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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

東京の戦争

  • 2021/02/20 07:22
  • カテゴリー:読み物

釘は使わず、板と板がきっちりと組み合わされ、やがて鉋がきれいにかけられた見事な柩が出来上がった。しかし、長年茶箪笥づくりをしてきた癖で、四隅が丸くけずられていて、優美ではあるものの奇妙な感じであった。

著者の父親が病死したのは終戦後すぐのこと。極端な物不足の折、柩が手に入らない。材料を用意して、近所の家具職人に柩づくりを頼んだのだった。吉村昭著「東京の戦争」(筑摩書房、2001年)から(p64)。不謹慎だとは思いつつも、角が丁寧に面取りされた棺桶を想像して笑ってしまった。

せんそうをよむ(サイト内)

石田検事の怪死

  • 2021/02/18 06:48
  • カテゴリー:読み物

石田検事を殺したのは徹頭徹尾「政治」であった。

松本清張著「昭和史発掘」の一篇「石田検事の怪死」(1964年)から。松本清張全集第32巻(文藝春秋、1973年)のp41。「直願事件及ビ陸軍機密費事件ニ対スル捜査ノ進展ヲ恐ルルノ余リ、石田検事ノ存在ヲ以テ政友会組閣ノ一大障害ナリトシ、遂ニ石田検事殺害ヲ決行シタルモノニアラザルカ」(p35)。政治家は、自身に捜査の手が伸びることを妨害しようと圧力をかけて「もみ消し」を図る。それが難しいとなると、担当の検事を消すことを目論むのだった。

下山事件(1949年)における類似性を著者は指摘している。

# 石田基(1883-1926)。河井案里被告、議員辞職麻雀辞任その真相は(いずれもサイト内)。松本清張久原房之助|Wikipedia

詩と反詩

  • 2021/02/15 06:33
  • カテゴリー:読み物

それは何処でもない私たちの国の、私たちの土地のおくに見えていたもので(略)、破滅的な農村恐慌と兇作の底に沈んでいる十五年戦争の入口の日本の村のイメージなのである。

著者にとっての戦争のイメージは「何よりこんな風」だった。「詩と反詩」黒田喜夫全詩集・全評論集(勁草書房、1968年)に収載の「わが内なる戦争と戦後」から(p124)。この小篇が発表されたのは、「週刊読書人」1967年8月号。

東北地方の貧しい村々は、凶作に次ぐ凶作で飢饉に喘いでいた。1929年、世界恐慌に伴い生糸と米の価格下落。1931年、満州事変。冷害により東北で大凶作。1933年、三陸津波で東北沿岸部に甚大な被害。1934年、記録的な大凶作。1935年、全国の小作争議件数がピークに。1937年、盧溝橋事件、日中戦争始まる。国が戦争に動き出した時、農民たちは、貧困から逃げるようにして、兵役に就き、また満蒙開拓に志願したのだった。

黒田喜夫昭和農業恐慌|Wikipedia、小作人組合数および小作争議件数

日本のいちばん長い日

  • 2021/02/12 06:57
  • カテゴリー:読み物

政治性ゼロの政治力を発揮できた源は何か、といえば、無私無我ということにつきる。"私"がないから事の軽重本末を見誤ることがなかったし、いまからでは想像もつかぬ狂気の時代に、たえず醒めた態度で悠々としていられたのである。

ポツダム宣言、原爆投下、迫る米ソの侵攻。緊迫する状況下、鈴木貫太郎首相は、二度まで聖断を仰ぎ、「強引に国の運命をみちびいてくるという奇妙な政治力」を発揮したのだった。半藤一利著「日本のいちばん長い日 決定版」(文春文庫、2006年)から(p88)。

鈴木貫太郎(1868-1948)|Wikipedia。国体(天皇御親政、皇室の御安泰)。作家の半藤一利さん死去 90歳(1/13)。「歴史探偵」半藤一利さん 亡くなる直前の自筆の原稿 出版社に(2/9)。「追悼半藤一利」保阪正康▽マイあさ!(NHKラジオ第1、2/11 7時台)、墨子、非攻、兼愛

遠い接近

  • 2021/02/10 06:55
  • カテゴリー:読み物

池に小石を投げこむ子どもは悪戯の面白さからだが、池の蛙には生命がけだ

松本清張全集第39巻(文藝春秋、1982年)に収載の「遠い接近」から(p135)。この長編、元は週刊朝日に連載された(1971/8/6-72/4/21)。こんな佳作があるんだな。著者の作品で過去に読んだのは、主に短編で、長編は「砂の器」や「渡された場面」など二三冊ほどか。最寄り図書館に全集が揃っているので少しずつ読んでみようと思う。

引用部分を読んで、デール・カーネギーが言ったというミミズの話が頭に浮かんだ。調べてみると、それは "How to Win Friends and Influence People"(1936年、邦訳:人を動かす)に登場する、"Personally I am very fond of strawberries and cream, but I have found that for some strange reason, fish prefer worms. So when I went fishing, I didn’t think about what I wanted. I thought about what they wanted.

せんそうをよむ(サイト内)。ハンドウをまわす、裸梢、頤使、羸痩、辻占、菰野。デール・カーネギー|Wikipedia

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