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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

卵をめぐる祖父の戦争

  • 2022/11/28 06:26
  • カテゴリー:読み物

暗闇の中でふたりの声に耳を傾けていると、風が窓をがたがた揺らし、ストーヴの中で最後の燃えさしが爆ぜた。この世で一番淋しい音はほかの男女が愛を交わす音だ。

薄い壁越しに聞こえて来る声に青年は悩まされる。まんじりともできない。デイヴィッド・ベニオフ著「卵をめぐる祖父の戦争」田口俊樹訳(早川書房、2010年)から(p107)。原題は、City of Thieves

戦争の愚かさを綴る反戦の書。一方で、音楽や、文学、恋について語られる。チェスも登場する、重要な場面で。この本のことは「プリズン・ブック・クラブ」で知った。受刑者たちが感想を述べ合うシーンがあったかどうか覚えていない。次に読む本、と紹介されたような気もする。その読書会はさぞ盛り上がったのではないだろうか。

プリズン・ブック・クラブ(サイト内)。ショパンとマーラー(p94)、エリーゼのために(p254)

港湾ニュース

  • 2022/11/24 06:25
  • カテゴリー:読み物

垂直に立ったまま回転しているコインは、どちらの側にも倒れる可能性がある

これからどうなるなんて誰にも判らない。何だって起こり得るのだ。引用は、E・アニー・プルー著「シッピング・ニュース」上岡伸雄訳(集英社文庫、2002年)から(p37)。単行本「港湾ニュース」(1996年刊)から改題。

全537頁、読み通すのに苦労した。主人公のR・G・クオイルに魅力を感じられず感情移入できないのが主な原因。脇役は悪くない。特に、デニスとビーティのバギット夫妻や、ウェイヴィ・プラウズには好感持てる。

この本のことは「目黒考二が選んだ60冊」で知った。目にしてもう20年は経つだろうか、おそらく「本の雑誌」の記事だったと思う。60冊の上位に、1) 虹滅記、2) 遠い崖、3) 蝉しぐれ、4) 港湾ニュース、5) 消えた弟、と並んでいた。

# 虹滅記消えた弟(いずれもサイト内)。Mockingburg, New York, USA(p23)、愛とは菓子の詰め合わせのようなもの(p501)

グリーン・マイル

  • 2022/11/21 06:30
  • カテゴリー:読み物

おかしなことでも奇妙なことでもないさ。理解できないことを経験すると、たいていの人間はそうするんだよ、ただ忘れてしまうんだ。筋の通らないことをいつまでも覚えていたって、役に立つことはないからね。

ブルータス・ハウエルが言う。確かにそうだ。理解しようと下手に解釈した結果、ある種ひずみを心の中に抱えてしまうことがある。引用は、スティーヴン・キング著「グリーン・マイル」白石朗訳(新潮社、2000年)から(p267)。上下2段組み427頁。

そのブルータスは25年ほど後に「魚のサンドイッチを食べながら、テレビでプロレス中継を見ていたとき」に心臓発作で死んだ。ハリー・ターウィルガーやディーン・スタントンも、もういない。ジョン・コーフィの死刑執行の準備が進められる様子を描写しつつ、並行して登場人物らのその後のことが簡潔に知らさせる、この最終章「闇の彼方へ」第10節がたいへん印象深い(p402-408)。誰もが皆死ぬ、その当たり前のことを説き、生きることの意味を問うているかのようだ。

恩師が教えてくれた「溌剌と生くる者にのみ深い眠りがある。生き切った者にだけ安らかな死がある」をふと思い出した。

文庫100冊(サイト内)。書くという行為が多くのドアを開ける(p109)、キャンプファイアそのものよりも燃えかすの方が好ましい(p146)、時はすべてを奪う(p409)

Re: 大地の子

  • 2022/11/17 06:25
  • カテゴリー:読み物

日本の経済復興の経緯は、日本へ行った時に、よく伺いましたよ、だが、それはアメリカという強力なバックアップがあったからで、

現金一括払いにするからと大幅な値切りに応じたのに、後になって延払いに切り替えて欲しいと切望され交渉することに。引用は、その際に中国側の話の中に出た一節。山崎豊子全集20「大地の子 2」(新潮社、2005年)から(p49)

こういう言葉もあった。「資源もないあんな小っぽけな島国が、戦争に負けて、息の根を止められたはずなのに」(大地の子 1、p375)。

日本の息の根を止めたアメリカが、戦後日本の復興をバックアップした。それは、なぜ、どのようにして。原爆二つを投下、市街地への激しい空爆、それらへの反省や良心の呵責がそうさせたのだろうか。反共の砦とか、朝鮮特需とか習った覚えもある。が、深く理解しているわけではない。機会を見て勉強し直してみよう。

大地の子(サイト内)。阿炳『梅花三弄』(p94)、鄧平化(鄧小平 1904-1997)、夏国鋒(華国鋒 1921-2008)、「大地の子」で有名な大プロジェクト、製鉄所の建設で日中協力|日経クロステック

大地の子

  • 2022/11/14 06:31
  • カテゴリー:読み物

戦時賠償を求めない中国に応えるためにも、中国の工業現代化に日本がなすべきことをさせてほしいと思い

と、東洋製鉄、稲村会長の胸の内を綴っている。新日本製鉄の稲山嘉寛氏がモデル。山崎豊子全集19「大地の子 1」(新潮社、2005年)から(p375)。単行本刊行1991年

「圧倒的な作品」とは聞いていたけれど、これ程とは思わなかった。小説の力を見る思いがする。単に感動するというだけではない、色々と考えさせられる。その一つは戦時賠償の問題。中国が日本に対して戦後補償請求権を放棄したことによって、日本における贖罪意識が薄れてしまうことになったのではないか。よくよく考えてみなければならない。

文庫100冊大地の子(いずれもサイト内)。宝山鋼鉄|Wikipedia

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