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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

(日本人)

  • 2020/10/01 06:58
  • カテゴリー:読み物

ブキャナンは、「民主政国家は債務の膨張を止めることができない」という論理的な帰結を導き出した。政治家は当選のために有権者にお金をばらまこうとし、官僚は権限を拡張するために予算を求め、有権者は投票と引き換えに実利を要求するからだ。

日本の借金は一千兆円を超えどんどん膨らむ。そのツケは将来どんな風に回って来るのだろうか。橘玲著「(日本人)」(幻冬舎、12年)から(p260)。これは第15章「ぼくたちの失敗・政治編」の中にある。続く第16章は「~経済編」。この二つの章を特に興味深く読んだ。

第15章に、民主党の「五原則五策」(09年衆院選マニュフェスト)が紹介されている。1) 官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ、2) 政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ、3) 各省の縦割りの省益から、官邸主導の国益へ、4) タテ型の利権社会から、ヨコ型の絆の社会へ、5) 中央集権から、地域主権へ。これを読むと、安倍さんは民主党の真似をした、と言われる所以がよく判る。党を越えて、受け継いだわけだ。

橘玲(サイト内検索)。日本人の「人格」の世俗性(損得勘定)、袖井林二郎「拝啓マッカーサー元帥様-占領下の日本人の手紙」、ジェームズ・ブキャナンら「行きづまる民主主義-公共選択の主張」。安倍政権の後世の評価は「悪夢の民主党政権」のリベラルな政策を実現したこと?(9/14)

菅義偉の正体

  • 2020/09/29 06:45
  • カテゴリー:読み物

うちの菅に何をしてくれたんだよっ

やり込めた相手を、そんな風にどやしつけてくれる支援者を持つ。その強力な後ろ楯は、港湾業界のドン。森功著「総理の影-菅義偉の正体」(小学館、16年)から(p162)。菅官房長官(当時)ご本人は、その古い付き合いについて「触れられたくないような印象を受けた」と著者は書いている(p182)。

「横浜の港湾荷役業界に君臨」し、「全国の陸海運関係者に睨みを利かせてきた」ドン、その存在は、自民党運輸族や国交省の官僚からも一目置かれる。当然、運輸族をリードする二階俊博とも昵懇だ。となると、そのドンを介して、菅と二階は、意外に、近いのかもしれない。

国鉄改革をめぐって、行革担当の橋本龍太郎と元運輸大臣の三塚博が大げんか、その仲裁に小此木彦三郎が呼ばれた際、秘書だった菅も「ついていった」(p119)。また、第3次小泉改造内閣で竹中平蔵が総務大臣のポストに就いたとき、菅は副大臣として郵政民営化に向け「実務の現場で汗を流した」(p186)。となると、「規制改革」の何たるか、特に党内の既得権者と醜い戦いになること、を知った上で、首相となった菅はそれを看板に掲げた、とも言える。

最終章は、「政治家と企業の距離が近づけば近づくほど、政治とカネにまつわる危険性が高まると言わざるをえない」と終わる(p302)。本書に登場する企業は、例えば、藤木企業、NHK、JR、國場組、USJ、京浜急行、三井不動産、三菱地所、セガサミー、三浦水産、上野運輸、横浜高島屋、崎陽軒など。どこかで「危険性」が高まりつつあるのだろうか。そうそう、作家の佐藤優がこんなことを言っていた。ラジオ番組「くにまるジャパン極」(文化放送、9/18)にて。

政治家二世三世は無理しなくていい、お金とか選挙区とか。菅さんは叩き上げだっていうことは、今のところは美談で済まされている。けれど、叩き上げは必ず無理をする。安倍政権とは桁が二桁違うスキャンダルが出て来る可能性がある。そうなると、モリカケとか言っていられないような状況になるんじゃないか、率直に言って心配している

敬称略。

森功(サイト内検索)。菅官房長官が密かに進めていた“総理への準備” 麻生副総理、横浜のドンに根回し(9/2)。「元首相・中曽根康弘の政治や行革手法を参考にして」(政界地獄耳、9/22

善と悪の経済学

  • 2020/09/25 06:41
  • カテゴリー:読み物

ケインズの学説の一部(赤字を容認する)だけが採用され、大事な部分(余剰を蓄積する)は忘れられた。そして今日では、景気拡大期でさえ赤字が容認されている。現在のやり方はケインズよりはるかに過激であり、凶作に備えて穀物を備蓄するどころか、貯蔵庫は借用証でいっぱいになっている。

08年のグローバル金融危機(リーマン・ショック)は何とか凌げた。しかし、膨大な債務を抱えたまま、余剰の備蓄なしに、次の危機に突入したらいったいどうなるか。今、GDPの最大化から債務の最小化へ、経済政策の目標を見直すべきと力説する。トーマス・セドラチェク著「善と悪の経済学」(東洋経済新報社、15年)から(p351)。

景気循環の最初の記録は4千年前に遡る(創世記第41章)。エジプト王ファラオは、「夢の中で7頭の肥えた牛と7頭の痩せた牛」を見た。それは、豊作の7年に貧困と飢饉の7年が続く、と解された。言わば14年分のマクロ経済予想だ。豊作年の余剰を貯蔵し凶作に備えた。おかげでエジプトは富み栄え、周辺国を支配下に置くことができた(p87)。

セドラチェク氏のお話(サイト内)。パンデミック激動の世界(3)「停滞か変革か 岐路に立つグローバル資本主義」|NHKスペシャル(9/27 放送予定)

怪しい来客簿

  • 2020/09/21 07:01
  • カテゴリー:読み物

元来、中小企業はおおむね経営者のワンマン体制が敷かれており、社業の発展はすべてボスの功績によるものでなければならない。実力のある社員が居てはかえって困るので、ボスにとって、社員のせいで発展するくらいなら発展などしない方がよいのである。

中小企業とかビジネスとかに限らず、似た話はよくありそうだ。引用は、「色川武大 阿佐田哲也全集」第1巻(福武書店、91年)に収載の「怪しい来客簿」(77年刊)から(p40)。

不思議な短篇集。著者が、主に10代、20代、もしくは30代だった頃の、同時代の人々のことを書いている。濃密な関係の肉親や同僚たちだったり、興行の芸人や相撲取り、名も知れぬ街の人たちだったりする。各々の評伝であり、著者自身の自伝でもある。「夢に出てくる生家」(p60)、「今度、いくらかの取材をした範囲では」(p75)、「奇形の心境とはどういうものか」(p94)、「家系図というものが私の家にもあって」(p143)。

# NHKジャーナルのブックレビュー「怪しい来客簿」岸本佐知子選(NHKラジオ第一、7/21 22時台)

Re: 暗殺者

  • 2020/09/19 06:43
  • カテゴリー:読み物

この世でいちばん容易なことは、自分は正しいと自分自身に言い聞かせることだからな。しかも年を取れば取るほど、それはもっと容易になる

ビリエール将軍(下院議員)がそう言う。ロバート・ラドラム著「暗殺者」下巻(新潮文庫、83年)から(p140)。37年ぶりの再読。それだけ年月が経つと、内容はすっかり忘却の彼方、また一から楽しめる。ただ、解説の最後に紹介されている挿話は、やけに覚えていた。最後の十頁ほど破り取ったショー医師のコラム(リーダーズ・ダイジェスト、82年)だ。それがあったのは、この本の解説だったんだな。

暗殺者(サイト内)

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