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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

風景を見る犬

  • 2020/10/21 06:47
  • カテゴリー:読み物

あたしはビールを飲みましょうね。

ウチナンチュが頻繁に口にする、何々しましょうね、この表現が本書にもあちこちに登場する。舞台は那覇市の栄町。樋口有介著「風景を見る犬」(中公文庫、16年)から(p9)。

何々しましょうね、を初めて聞いた時、どういう意味なのか判らなかった。一緒にしましょうと誘われているのか、それとも、婉曲な命令なのか、どっちかだろうか、けれどニュアンスはだいぶ違う。実際は、そのどちらでもない。一人称の意志を表している。何々します、なのだ。

# 売春婦をよそおった中国の女スパイ(p80)、政治や基地や利権の問題に関わらなければ、ぼんやり暮らせる(p226)、偶然も必然もすべては視点の問題(p308)

台児荘

  • 2020/10/19 06:34
  • カテゴリー:読み物

まったくおかしな状況だ。えらいひとの作戦はわからんが、せっかく、占領したと思うと、すぐそこを捨てて帰ったり、右を攻めよったと思うと、左へ攻撃を転じたり、なにがなんだか、わからん状況になってきた。

「えらいひと」の一声で、下々は右往左往させられる。「棟田博兵隊小説文庫」第3巻(光人社、80年)の「台児荘-続々分隊長の手記」(初出41年)から(p11)。著者の分隊が属した第10歩兵連隊は編成地が岡山だった。「こらこら、おおきいのばかり取ったらおえんぞ」「満月じゃ。まん丸じゃ。きょうは旧は何日じゃろなあ」、と岡山の言葉遣いがあちこちに出て来る。

私たち戦中派は「台児荘」という言葉をきくだけで、大変だったなア、という感慨が、すぐに、深く、胸にくる。と、伊藤桂一は本書の解説を始めている。そう言えば、久生十蘭著「生霊」で語られる「関原準尉」は、「台治荘の滕県城で戦死」したのだった。

拝啓天皇陛下様生霊(いずれもサイト内)。崔顥「黄鶴楼」(p89)、李白「登金陵鳳凰臺」。台児荘の戦い|Wikipedia。

廃墟となった戦国名城

  • 2020/10/17 06:56
  • カテゴリー:読み物

澤宮優著「廃墟となった戦国名城」(河出書房新社、10年)を読んだ。三か所に付箋を貼った。

  • それまで寺社にしか使われなかった「瓦を葺き、石垣を積み、高い塔を建てる技術」を、信長は初めて城の建築に活かした(p26)。その城が安土城だった。
  • 肥前名護屋城の石垣をわざわざ壊して、それを、朝鮮からの使節に見せた。V字状に派手に壊しておいた。「石垣は隅を壊せば、作り直せませんが、隅と隅の間をV字に壊す場合は後に作り直せる」(p94)。
  • 彦根は県庁所在地にならなかった。「日本全国で三十五万石の城下町が県庁にならなかった例はほかに」ない。井伊直弼の彦根藩に対する、明治政府のアンチ井伊の態度が現れている(p192)。

# 澤宮優「戦国廃城紀行-敗者の城を探る」(河出書房新社、10年)

宇垣一成

  • 2020/10/15 06:33
  • カテゴリー:読み物

人は誰しもみな、多かれ少なかれ毀誉褒貶のなかに生きている

棟田博著「宇垣一成-悲運の将軍」(光人社、79年)、あとがき(p224)から。本書は評伝ではあるけれど、あたかもフィクションそれも大層良質なフィクション、例えば J・ヒギンズの「鷲は舞い降りた」、のようだ、読み終えてそんなことを思った。

宇垣一成の評価は定まらない。ひとえに毀誉褒貶の程度が「超特級」であったからと著者は書く。反宇垣派が、槍玉に挙げるのは、宇垣軍縮(25年)であり、三月事件(31年)である。しかし、その軍縮は、実質ほとんど縮小せず、「軍を近代化へ導いた」とその貢献が評価されもする。また三月事件は、それがクーデターを企図したものでありながら、「未遂に終わったのを惜しむ声が少なくなかった」。宇垣という大器が総理になれなかったことに、「死児の齢を数えるに似た悔恨」を抱く人物もあった、その後の悲惨な戦争を避け得たのではないかと。

拝啓天皇陛下様(サイト内)。「温故知新」の掛軸、「岡山大学建設用地」の木札

ナンバーワン企業の法則

  • 2020/10/12 06:33
  • カテゴリー:読み物

世の中には、もっぱら最低のコスト(したがって、最低の価格)で信頼できる製品やサービスを提供してもらうことを求める顧客もいれば、製品そのものの性能がすぐれていることを望む顧客もいる。また、人間らしいケアやアドバイスを強く要望する顧客もいる。

マイケル・トレーシーら著「ナンバーワン企業の法則」(日経ビジネス人文庫、03年、原著95年刊)、その「文庫化に寄せて」から(p335)。神戸大の金井壽宏教授によって書かれた、この6ページほどの小文が簡潔で要領を得たまとめになっている。それは「複雑な現象を知りたいと思ったら、まず納得のいく分類体系にふれるのがいい」と始まり、上で引用した、トレーシーらによる顧客の三類型へと繋がって行く。

医薬中間体という商材がある。これは、やっかいなことに、三類型各々が求める価値すべてを満たす必要があると、ずっと思って来た。コスト、性能(品質)、そして顧客との親密性。この本を読んだ08年以降、一つの価値を優先させることに切り替えた。それが見事に奏功しビジネスは、よりスムーズに展開するようになった。

先輩とのメールのやり取りの中でこの本のことに触れた。また読んでみようと図書館のDBに照会したところ、最寄り市立には蔵書されておらず県立にあった。

フレームワーク十選池に魚はいるのか(いずれもサイト内)

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