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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

テロ

  • 2021/06/05 06:58
  • カテゴリー:読み物

わたしたちは毎日、悲惨な光景を目にしますが、それが自分の身に降りかかるとは思っていません。わたしたちの生活から死を追いだし、ずっと平和な暮らしがつづけられると思っています。わたしたちは死から解放されたかのようにさえ見えます。しかしわたしたちの社会、わたしたちの自由、わたしたちの生き方は脅威にさらされているのです。

弁護士が言う。フェルディナント・フォン・シーラッハ著「テロ」酒寄進一訳(東京創元社、2016年)から(p117)。引用にある「脅威」は、テロリストによる惨事のこと。さて、以下はちょっと別の話。

「医療従事者でも結構多くの人が副反応で苦しんでるとの話もあるそうですが、どう思いますか」と、ワクチンの副反応について訊ねられた。厚生労働省のサイトで公表されているデータを見て、次のような返事を書いた(「Re: 相談」、5/20)。「都度、審議会で報告されています。最新は、5/12の開催だったようです。ここから、ざっと数字を拾いました。

  • 期間、2/17~5/2(2か月半)
  • 接種数、3.8百万回
  • 死亡、28例(65歳以上18例、未満10例)
  • 副反応疑い、664例、その内、
  • アナフィラキシー、107例

死亡28例は、いずれも、情報不足でワクチンの副反応が死因かどうか評価できないとあります(略)。さて問題の、副反応のアナフィラキシーです。107例の内訳を見てみると、大半の99例が女性です。女性に多いことを初めて知りました。それも20歳代から50歳代に集中しています。60歳代は3例です。それ以上はなし。

107例の症状は、ほとんどが回復か軽快になっています。未回復は3例のみ。46歳(食物アレルギー)、63歳(狭心症)、64歳(造影剤アレルギー)、いずれも女性です。( )内にあるように、基礎疾患などがある方です。

アナフィラキシーで呼吸困難などになると、確かに、苦しむとは思います。が、3.8百万回に107例ですから、率は、10万で3例です。日本の1億人なら3千人です。年間の交通事故死もそれくらいなので、普通はほとんど起こらないと感じるレベルではないでしょうか。ただ、交通事故と同じで当たるとたいへんですが。」

ワクチンの副反応で苦しむ、交通事故で死ぬ、はたまた、テロリストによる惨事に巻き込まれる。まさか「自分の身に降りかかるとは思って」いない、それが多くの人の心情ではないだろうか。

なお、6/5現在、厚生労働省のサイトでは、5/26に開かれた審議会でのデータが公表されている。この次(6/9?)には、10百万回接種のデータになるだろうか。

  • 期間、2/17~5/16(3か月)
  • 接種数、6.1百万回
  • 死亡、55例(65歳以上38例、未満17例)
  • 副反応疑い、943例、その内、
  • アナフィラキシー、146例

# 航空チケットの購入(p76)、より小さな悪(p115)。シーラッハ(サイト内検索)。新型コロナワクチンの副反応疑い報告について|厚生労働省

病魔という悪の物語

  • 2021/06/03 06:25
  • カテゴリー:読み物

仮に短く細い糸にすぎなかったとしても、その糸の縫い合わさりが、まわりの布に一定のきらめきを与えることは不可能ではない。

一人ひとりの人生、一本一本が、複雑で膨大な文化の織り目に組み込まれていく。金森修著「病魔という悪の物語-チフスのメアリー」(ちくまプリマー新書、2006年)から(p138)。

『病魔という悪の物語 チフスのメアリー』あなたは本当に“大丈夫”|HONZ

終りなき夜に生れつく

  • 2021/06/01 06:45
  • カテゴリー:読み物

男はぼくに向かって笑顔を見せ、「お客さまは、お目が高うございます」といった。ぼくは、この男とどこかお互いに通じ合うものがあるのを感じた。

これがどういう意味なのか気になった。読み終えて判然とした。「お前もワルよのう」ということだ。アガサ・クリスティー著「終りなき夜に生れつく」乾信一郎訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、1977年)から(p25)。

