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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

沈黙のパレード

  • 2019/11/25 21:26
  • カテゴリー:読み物

抑揚のない声で相槌を打った。演技ではなかった。あまりに感情の昂ぶりが大きいと、人間はそれを表に出せなくなるのだ

東野圭吾著「沈黙のパレード」(文藝春秋、18年)から(p354)。草薙が「オリエント急行の個室」(p142)を思い浮かべるシーンがある。この事件は、クリスティのあの密室殺人に似ていますよ、さあ、どんな事件だったか思い出して下さいね、と読者に対して促しているわけだ。極悪人、女児殺人、その母の自殺、司法の限界、復讐、そして、複数の容疑者、と類似点が相前後して示されて行く。一見関係なさそうな増村が、実は被害者の身内だと暴かれて、やはりそうかと思わせる。エンディングでは、湯川が「まるでエルキュール・ポアロだ」(p440)と言われもする。著者によるサービスがたっぷり詰まっているこの話は、ただし、皆さんが犯人でしたでは終わらない、最後の50ページほどで、あれよあれよと別の展開を見せる。

図書館に予約を入れたのは今年2月のこと。その時点で105人待ち。順番が回って来るのは半年後と予想したけれど結局9か月かかった。

# 「自らに才能がないことは、比較的早い段階で思い知った」(p59)。学生の科学実験、「どんな結果が出るかなんて、知らないほうがいい」(p270)。

遠い唇

  • 2019/11/24 07:32
  • カテゴリー:読み物

イソップのウサギも、《相手がカメの時くらい、せめて横になりたい》と思ったのではないか。周りから《ウサギ》は四六時中、走るものと決めつけられ、疲れ果てていたのではないか。

北村薫著「遠い唇」(KADOKAWA、16年)に収載の「ゴースト」から(p136)。人生に疲れ気味の主人公は、自分にかかって来た電話の主を取り違えてしまう。先方の苗字が、その時、頭を占めていた人と同じだったのだ。似たようなことを経験したことがある。学生時代、おれはオケの後輩と二人で一軒家をシェアしていた。ある日、留守の間におれ宛ての電話があったと後輩がメモ書きを残してくれていた。かけて来た人の名を見て、《あの人》からだ、と心に灯がともるような感覚があった。再度の電話は、その日の内にあった。出てみると、声が違う。《あの人》ではない。が、知っている声だ。急いで「記憶のページをめく」る。いつだったか高校時代の同級生から手紙が届いていた、それには結婚したとあった。そうか、彼女が嫁いだ先の苗字がそれだった。こちらは《あの人》と決め込んでいるからしばらくトンチンカンなやり取りをすることになってしまった。もう35年は経つだろうか、古いエピソードを思い出した。

# 「その後、唇は硬く結ばれた」(p15)、「合理的なはずの推理の材料」(p68)。北村薫著「八月の六日間」

震災列島

  • 2019/11/22 06:10
  • カテゴリー:読み物

日本全国を改造して、どの町も新幹線と高速道路と駅前ビルで小東京化するのが正義だと言い出した奴がいた(略)。金が絡む正義は信奉され易い。「正義を行う」と宣言して、役所は堂々と金権体質に身を浸すことができた。明らかに、あれから日本は大きく道を踏み外した。

石黒耀著「震災列島」(講談社、04年)から(p373)。これだけ災害の多い国なのに、なぜ十全な対策を施さないのか、国や地方行政は無駄に金を使い余計な物を作っている、原発など以ての外だ。そのことを思い知るためにこの本を読むのは良い。話の筋はもう一つか。

死都日本(サイト内)

古代文明と気候大変動

  • 2019/11/21 06:18
  • カテゴリー:読み物

粘土板に残された農耕民の暦から察するに、彼らは大災害をもたらす洪水や、川の水が低い年の兆候も見抜いていた。

紀元前5800年ごろのメソポタミア南部、農耕を営む人々が定住し始める。それから1千年のあいだに、共同体が成立する中で、古代メソポタミアの宗教が芽生えた。ブライアン・フェイガン著「古代文明と気候大変動-人類の運命を変えた二万年史」(河出文庫、08年)から(p208)。

「聖書」にはメソポタミア的なものが少なからず取り入れられていると聞いたことがある。例えば、天国の概念であり、捨て子の物語であり、そして、洪水伝説だ。人々の運命を左右する降雨や河川の水位は、古代の宗教において神々の所業と讃えられ、そして恐れられたのであろう。それが伝説となり、ユダヤ教など後の宗教が成立するまで長く語り継がれたということだろうか。

紀元前5千年紀 - Wikipedia

一茶

  • 2019/11/20 05:54
  • カテゴリー:読み物

一体に一茶は、瓦版の記事になるような出来事に、強く興味を惹かれるたちだった。火事があった、泥棒が入った、どこそこで心中があったという事件を聞きこむと、丹念に句帖の端に記した。のがさずに書いた。

いわゆるメモ魔だ。生涯に二万句を詠んだと言われる。そのアウトプットを支える膨大なインプットがあったことは想像に難くない。引用は、藤沢周平著「一茶」(文春文庫、81年)から(p177)。この評伝では全編に渡って一茶の句が引かれている。おれが知っているのは、唯一、目出度もちう位也おらが春(p293)のみだった。

三屋清左衛門残日録(サイト内)、小林一茶 - Wikipedia、夏目成美、鈴木道彦、浅間山の噴火(p37、1783年、天明噴火)、乳母が前もくぞう蟹のごとくなり(p73)

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