エントリー

カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

キャパへの追走

  • 2020/10/30 07:27
  • カテゴリー:読み物

かつて私が住んでいた部屋のある建物に向かって歩きかけて、危うく思い止まった。旅はなぞってはいけない。私が旅を重ねる中で、心に深く刻まれるようになった教訓が、それだったからだ。

著者は、キャパが撮った有名な写真の「現場」に行き、同じような構図で撮影する。「パリ解放」の代表的な一枚は、シャンゼリゼ通り、ジョルジュサンク駅の近く。そこは、また、著者が若い頃に滞在した街でもあった。沢木耕太郎著「キャパへの追走」(文藝春秋、15年)から(p218)。

登場する「現場」は40か所ほど。ヨーロッパが多い。その中で一か所だけ訪ねたことがある。マドリードのメトロGran Via駅(p90)。出張でスペインへ行くとマドリードから北へ向かうことが多かったので、その方面のAVEが発着するチャマルティン駅近くに宿泊した。いつだったか滞在中に、食事に誘われてマドリードの中心部へ出かけた夜があった。チャマルティンからメトロの一号線で南下。Gran Via駅で降りた。外に出てみると街がにぎやかなことにびっくりした。チャマルティンの宿の辺りは、マドリードと言っても、だいぶ街外れで、もの寂しい所。そこしか知らないので、スペインの首都全体がそんな感じだろうと思ってしまっていた。

キャパの十字架(サイト内)

極夜行

  • 2020/10/24 06:37
  • カテゴリー:読み物

月は太陽とちがって動きが複雑で、毎日同じ時刻に南中するわけではない。南中時刻は毎日、ほぼ一時間ずつうしろにずれていく。(略)月に支配された極夜世界は一日は二十四時間ではなく二十五時間で運行されている

角幡唯介著「極夜行」(文藝春秋、18年)から(p80)。登山家が書く紀行文ではなく、作家が書く自身の冒険譚なので、安心して文章を読み進めることができる。ただ、それが過ぎて、あざといと感じる箇所もある。著者自身、「まさにこのノンフィクションとは思えない展開」(p257)と書いているのは、予防線を張っていると読めないこともない。

随分前に読んだ、リチャード・M・コールマン著「午前3時に目がパッチリ-眠らない人と眠れない人」(日経サイエンス社、88年)で紹介されていた実験結果を思い出した。ヒトは、時間の手がかりがまったくない閉鎖空間にしばらく暮らすと、起きて活動して眠ってという生活を25時間サイクルで行うようになる。その理由をコールマンは記していなかったと記憶するが、上の引用部分にある月の運行に関係しているんじゃないだろうか。

漂流(サイト内)。材料としての漂流木(p159)、35歳から40歳という特別な時期(p183)。「睡眠と体内時計の謎に迫る」(1)▽カルチャーラジオ科学と人間(NHKラジオ第2、10/9 20:30-21:00)

虹の鳥

  • 2020/10/22 06:56
  • カテゴリー:読み物

ほんの一瞬の差で、何かが狂い始める。

目取真俊著「虹の鳥」(影書房、06年)から(p37)。最寄り図書館、郷土コーナーの本。夜更かしして一気に読んだ。

初出誌は、朝日新聞社の季刊小説誌「小説トリッパー」04年冬季号。同社とは縁があるようで、著者プロフィールに同社から刊行された別著二冊が紹介されている。にも拘らず、本書は同社からの発行ではない。朝日でさえ、本にすることを躊躇ったということか。そうだとしても何ら不思議ではない、それほどに衝撃的な内容だ。

影書房

風景を見る犬

  • 2020/10/21 06:47
  • カテゴリー:読み物

あたしはビールを飲みましょうね。

ウチナンチュが頻繁に口にする、何々しましょうね、この表現が本書にもあちこちに登場する。舞台は那覇市の栄町。樋口有介著「風景を見る犬」(中公文庫、16年)から(p9)。

何々しましょうね、を初めて聞いた時、どういう意味なのか判らなかった。一緒にしましょうと誘われているのか、それとも、婉曲な命令なのか、どっちかだろうか、けれどニュアンスはだいぶ違う。実際は、そのどちらでもない。一人称の意志を表している。何々します、なのだ。

# 売春婦をよそおった中国の女スパイ(p80)、政治や基地や利権の問題に関わらなければ、ぼんやり暮らせる(p226)、偶然も必然もすべては視点の問題(p308)

台児荘

  • 2020/10/19 06:34
  • カテゴリー:読み物

まったくおかしな状況だ。えらいひとの作戦はわからんが、せっかく、占領したと思うと、すぐそこを捨てて帰ったり、右を攻めよったと思うと、左へ攻撃を転じたり、なにがなんだか、わからん状況になってきた。

「えらいひと」の一声で、下々は右往左往させられる。「棟田博兵隊小説文庫」第3巻(光人社、80年)の「台児荘-続々分隊長の手記」(初出41年)から(p11)。著者の分隊が属した第10歩兵連隊は編成地が岡山だった。「こらこら、おおきいのばかり取ったらおえんぞ」「満月じゃ。まん丸じゃ。きょうは旧は何日じゃろなあ」、と岡山の言葉遣いがあちこちに出て来る。

私たち戦中派は「台児荘」という言葉をきくだけで、大変だったなア、という感慨が、すぐに、深く、胸にくる。と、伊藤桂一は本書の解説を始めている。そう言えば、久生十蘭著「生霊」で語られる「関原準尉」は、「台治荘の滕県城で戦死」したのだった。

拝啓天皇陛下様生霊(いずれもサイト内)。崔顥「黄鶴楼」(p89)、李白「登金陵鳳凰臺」。台児荘の戦い|Wikipedia。

ユーティリティ

« 2025年04月 »

- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

新着エントリー

クリス智子、あの人の本棚
2025/04/26 05:59
らくらじ2
2025/04/25 05:40
30-touchpad.conf、E200HA
2025/04/24 05:54
角幡唯介、あの人の本棚
2025/04/23 05:59
六厩越え
2025/04/22 05:57
あなたが誰かを殺した
2025/04/21 06:04
沖縄離島の有事避難案
2025/04/20 06:00
べらぼう(15)
2025/04/19 06:55
アイロンのある風景
2025/04/18 06:06
ボパール化学工場事故
2025/04/17 06:00

過去ログ

Feed