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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

けものみち

  • 2022/05/04 06:01
  • カテゴリー:読み物

ものになりそうなものと、そうでもないものとは、なんとなくカンでわかる。あたかも水面に垂れた糸の先に十分な手ごたえが来そうな、あの釣り人の心理にも似て

松本清張全集15「けものみち」(文藝春秋、1972年)から(p263)。初出1962年。

TVドラマ(NHK、1982年)の再放送を少し目にしたのがきっかけで原作を読んでみようと思った。そのドラマには「おしん」の姑に扮した高森和子さんがちらっと出ていた。「おしん」は1983年なのでこのドラマの翌年だ。

松本清張(サイト内)。土曜ドラマ「松本清張シリーズ けものみち」(1)~(3)、デジタルリマスター版(NHK総合、4/9 0:25-3:55)、初回放送1982年1月、【脚本】ジェームス三木【出演】名取裕子、山崎努、伊東四朗、加賀まりこ、西村晃、永井智雄ほか

かけおちる

  • 2022/05/02 06:12
  • カテゴリー:読み物

自分はなにも見えていない。己の目で見ている気になっているが、実は見ているつもりで終わっているのだ。あるいは見たいものだけを見て、見たくないものには目を向けようとしない。

小藩の執政、阿部重秀は、60歳を前にして、そのことに気付く。家族が一度ならず出奔した、その本当の理由を今知ろうとしている。引用は、青山文平著「かけおちる」(文春文庫、2015年)から(p235)

重秀の娘婿、長英は留守居役助(すけ)として江戸に詰めている。仕事は「興産掛」。現代風に言うと事業開発担当になるだろうか。建議(テーマ提案)の材料をぽつぽつ国元へ送るのだが、どれ一つ陽の目を見ることはない。「力足らずが骨身に沁みる」。他人事とは思えない。身につまされる。

事業の開発には時間がかかる。成功した時に提案者の自分がそこにいるとは限らない。あなたのテーマが事業化されました、と転職先で連絡を受けたこともあった。長英の場合も、そこにいなかった。提案したサケ事業が上手く行き始めていることを知らずに命を絶ってしまうのだ。墓前で誰かが報告するのを、あの世で聞くのだろうか。

文庫100冊(サイト内)

明治天皇という人

  • 2022/04/29 06:29
  • カテゴリー:読み物

明治天皇のもとでおこなわれた日清・日露の戦いは、上から下まで、「文明」の戦争をたたかうという意識が強かった。

近代西洋がつくったルールに則り、戦いを進め、戦後は賠償金や領土割譲を交渉する。松本健一著「明治天皇という人」(毎日新聞社、2010年)、見出し「山縣有朋の国際法意識」の部分から(p384)。

台湾出兵問題(明治7年、1874年)では、大久保利通が国際公法を重要視したことが述べられる(p178)。引用にある日露は、明治37(1904)年から翌年にかけての戦いだった。明治の日本は、世界の強国=文明国を目指し、国際ルールの遵守を徹底していた。ところが大正になるとその遵法精神があやしくなる。

大隈重信が、第二次内閣を組織した折、対支二十一か条要求(大正4年、1915年)を強行する。その辺りをスタート点として、日本は、増長して行く。その無茶な要求から十数年を経て、満州事変(昭和6年、1931年)での一方的な国際法違反に到る。

明治天皇は、大隈のことを嫌っていたという。「策士あるいは策謀を弄す政略家」「金づかいの荒い浪費家」という印象をもっていたようだ(p329)。これは、謙虚と質素を旨とした西郷隆盛が大隈を嫌ったことが影響している。その西郷は、大隈のことを、小人であり有徳の人ではないと評した(p332)。重職を任せると必ず国家の危機をもたらす、上位に置いてはならぬと。その大隈が首相になった時期があったのだ。