そう、ぼく(主人公マイケル・ロジャース)はワルだ。それなのに、なぜか、善良な青年だと思い込んで読み進める。結末を知った後に読み返してみると、引用した部分の仄めかしどころか、定職に就かず、女好き、と自分で言っているではないか(p20)。手には災厄の相(p17)、心には野心(p31)、と他人の評価もある。善良なんてどこにも書いていない。まんまと、作者の術中にはめられたわけだ。

昔読んだケーススタディに「エリック・ピーターソン」というのがあった。若きジェネラルマネジャーの物語。確かハーバードだったかな、MBAを修了。読み手は、その経歴を見て彼は優秀なマネージャーだと思い込んでしまう。だが・・・

# わが終りの時に始めあり、クリスティー自選ベストテン

剱岳 線の記

  • 2021/05/31 06:39
  • カテゴリー:読み物

南米チリの島で何度尋ねても「知らぬ、存ぜぬ」を決め込んでいた現地人が、テレビ番組のクルーがカメラを向けた瞬間、「それ、知ってる!」と態度を一変させたのだ。

探検の現場にテレビカメラが入ることは悪いことばかりではない。髙橋大輔著「剱岳 線の記-平安時代の初登頂ミステリーに挑む」(朝日新聞出版、2020年)から(p189)。

仮説を5W1Hで書いて謎解きを進める、著者のこのアプローチは他への展開ができる。もう一つ教えられたことがある。徹底的な文献探査の重要性だ。探検家なので当然フィールド調査を行う。それは確かな文献情報を踏まえてこそ意味のある調査となり得る。

大伴家持の万葉歌が引用されている(p82)。「立山の雪し来らしも延槻の川の渡瀬鐙浸かすも」(17巻4024)。たち=太刀=剱、延槻(はひつき)の川=早月川。「早月川周辺から見ると(略)立山連峰のセンターに立つのは剱岳である」。

# 独鈷杵(とっこしょ)、磐座(いわくら)。髙橋大輔(サイト内検索)

禁忌

  • 2021/05/29 06:51
  • カテゴリー:読み物

説明には、つねに別のバージョンがあるものだよ

ビーグラー弁護士が、ランダウ検察官にそう言う。フェルディナント・フォン・シーラッハ著「禁忌」酒寄進一訳(東京創元社、2015年)から(p207)。

本作の評価は賛否両論に分かれたと訳者あとがきにある。Die Zeit で「二度読んでも理解できなかった」と評されたとか。確かに、読み終えてすぐには何のことか判らなかった。ちらちらと読み返して以下のような理解に至った。

これは、主人公エッシュブルクと彼の異母妹、二人による狂言犯罪だ。法廷で新たなインスタレーションを発表することを目的としている。如何に芸術表現とは言え、神聖であるべき場を虚仮にするのはいかがなものか。書名のタブー(禁忌)はそこから来ている。

主人公は、このインスタレーションで「自画像」(p219)を描こうとした。ティツィアーノが筆ではなく、直接、指で自画像を描いたように、写真家の主人公が写真ではなく自身が出演するインスタレーションでの表現を試みた。一回限り、ぶっつけ本番の自作自演には、数か月に及ぶ勾留付き。

隣人セーニャ・フィンクスは、主人公だけに見えていた。本人には真実だったけれど、現実には存在しない架空の産物(スフィンクス、p210)だ。それを典型として、主人公が半生を供述する前半部分は、「真実と現実」(p153)が綯い交ぜになっている。その整理役としてビーグラー弁護士が起用された。

刑事による拷問の件は、インスタレーション作品には計画されていなかった部分。ビーグラー弁護士が法廷で「うまく利用」(p219)し、作品に花を添えることになった。

シーラッハ(サイト内検索)。公判での刑事への証人尋問(p188-203)

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