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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

悲しみは憶良に聞け

  • 2025/01/08 05:54
  • カテゴリー:読み物

歌ではないし、詩でもない。漢詩ですらない。全五段落からなる、長い散文です。それゆえ「国歌大観」の番号が振られておりませんが、八九六番と八九七番のあいだに載っています。

山上憶良が書いた漢文、いわゆる「沈痾自哀文」。万葉集でのその特異な位置付けが説明されている。中西進著「悲しみは憶良に聞け」(光文社、2009年)から(p76)。最寄り図書館で借りた。

その長い文章の中で、憶良はこんなことを書いている。74歳の老体で、長い間、病に伏せている。病の苦しみを背負い、命は尊く重いものということがつくづく判った。けれど、その尊さをどう表現すればいいのだろうか。思いめぐらそうとしても、思い続けることができない。「何に由りてか之を慮らむ」と。

これまで憶良が書いたものを丁寧に読んだことはなかった。この歳になって、じっくり向き合ってもいいかなと思う。この「沈痾自哀文」や「貧窮問答歌」あたりから始めるのが良いだろうか。

山上憶良(サイト内)。寺川真知夫著「沈痾自哀文と患文」|奈良県立万葉文化館

朕、惟フニ

  • 2025/01/07 05:48
  • カテゴリー:読み物

朕、惟フニ屁ヲ垂レテ、汝、臣民、臭カロウ、国家ノタメナラ我慢セヨ

源氏物語を読んだ一条天皇が、「これは朕への当て付けか」などと人間臭いことを言うのを聞いて、このパロディを思い出した。

この教育勅語のパロディは、月刊誌「面白半分」で見た、と思う。中・高の頃、ナンセンスを教えてくれたのは、ほかには考え難い。当時、熱心にページを繰ったものだ。

「海行かば」の替え歌も同じ頃に知った。おそらく「面白半分」で。「海にカバ、水漬くカバね、山にカバ、草むすカバね、おお、君の屁にこそ死なめ」。これにも屁が登場。

元の詞は大伴家持の長歌(万葉集、巻18-4094)からの抜粋であることを(再)認識したのは随分あとになってからのことだった。

光る君へ海軍めしたき物語(いずれもサイト内)。鵜野祐介著「アジア太平洋戦争中の日本の子どもの替え唄-笠木透の替え唄研究」前編後編巻18-4094|万葉百科 奈良県立万葉文化館

戦略は歴史から学べ

  • 2024/12/04 06:06
  • カテゴリー:読み物

「消費者のすべての購買行動の入口を支配する」。これはスマートフォン業界や現在のロボット産業では、ごく当たり前に想定されている目標なのです。

その領域を支配しようとする者が考えていることは凄まじい。鈴木博毅著「戦略は歴史から学べ-3000年が教える勝者の絶対ルール」(日経BP、2022年)から(p307)。

突飛な目標を持つ側には、常識に捉われる側にはない戦略眼がある。彼らはその突飛な目標ゆえに、より多くの情報を知りたがり、変化に反応し、敵の弱点を執念深く探し、分析レベルと幅が他者には想像できない領域に達する。

三田図書館(港区)で読んだ。昔よくお世話になったこの図書館が新装なったことは噂に聞いていた。この度の上京に際して訪ねてみた、少し時間をつぶす必要もあったので。

東京、24年11月(サイト内)。「戦略とは本来、未来を見つめるための道具」

天皇陵の謎

  • 2024/11/27 06:05
  • カテゴリー:読み物

一国の歴史に光と影の部分が背中合わせに存在するのは、当たり前のことである。歴史を眺める場合に最も慎むべきは、現在があらゆる面で至上の時代という慢心である。

幕末や明治の時代に色々あったろうけれど、それを「揶揄する気にはなれない」と。矢澤高太郎著「天皇陵の謎」(文春新書、2011年)から(p50)。

お話は、古い時代の天皇のお墓のこと。

初代の神武やそれに続く「欠史八代」は、神話で語られる架空の天皇であり、その「存在は完全に否定されている」。が、彼らの墓は、「新造、改造、変造」されて、ここですよと定められている。陵墓研究者の中には「捏造」の用語を用いる人もいる。

時の為政者にとって、国の始祖の存在は絶対的なもの。その存在なくして自らの歴史を語ることができない。彼のお墓はここですとせずにはいられない。その考えは、既に、壬申の乱の頃にはあった。

天皇親政による近代国家の建設を進めた明治政府もその考え方を引き継いだ。西洋列強と伍して戦う、我々は怪しい者ではない。正統な歴史を持っている。そう胸を張るには、その証拠を何としても用意し整えなければならない。始祖たちの墓は、明治のリーダーたちの苦闘の跡なのだ。と。

失われた兵士たち(サイト内)。壬申の乱 672年、古墳時代 3~6世紀

ドイツの新右翼

  • 2024/11/07 06:06
  • カテゴリー:読み物

AfDに投票し、Pegida(ペギーダ)やアイデンティティ運動に参加するような市民であっても、自分たちがどのような思想的系譜に立っているかまで把握していることは少ないはずである。「八紘一宇」を称賛した国会議員や、それに喝采した支持者たちが、必ずしも戦前の日蓮主義とアジア主義の展開を理解しているわけでないのと同じと考えればよい。

AfDの位置付けを説明するのに、八紘一宇を持ち出す。その喩えの方が難解で、かえって話は判り難くなっている。時々そういうのを目にする。

引用は、フォルカー・ヴァイス著「ドイツの新右翼」長谷川晴生訳(新泉社、2019年)に所収の訳者著「もう一つのドイツ-保守革命から新左翼へ」から(p432)。

欧州で極右勢力の台頭が続く。第二次大戦後、ナチスとの決別を誓ったはずのドイツにもその波が押し寄せている。2017年、ドイツ連邦議会選挙において、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が得票率5%を突破して議席を確保した。今年9月には、東部テューリンゲンの州議会選で、AfDが3割超の票を得て第1党になった。

急進右派は突然現れたわけではない。彼らは、モーラー(Armin Mohler、1920-2003)が唱えた「保守革命」の後継者と自らを位置付け、シュミット(Carl Schmitt、1888-1985)が構想した秩序を目指し政策立案を進める。この二人こそ、ドイツにおける「新右翼の理論的支柱」である。

世界が「きしむ」音が聞こえる。米国の次期大統領にトランプ氏が返り咲き、その音は益々大きくなって行くのだろうか。 

独ポピュリスト政党躍進(サイト内)。ふたつの敗戦国 ドイツ さまよえる人々▽映像の世紀バタフライエフェクト(NHK総合、10/28 22時)、Erika Steinbach(1943-)、米大統領にトランプ氏 分断の深まりを憂慮する(11/7)

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