大正時代のことで興味深い記述がある。明治憲法に規定されている統治権の欠陥に気付いた原敬が、将来の天皇が「統帥権云々を振り回したりしないようにとの配慮から」、皇太子の英国外遊(大正10年)を計画した(p255)。国の統治を先進国で実見してもらう。その原は、元老山縣有朋のお気に入りだった(p414)。山縣の「人事や戦略にはあまり誤りがなかった」(p316)。

松本健一乃木伝説の思想(いずれもサイト内)

ユダヤ人はなぜ

  • 2022/04/27 06:25
  • カテゴリー:読み物

ユダヤ教に正統性があれば、キリスト教は無効であった。この点こそ、キリスト教徒のユダヤ人への憎悪、それも歴史上もっとも長く受け継がれてきたユダヤ人憎悪の根源である。

なるほど、宗教の争いなんだな。デニス・プレガー、ジョージェフ・テルシュキン著「ユダヤ人はなぜ迫害されたか」松宮克昌訳(ミルトス、1999年)、第8章「キリスト教の反ユダヤ主義」から(p151)。原題は、Why the Jews? - The Reason for Antisemitism

四世紀、ローマ帝国が多神教信仰に代わって一神教を公認。この時、二つの宗教の争いが鮮明になる。帝国が国教に選定したのは、ユダヤ教ではなく、ユダヤ教から派生したキリスト教だった。そっちの方が、ローマの人々にとって「はるかに受け入れやすかった」。ユダヤ人は、ユダヤ教こそ唯一絶対の神を信仰する宗教だ、とその正統性を主張しキリスト教会に挑戦する。教会はユダヤ排除に手段を尽くす。古代からあったユダヤ憎しの感情がより一層認識されるようになった。

20世紀の「ホロコーストはキリスト教を信じるヨーロッパで起きた。」「何世紀も昔からのキリスト教徒による根拠のない反ユダヤの中傷をナチが利用した」(p174)ことを本書は指摘している。

ユダヤ人が憎まれるのは、「ユダヤ人がユダヤ人らしいからである」とも言われる。それはいったい何なのか。大きく分けて四つある(p18)、1) 強固に伝承されて来たユダヤの教え、神(Yahweh)、律法(Torah)、そして国(Israel)、2) 祈りの言葉「神の掟のもとにこの世を完成させんために」、3) 選民意識、4) 質の高い生活。

緊張感持ち生きる(サイト内)。ゼレンスキー大統領が批判する「兄弟」国イスラエルの事情(4/12)

世界「新」経済戦争

  • 2022/04/25 06:30
  • カテゴリー:読み物

(1980年代、日本車の実力やCPの高さは誰の目にも明らかになっていたが)それでもドイツ人は、その後も長い間、日本車の実力を認めることはなかった。おそらく今でも認めていないのではないだろうか。

川口マーン惠美著、世界「新」経済戦争(KADOKAWA、2020年)から(p68)。副題は、なぜ自動車の覇権争いを知れば未来がわかるのか。

ドイツに駐在している頃に感じた。ドイツ人はこと自動車に関しては過剰なほどのプライドを持っている。ドイツが自動車発祥の国だからなのだろう、著者が言うように「ほとんど選民的意識」(p9)なのだ。こちらが日本人と判るや、何かと自動車の話題を振って来る。デリケートな領域に足を突っ込まないように、気のない返事をするようにしていたものだ。

最早ドイツだ日本だと言っている場合じゃない。世界市場は、テスラや中国勢に席巻されてしまいそうだ。既存の自動車メーカーや、それを主たる産業として来た国は、さあて、どんな手を打とうとしているのだろうか。

そういえば、今年のサッカーW杯、日本とドイツは同じE組になった。こちらも自動車ビジネスのように熱戦が繰り広げられるだろうか。

英、EU離脱1年住んでみたヨーロッパ~(サイト内)。EV世界販売460万台、HV超え ホンダは5兆円投資(nikkei.com、4/12 18:00)

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