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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

失踪者

  • 2022/01/06 06:27
  • カテゴリー:読み物

頭の中にあるのは三度三度の食物をどうするかということだけである。朝食をつめこんでいるときには昼食のことを、昼食を貪り喰っているときには夕食の心配をしている。さながら一個のイーティング・マシーンである。われながら厭になるときがあった。

程度の差はあれど、生きるとはそういうことではないだろうか。この主人公の場合には、追い詰められて採取生活を送らざるを得ない。口にするのは、縞蛇や、赤蛙、野ネズミ、ホンダワラ、昆布、牡蠣、そしてデザートはあけびの実、という状況。引用は、野呂邦暢著「冬の皇帝-野呂邦暢小説集成4」(文遊社、2016年)に収載の「失踪者」から(p282)。初出は1975年。

これはなかなかのサスペンスだ。最初に歴史小説を読んだ。青春ミステリーの作品があるかと思えば、私小説風や、このようにサスペンスものがあったりする。芸の幅が広い役者を見るかのようだ。

野呂邦暢(サイト内)

佐古啓介の旅

  • 2022/01/04 06:34
  • カテゴリー:読み物

人間っていつも失った何かを探しながら生きているような気がする。そう思わないか

と問うと、かっこいいこと言うのねと妹にひやかされる。野呂邦暢著「猟銃・愛についてのデッサン-野呂邦暢小説集成6」(文遊社、2016年)に収載の「愛についてのデッサン-佐古啓介の旅」から(p515)。1978年初出。

不思議な読後感を覚えた。主人公は阿佐ヶ谷の古書店主。副題にある通り旅をする。5月の長崎に始まり、直江津、神戸、京都。そして12月に再び長崎を訪ねる。それだけではない。自分も含め誰かの過去をたどり時間をも旅するかのようだ。

# 人生の残酷さ(p574)。野呂邦暢(サイト内)

『知的生産の技術』その後

  • 2021/12/30 06:30
  • カテゴリー:読み物

かくべき内容は、読書によって誘発された自分のひらめき着想であって、本の抜粋ではない。内容を見る必要があれば、その本をもう一どひらけばいいのだから。

ここのブログでやっていることを叱られている、そんな風に感じた。引用は、梅棹忠夫著『知的生産の技術』その後(p4)から。それは、著者編「私の知的生産の技術」(岩波新書、1988年)の最初に収められている。

その部分の小見出しは「挫折の諸類型」。著者が「知的生産の技術」(1969年)で提唱したカード・システムを導入しようとして挫折した人には、いくつかの共通点があった。本や新聞からの書き抜きを蓄積しようとする、目的や意図もなしに無暗に収集する、書いたカードを分類しようとする。

蓄積することによって何かが判る。分類するからこそ何かに気付く。社説のファイル一年分を整理しながら、そういうこともあるのではと、あらためて、思うのだけれど、どうだろうか。

知的生産の技術(サイト内)

野球引込線

  • 2021/12/27 06:31
  • カテゴリー:読み物

きみの不安や、罠にかかったような気持がよくわかるし、きみの夢も理解できる、ぼくだってぼくなりの夢を持っていたんだから、といってやりたい衝動に駆られる。だが世界の仕組みはあまり知りすぎないほうが良い。

W.P.キンセラ著短篇集「野球引込線」(文芸春秋、1992年)の表題作から(p73)。読みたい本リストの底の方にあった。2年前に読んだ、池井戸潤著「シャイロックの子供たち」の中で引用されていたようなのだが、どういうことだったか忘れてしまった。

スタンとジャックは学校で同じ野球チームにいた友達どうし。36歳になった今でも二人は夢に囚われている。スタンは3Aリーグにいてメジャー入りを目指し足掻く。ジャックは、皆にばかにされながらも、昔存在したセミプロリーグのことを調べるために図書館に通う。いつまでも続けられない、もう潮時だ、と二人は思っている。そんな折、鉄道の操車場に、かつて球場まで繋がっていた引込線が残っていることを知り、二人はそこへ出掛けて行くのだった・・・。

シャイロックの子供たち(サイト内)

空飛ぶタイヤ

  • 2021/12/23 06:37
  • カテゴリー:読み物

どんな組織だって、誰かがいわなきゃ動かない。みんなが、”自分ひとり頑張ったところで”って諦めてるから動かないだけ

池井戸潤著「空飛ぶタイヤ」(実業之日本社文庫、2016年)から(p129)。

妻にそう指摘されて彼は動く。社長へレターを書き組織の自浄作用を促そうとする。が、機能しない。それどころか自身も悪党に手懐けられてしまう。トップまで腐っているのだ。こうなると、できることは限られる。一番に思い付くのは、彼がやったように、警察へ告発することだ。

ちょっと長いけれど(文庫で8百ページ超)、ケーススタディにいいかもしれない。大企業病に罹って内向きの仕事ばかりしている人たちにとって、何のために仕事をするのか見直すのに好適な題材になるように思う。

池井戸潤文庫100冊(いずれもサイト内)

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