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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

Re: 思い出トランプ

  • 2022/01/28 06:31
  • カテゴリー:読み物

まさかとやっぱり。ふたつの実感が、赤と青のねじりん棒の床屋の看板のように、頭のなかでぐるぐる廻っている。

電話をかけて来たのは、どうやら夫の浮気の相手らしい。引用は、向田邦子著「思い出トランプ」の「花の名前」から(p187)。生誕80年を記念して出版された、向田邦子全集〈新版〉、その第一巻「小説一」(文藝春秋、2009年)。

ラジオの番組表にあるのを見て、また読んでみようと思った。もう15年は経つだろうか。読後の印象がだいぶ違った。13の短篇、どれもが毒気が強い。その味わいは時を経て変化するようだ。今回、特にいいなあと思ったのは、この「花の名前」と「三枚肉」。

# 朗読特集「思い出トランプ」【作】向田邦子【朗読】青木裕子(NHKラジオ第2)、大晦日から四夜連続で放送

大延長

  • 2022/01/26 06:22
  • カテゴリー:読み物

卑屈と謙虚は違う。謙虚さを忘れたら人は駄目になるが、卑屈になったらもっと駄目になる

堂場瞬一著「大延長」(実業之日本社、2007年)から(p41)。舞台は、高校野球夏の甲子園。決勝戦が15回で決着がつかず翌日再試合となる。それもまた延長戦にもつれ込む。

投手は一年前に右膝の半月板を手術して再びマウンドに戻って来た。決戦の土壇場になってその古傷が彼を苦しめる。初場所の照ノ富士も似たような状況にあったようだ。12日目に土俵下に転落し古傷を痛めてしまう。左の膝だ。「今後の事を考えると、とても相撲が取れる状態ではなかった」と北の富士さんは記している。投手はその夏の怪我で選手生命に幕を閉じた。横綱はどうだろう。何事も無かったようにまた土俵に戻って来るだろうか。

チーム(サイト内)。相撲の神様は時に意地の悪いことをする 照ノ富士は膝をしっかり治して(1/24)|北の富士コラム

果断

  • 2022/01/24 06:33
  • カテゴリー:読み物

次長がここにいれば、報告の二度手間を防ぐことができる。情報をすべて署長室に集約するんだ

次長(副署長)ばかりか、刑事課長ら署の幹部も詰めさせて、署長室を即席の指揮本部にしてしまう。時間や手間を省くとともに、的確な判断をタイムリーに下すために。引用は、今野敏著「果断」(新潮文庫、2010年)から(p21)。隠蔽捜査シリーズ第2作。主人公の竜崎は左遷されて今は所轄の署長。

「彼らは、ペンを手にした戦士などではない。商業主義に首までどっぷり浸かっている」。前作に続いて、主人公は、新聞やテレビを酷評する(p99)。メディアは「上に行けば行くほど、他社を抜くことだけを考えている。つまり新聞を売るためであり、視聴率を稼ぐためだ。言論の自由など彼らにとってはお題目に過ぎない。要するに抜いた抜かれたを他社と競っているに過ぎない」。

今野敏(サイト内)

チーム

  • 2022/01/22 06:27
  • カテゴリー:読み物

単純な話、速い選手を10人集めたら勝てるはずなのに、現実はそうならないあたりに駅伝の奥深さを感じます。

堂場瞬一著「チーム」(実業之日本社文庫、2010年)、付録の対談から(p436)。すすめられるままに読んだ。駅伝の話だったんだな、読むまでそのことは忘れていた。

脈絡なくこんな話を思い出した。パレトの法則(2:8の法則)を人材に当てはめると、100人いれば、20人が優秀で、80人がそうでもない、ということになる。では、その優秀な20人だけ選び出してチームを編成するとどうなるか。しばらくすると、やはり、比較的、優秀な4人とそうでもない16人に分かれて来る。誰かにそう聞いた。本当だろうか。

文庫100冊(サイト内)

冬の標

  • 2022/01/21 06:42
  • カテゴリー:読み物

あのまま絵の道をすすんでいたら、どうなっていただろうかと、十八年も経ってから思うのは馬鹿げているが、このまま何もはじめなければ次の十八年が繰り返されるだけであった。

嫁に行くことになり、あれほど好きだった絵を続けることを諦める。それから18年が経ち、主人公の明世は36歳になっていた。乙川優三郎著「冬の標」(中央公論新社、2002年)から(p58)。

著者の作品はいくつか読んだことがある。印象に残っているのは、例えば「かずら野」「向椿山」など。これからは、この「冬の標」を、まず思い浮かべることになるだろう。

36歳になった主人公は、柵(しがらみ)を振り払って、絵の道を行くことを決心する。突き詰めて考えた末の結論だった。彼女ほどの切実さはなかったけれど、私にも18年間の逡巡と36歳の決心があった。

私が就職した先は、ある化学メーカーだった。大学で専攻した化学の知識や技術を活かす無難な選択だったと思う。それは確固たる信念に基づいていなかったこともあって、これで良かったんだろうかという思いが時として頭をもたげた。18から20歳の頃に別の道を見ていた。大学を入り直すことさえ考えた。働き始めてからも、それが、いつも心のどこかに引っかかっていた。大した才能はないし意志も弱い、そっちの道はない、それは判っていたけれど、煮え切らなかった。ようやく吹っ切れて、別の化学メーカーに転職し新たなチャレンジを始めたのは結婚が契機となった。36歳だった。私の場合、36歳の決心は、切り替えではなく、迷いながら歩んできた道にどっぷり浸かり直すことだった。

あれから疾うに18年は過ぎた。さらに6年が経とうとしている。第二の転職などそこそこ波乱はあったけれど、やはり無難な選択、その域からは出なかった。主人公のその後の苦難を想像してみて、そんな風に思う。

円卓文庫100冊(いずれもサイト内)

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