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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

かめれおん日記

  • 2024/06/07 05:47
  • カテゴリー:読み物

落胆しないために初めから欲望を持たず、成功しないであろうとの予見から、てんで努力をしようとせず、辱めを受けたり気まずい思いをしたくないために人中へ出まいとし、自分が頼まれた場合の困惑を誇大して類推しては、自分から他人にものを依頼することが全然できなくなってしまった。

ちくま日本文学全集「中島敦」(筑摩書房、1992年)に所収の「かめれおん日記」(昭和十七年十一月)から(p339)。

失敗しても自尊心が傷つかないように事前に失敗の種子を蒔いておく。これを、ビジネス書的なジャーゴンで、セルフ・ハンディキャッピングと言う。

Re: 愛読書十選「権力」を握る人の法則(いずれもサイト内)

敗戦国の艦船はどうなる

  • 2024/06/05 06:05
  • カテゴリー:読み物

第一次世界大戦と違うのは、敗戦国には戦勝国に引き渡せる大型海上戦艦がほとんどなかったことだ。

第二次世界大戦、終わってみると、日本やドイツの主要戦艦のほとんどは撃沈されてしまっていた。戦後、戦勝国が利用できたのは、日本の戦艦長門と巡洋艦酒匂(さかわ)、そしてドイツの巡洋艦プリンツ・オイゲンの3隻だった。3隻は、1946年、ビキニ環礁で、核実験の標的艦にされた。

第6章「20~21世紀の難破船」では二つの大戦で沈んだ船の物語に多くのページが割かれている。戦前の1912年に沈没したタイタニック号もこの章に登場する。A・G・ジェイミソン著「沈没船からみる世界の歴史」(原書房、2023年)。上の引用は、p282から。

第一次世界大戦の場合、敗戦国、特にドイツの艦船はどうなったのだろうか。戦後ドイツには、戦艦16隻など74隻もの艦船が残っていた。ごっそり戦勝国へ引き渡されイギリスの海軍基地に抑留される。のだが、独海軍の提督は自身の艦隊を自沈させる挙に出る。戦勝国に分配されることをおそれたのだった。イギリスは、怒りを表明したものの、実は「この最新のドイツ戦艦が他国の艦隊に加わらなかったことに安堵もしていた」(p254)。

色々な思惑がある。

沈没船からみる世界の歴史エヴァーギヴン号(いずれもサイト内)。長門 (戦艦)酒匂 (軽巡洋艦)プリンツ・オイゲン (重巡洋艦)|Wikipedia

エヴァーギヴン号

  • 2024/05/31 05:58
  • カテゴリー:読み物

2021年7月、秘密の和解協定が成立したあと、解放されている。この事故全体の費用はまだ完全な評価はできていないが、保険会社が支払う保険金に関する限り、史上最も高額な海難事故のひとつになるだろう。

巨大コンテナ船、エヴァーギヴン号は、スエズ運河を航行中に強風と砂嵐に見舞われ、土手に斜めに乗り上げる形で運河を完全に封鎖してしまった。引用は、アラン・G・ジェイミソン著「沈没船からみる世界の歴史」(原書房、2023年)から(p298)

海運の大動脈を通せん坊してしまったのだ、そりゃ莫大な補償金が要求される。賠償条件が合意に達するまでの3か月ほど、船と積み荷はエジプト政府に差し押さえられていた。

このコンテナ船の所有者は、Wikipediaには、愛媛県の正栄汽船とある。そうそう今治造船の子会社だ。2021年3月の事故当時、矢面に立たされていたことを覚えている。

しかし、この船、「所有国は日本、船舶登録はパナマ、台湾の船会社エヴァーグリーン社にチャーターされ、日常的な管理はドイツの企業が担っていた」とか(p297)。

事故の責任は、果たして、所有者の正栄汽船一社だけが負ったのだろうか。その「秘密の和解協定」がどういう内容だったのか、ちょっと興味がある。

沈没船からみる世界の歴史(サイト内)。エヴァーギヴン|Wikipedia

賃金の日本史

  • 2024/05/30 05:57
  • カテゴリー:読み物

核家族世帯で夫の収入で専業主婦の妻と子供を養うという生計が、一部のサラリーマン世帯では可能であった二十世紀のある時期-具体的にいえば、その全盛期であった戦後の高度経済成長期-は、長期的にみればまったくのイレギュラーなものであったとみるのが自然なのかもしれない。

高島正憲著「賃金の日本史」(吉川弘文館、2023年)から(p247)。新着本コーナーにあるのを借りて来た。県立図書館。

裏表紙にこう書かれている。「奈良時代の日本最古の賃金記録から、明治時代の職人の収入まで-。史料を博捜し、昔の人びとの賃金の高さや生活水準に迫る分析手法を丹念に解説する。一五〇〇年にわたる日本の賃金史を、数字とデータで読み解く」。

データの性質や、推計や分析の手順や結果が「くどい」ほどに説明される。この学問領域では必須の要件のようだ。「数量経済史」と呼ぶのだそうだ。

最低賃金アップ、23年度(サイト内)

沈没船からみる世界の歴史

  • 2024/05/27 06:03
  • カテゴリー:読み物

この機械の技術的な知識は古代のある時点で失われてしまう。後に同じような技術を使った機械が登場するのはビザンツ帝国とイスラム世界においてだが、アンティキテラ島の機械ほどの複雑な構造が再び世界に登場するのは、西暦14世紀になって機械式の天文時計が発達してからのことである。

古い沈没船が、ギリシャ本土の南端とクレタ島の間に位置するアンティキテラ島沖で発見された。この船の遺物に「青銅の塊のなかに変則レバーと思しきものが見つかった」。これがのちに「アンティキテラ島の機械」と呼ばれることになる。引用は、アラン・G・ジェイミソン著「沈没船からみる世界の歴史」(原書房、2023年)から(p47)。

県立図書館の新着コーナーにあるのを見かけた。そのタイトルを見て、アンティキテラ島沖の沈没船のことがきっと出ているだろうと思って借りて来た。

「アンティキテラ島の機械」を載せた船は紀元前60年頃に沈没した。残念ながら、その機械に関連する技術、知識は失われてしまい、同じような装置が次に出現するまでに千年を超える月日を要した。それほどの特別性を持つ機械だった。制作者はアルキメデスの可能性があると何かの本で読んだことがある。

ふと、山上憶良の偉大さを思った。憶良は万葉集の中で貧富の差について語っている。これが、わが国の文学でそのテーマを取り扱った最初だと言われる。8世紀のことだ。次に貧富の差を書いたのは江戸時代の井原西鶴。しかし憶良ほどの真剣な議論となると近代まで待たねばならなかった。8世紀から19世紀まで、ここにも千年の空白があった。

アンティキティラ島の機械|Wikipedia、山上憶良|Wikipedia

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