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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

雪月花

  • 2024/09/10 06:00
  • カテゴリー:読み物

江戸の俳句の場合、劇的にしたい第三者が、別人の作を誰かにくっつける。そうやって《伝説》を作る。ポピュラーな作には、あることです。

北村薫著「雪月花-謎解き私小説」(新潮社、2020年)から(p133)。

「雪の日やあれも人の子樽拾い」も、作者がすり替えられてしまった。備中松山藩主・安藤信友の作ではない、これは専門家にはわかっていたことだった。著者の北村さんは、高木蒼梧「俳諧人名辞典」(巌南堂書店、1960年)を引用している。そこには、真の作者は水間沾徳、と明記されていると。「真蹟」もあるらしい。

水間沾徳は、芭蕉十哲の一人宝井其角亡き後の江戸俳壇の重鎮だったとか。その人の作とするより、雪の日に大名が籠から外の様子を眺めて詠んだとする方が趣がある、と、どこかの誰かが考えた。「表には出ない創作者である」と著者は書く。

雪の日やあれも人の子樽拾い(サイト内)。本にまつわる“謎”を追っていくと、本から本へ、思いがけない道すじがつながっていく――。

女ぎらい

  • 2024/09/04 05:59
  • カテゴリー:読み物

「こいつはね、オレのこれがよくて、離れられないんですよ」と言ってみたい-と思わない男はいないのじゃないだろうか。

これには笑った。上野千鶴子著「女ぎらい」(紀伊國屋書店、2010年)から(p14)。本書の副題は、ニッポンのミソジニー。ミソジニーは、女性嫌悪や女性蔑視と訳される。

「実際の女の快楽はこんなに便利(つまり男に好つごうな)ものではない」と続く。あまりにもこの種の幻想が流布されている。「吉行はそういう性幻想をまき散らかした戦犯のひとりである」。吉行とは吉行淳之介のこと。

吉行は、「やがて日本の文学史から忘れ去られるかもしれないマイナーな作家」と著者は断ずる。「かもしれない」は編集者が書き加えたのではないだろうか。

男と女(サイト内)。misogyny、佐野真一著「東電OL殺人事件」

男と女

  • 2024/09/02 05:52
  • カテゴリー:読み物

男女の秘事の奥の奥まで描く一冊。男の奔放、女の貞淑が信じられていた時代を懐かしむ

カバーの裏表紙側にそんな紹介文が掲載されている。いったい、いつの「時代」だ。吉行淳之介エッセイ・コレクション(2)「男と女」荻原魚雷編(ちくま文庫、2004年)。

吉行淳之介(1924-1994)の著作は、「砂の上の植物群」など何冊か読んだ。主に高校生の頃のこと。小説はどれもこれもさっぱりピンと来ない。ただしエッセイには面白いのがある。そんな風に思ったものだ。が、今回、図書館で目に留まったこのエッセイ集を読んではみたものの、かつて思った面白さに再会することはなかった。

「フェミニストの上野千鶴子」は、ミソジニー(女性嫌悪、女性蔑視)傾向の強い作家として吉行らを挙げ云々とWikipediaにある。吉行は、女好きとミソジニー、両面を持つ?!

作家が記した東京五輪(サイト内)。吉行淳之介|Wikipedia、水上勉「好色」、色道の一流三流

息子と狩猟に

  • 2024/08/31 05:58
  • カテゴリー:読み物

必然を積み重ね、偶然を待つ。無理を通そうとするとうまく行かない。つねに用意はして決定はしない。

服部文祥著「息子と狩猟に」(新潮社、2017年)から(p14)。

まったく関係のない二つの話が並行して進む。一方は、息子を連れて狩猟に出かけようと準備をする。もう一方は、詐欺グループ内の諍いに決着をつけようとしている。

二人の男は生まれも育ちも異なるのだけれど、「秘密は自分の口からバレる。しゃべらなければ絶対にわからない」(p41)、「秘密は自分の口から漏れんだよ」(p45)と、似たようなことを言ったりする。二人は吸い寄せられるように一つの山を目指す。そして、そこで事が起こる。

表題作のほかに、カラコルムの高峰での出来事を描いた短編「K2」が併載されている。これを読んでいるちょうどその頃、著名な登山家二人がK2で遭難したという記事を読んだ。

百年前の山を旅する(サイト内)。世界第2の高峰K2で山岳カメラマンの平出和也さんと中島健郎さん滑落、安否は不明(7/28)、K2西壁未踏ルート滑落の登山家2人 所属先が遭難死の見解「追悼」(8/22)

トムは真夜中の庭で

  • 2024/08/29 05:54
  • カテゴリー:読み物

キラキラかがやいている黒い目は、たしかにハティの目だった。身ぶりや、声の調子や、笑うときの表情などがおばあさんのなかにあることに気づきはじめた。

トムは、目の前のおばあさんが庭園で会ったあの小さな女の子だということを知る。思わず乗り出して、あなたはハティだと囁く。二人の再会に心が揺さぶられる。

引用は、フィリパ・ピアス著「トムは真夜中の庭で」(岩波書店、1975年第1刷、2000年新版第1刷)から(p330)。四十数年ぶりの再読。

昔持っていた本は背が緑色だったが新版のこの本は赤っぽい背。表紙の絵や本文中の挿絵はかわっていないように思う。遥かなる時間を越えてスケート靴を受け渡す場面にはどきどきしたし、二人がスケートする後ろ姿を眩しく眺めた。そうそうこの挿絵だ。印象深く覚えている。懐かしい。

別の時間の流れの中で誰かに出逢う。映画「ある日どこかで」(1980年)もそうだ。女性の方がおばあさんになってしまう点も似ている。トムは最後にハティを抱きしめる。が、映画の方ではリチャードにはそれは叶わない。

眠れない時に読む本ある日どこかで(いずれもサイト内)

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