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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

極夜行

  • 2020/10/24 06:37
  • カテゴリー:読み物

月は太陽とちがって動きが複雑で、毎日同じ時刻に南中するわけではない。南中時刻は毎日、ほぼ一時間ずつうしろにずれていく。(略)月に支配された極夜世界は一日は二十四時間ではなく二十五時間で運行されている

角幡唯介著「極夜行」(文藝春秋、18年)から(p80)。登山家が書く紀行文ではなく、作家が書く自身の冒険譚なので、安心して文章を読み進めることができる。ただ、それが過ぎて、あざといと感じる箇所もある。著者自身、「まさにこのノンフィクションとは思えない展開」(p257)と書いているのは、予防線を張っていると読めないこともない。

随分前に読んだ、リチャード・M・コールマン著「午前3時に目がパッチリ-眠らない人と眠れない人」(日経サイエンス社、88年)で紹介されていた実験結果を思い出した。ヒトは、時間の手がかりがまったくない閉鎖空間にしばらく暮らすと、起きて活動して眠ってという生活を25時間サイクルで行うようになる。その理由をコールマンは記していなかったと記憶するが、上の引用部分にある月の運行に関係しているんじゃないだろうか。

漂流(サイト内)。材料としての漂流木(p159)、35歳から40歳という特別な時期(p183)。「睡眠と体内時計の謎に迫る」(1)▽カルチャーラジオ科学と人間(NHKラジオ第2、10/9 20:30-21:00)

虹の鳥

  • 2020/10/22 06:56
  • カテゴリー:読み物

ほんの一瞬の差で、何かが狂い始める。

目取真俊著「虹の鳥」(影書房、06年)から(p37)。最寄り図書館、郷土コーナーの本。夜更かしして一気に読んだ。

初出誌は、朝日新聞社の季刊小説誌「小説トリッパー」04年冬季号。同社とは縁があるようで、著者プロフィールに同社から刊行された別著二冊が紹介されている。にも拘らず、本書は同社からの発行ではない。朝日でさえ、本にすることを躊躇ったということか。そうだとしても何ら不思議ではない、それほどに衝撃的な内容だ。

影書房

風景を見る犬

  • 2020/10/21 06:47
  • カテゴリー:読み物

あたしはビールを飲みましょうね。

ウチナンチュが頻繁に口にする、何々しましょうね、この表現が本書にもあちこちに登場する。舞台は那覇市の栄町。樋口有介著「風景を見る犬」(中公文庫、16年)から(p9)。

何々しましょうね、を初めて聞いた時、どういう意味なのか判らなかった。一緒にしましょうと誘われているのか、それとも、婉曲な命令なのか、どっちかだろうか、けれどニュアンスはだいぶ違う。実際は、そのどちらでもない。一人称の意志を表している。何々します、なのだ。

# 売春婦をよそおった中国の女スパイ(p80)、政治や基地や利権の問題に関わらなければ、ぼんやり暮らせる(p226)、偶然も必然もすべては視点の問題(p308)

台児荘

  • 2020/10/19 06:34
  • カテゴリー:読み物

まったくおかしな状況だ。えらいひとの作戦はわからんが、せっかく、占領したと思うと、すぐそこを捨てて帰ったり、右を攻めよったと思うと、左へ攻撃を転じたり、なにがなんだか、わからん状況になってきた。

「えらいひと」の一声で、下々は右往左往させられる。「棟田博兵隊小説文庫」第3巻(光人社、80年)の「台児荘-続々分隊長の手記」(初出41年)から(p11)。著者の分隊が属した第10歩兵連隊は編成地が岡山だった。「こらこら、おおきいのばかり取ったらおえんぞ」「満月じゃ。まん丸じゃ。きょうは旧は何日じゃろなあ」、と岡山の言葉遣いがあちこちに出て来る。

私たち戦中派は「台児荘」という言葉をきくだけで、大変だったなア、という感慨が、すぐに、深く、胸にくる。と、伊藤桂一は本書の解説を始めている。そう言えば、久生十蘭著「生霊」で語られる「関原準尉」は、「台治荘の滕県城で戦死」したのだった。

拝啓天皇陛下様生霊(いずれもサイト内)。崔顥「黄鶴楼」(p89)、李白「登金陵鳳凰臺」。台児荘の戦い|Wikipedia。

廃墟となった戦国名城

  • 2020/10/17 06:56
  • カテゴリー:読み物

澤宮優著「廃墟となった戦国名城」(河出書房新社、10年)を読んだ。三か所に付箋を貼った。

  • それまで寺社にしか使われなかった「瓦を葺き、石垣を積み、高い塔を建てる技術」を、信長は初めて城の建築に活かした(p26)。その城が安土城だった。
  • 肥前名護屋城の石垣をわざわざ壊して、それを、朝鮮からの使節に見せた。V字状に派手に壊しておいた。「石垣は隅を壊せば、作り直せませんが、隅と隅の間をV字に壊す場合は後に作り直せる」(p94)。
  • 彦根は県庁所在地にならなかった。「日本全国で三十五万石の城下町が県庁にならなかった例はほかに」ない。井伊直弼の彦根藩に対する、明治政府のアンチ井伊の態度が現れている(p192)。

# 澤宮優「戦国廃城紀行-敗者の城を探る」(河出書房新社、10年)

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