーの信頼を回復するには、経営陣の総入れ替えなど余程の荒療治が要るだろう。「同社の企業統治はもはや体をなしているとは言えない」。

「フジテレビの調査 信頼回復へ厳正な解明を」(産1/23)。フジは、その性的な問題について2023年には把握していたが、中居氏を起用し続け、調査、公表は遅れた。「隠蔽と取られぬよう丁寧な説明が欠かせない」。

「不信を増幅させたフジの過ち」(経1/24)。謝罪は閉鎖的な会見で行われ、厳しい批判を浴びた。「メディアとしての社会的責任を放棄したも同然」、「経営判断のミス」。

「フジテレビ問題 事態を悪化させた認識の甘さ」(読1/25)。社会ではコンプライアンス意識が高まっている。「他の放送局にも同じような問題があるのではないかと疑っている視聴者は少なくない」。

「フジテレビ 構造と責任 調査徹底を」(朝1/26)。「人権への感度を高めて悪弊がないか省み、問題を一掃する機会」とせよ。会社を危機に陥れた経営陣はもちろん、他のステークホルダーにも考えて欲しい。

さあどうなる。

さて、1/20週の六紙社説は、そのほかに、都議会自民の裏金事件、トランプ政権2期目、春闘スタート、イチロー氏殿堂入り、障がい者の逸失益、日銀が追加利上げ、首相施政方針演説、米国WHO脱退、先の見えない中国経済減速、などを話題にした。

六紙社説、ジャニーズ(いずれもサイト内)

追悼 Quincy Jones

黒人のアーティストがゴスペルっぽいのは当たり前。カラダに染みついているルーツだ。問題は、それと現在の音楽界の間に存在している偉大な先達ら、例えば、チャーリー・パーカー、B.B.キング、ディジー・ガレスピー、マイルス・デイビス、彼らに対する敬意があまりにも軽んじられている。

ブラック・ミュージック・シーンの若手たちは、伝統に敬意を払い、もっと学ばなくてはいけないとクインシー・ジョーンズは力説したのだとか。1995年にアルバム・プロモーションで来日した折のインタビューで。

引用は、特別番組「The Dude追悼・クインシー・ジョーンズ」から。年末年始にいくつかダウンロードしておいたラジオ番組の中にこれがあった。

他界されたんだな。昨日この番組を聴くまで知らなかった。昨年11月3日だったとか。この大物の訃報に気付かなかったのはどうしてだろうか。

彼が制作に関与したアルバムでは、ヘレン・メリルらの「Helen Merrill」(1955年)、そしてジョージ・ベンソンの「Give Me the Night」(1980年)、この2枚を好んで聴く。それに鬼警部アイアンサイドのテーマ曲や、Soul Bossa Novaなども取り混ぜて、昨夜も、眠る前の一時、彼の音楽にどっぷり浸った。

ディスコグラフィーをあらためて見て驚いた。映画「ジョンとメリー」のサウンドトラックは彼の制作なんだな。そういうつもりで今度また観てみよう。

ジョンとメリー(サイト内)。特別番組「The Dude追悼・クインシー・ジョーンズ」萩原健太(TOKYO FM、1/2 20時)、Quincy Jones production discography|Wikipedia

イチロー氏米野球殿堂入り

不完全であるというのはいい。不完全だから進もうとできる。完璧を追い求めて進んでいくのが人生だと思う。

イチロー選手は会見でそんなことを述べたとか。394人中393人の票を得てアメリカ野球殿堂入り。満票にわずか1票足らなかったことをどう思うかと尋ねられて。

英チャーチル首相は気の利いたことを言う、彼が出て来ると、聞き漏らさずメモをとったものだ、と記者が語るのをテレビで見たことがある。実際に、チャーチル氏は、「どんな社会であれ、赤ん坊にミルクを与える以上に素晴らしい投資はありえない」など、様々な名言を残している。

イチロー選手も、チャーチル氏ほどではないにせよ、メモしておきたくなるような、気を引くようなことを言ったりする。何かの受賞の際にも、ありきたりな感謝や喜びの言葉だけで済まさないことが多い。殿堂入りの一連の会見でもそうだったようだ。

イチロー(サイト内)。イチロー氏アメリカ野球殿堂入りで語ったことは(1/22)

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