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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

凶犯

  • 2021/09/14 06:24
  • カテゴリー:読み物

彼らは、心底憎みきっている相手に、表立っては反対できないものの、誰かがこれを始末してくれることを期待しているのだ。荒唐無稽と言ってしまえばそれまでだが、これは確かな事実だ。もしかしたら、これは中国人に最も典型的な恨みの晴らし方なのかもしれない。ならば、「四兄弟」のような連中がすべて一掃された時、中国人の個性も激変するのだろうか。

暴力と金で村を牛耳る「四兄弟」。それはまた、政治や社会の矛盾、官僚の汚職、退廃的な世情、貧富の差など、国が抱える諸問題の象徴でもある。引用は、張平著「凶犯」荒岡啓子訳(新風舎文庫、2004年)から(p321)。

勢古浩爾著「定年後に読みたい文庫100冊」のあとがきで、本書が紹介されている。脱稿した後に「どうしても一冊加えたい」本だったと。実際に読むとその気持ちがよく判る。「凶犯」、この話は確かにすごい。

文庫100冊(サイト内)

雑貨の終わり

  • 2021/09/10 06:25
  • カテゴリー:読み物

いつも思うのだが、せまい自室にひろがる雑多な物のなかに無印良品の簡素な品をぽんとおいた瞬間の、えもいわれぬもの悲しさはなんであろうか。それは私たちが追いもとめるライフスタイルという言葉のもつ、ある種の空虚さと似ている。

三品輝起著「雑貨の終わり」(新潮社、2020年)に所収の「印の無い印」から(p63)。図書館で借りて来てから随分と時間が経った。なぜこの本を借りたのかよく覚えていない。たくさん借りておいた本も、だいたい読んでしまって終わりが近付いている。図書館のお休みは続く。

テーブルのデザインを検討し図面を起こす際に、無印良品のパンフレットをさんざ眺めたことがあった。出来上がりは、似ても似つかないデザインになったけれど。

10の木工作品第13作は兼用卓(いずれもサイト内)

間宮林蔵・探検家一代

  • 2021/09/08 06:30
  • カテゴリー:読み物

ユーリ先生は卑屈にへつらい、暗がりで業者に金を手渡した。怪しい取引のようだ。わたしは何とも惨めな気分を味わった。ガソリンを買うのにこれだけの苦労をし、平身低頭しなければならないとは。持てる者と持たざる者。ガソリンを握っている者は強い。持たざる者は手に入れることに丸一日を費やし、頭を下げ続け、空しく路頭に迷わねばならない。

高橋大輔著「間宮林蔵・探検家一代-海峡発見と北方民族」(中公新書ラクレ、2008年)から(p166)。間宮林蔵の足跡をたどる探検物語。ハイライトは第三章「失われたデレンを求めて」。清(満州)との交易(朝貢)の地、デレン、そこは現在のノヴォイリノフカ辺りだとか。アムール川(黒竜江)沿いの地。

例えば、現在の日本でガソリン買うのに、持たざる者の惨めさを味わうことはない。それは、商社マンや政府の役人が代わりに頑張って確保してくれている御蔭だ、そんなことをあらためて思った。

最後の第六章「血族」で、林蔵が遺した別の血筋が紹介される。それもあって全体の構成が、足立巻一「虹滅記」に似ていると感じた。

# 高橋大輔(サイト内)

いやな感じ

  • 2021/09/06 06:31
  • カテゴリー:読み物

「あたしもこんなあたしから、そろそろ逃げ出そうと思っている。でも、どんなあたしへ逃げ出すことやら……」

印象的な言葉を残したアビル(百成清一郎)に、主人公は、数年後、思いがけないところで出くわす。根室そして上海、辺境の地で色んな人と遭遇する。高見順著「いやな感じ」(共和国、2019年)から(p200)。単行本1963年初版。川端康成は「異常な傑作」と評したらしいのだが。

主人公はテロリストの加柴四郎、モデルがあるのだろうか。斎田慷堂は、北一輝だろう。砂馬慷一は、戦後政財界の黒幕となるあの人物か。北槻中尉は、青年将校の栗原安秀か磯部浅一。脇は判りやすい、尾垣(宇垣)、長田(永田)、小川(大川)など。

ビンピ(電報、p198)、阿拉勿関(知らん顔、p292)

本書のタイトルから、矢名完次(やなかんじ)のことを思い出した。学研の「学習」に登場した悪役キャラクター。小学何年の「学習」だったろうか。国会図書館に行くことでもあれば探してみよう。

2.26事件(サイト内)。いやな感じ|青空文庫。荒川洋治・評 『いやな感じ』=高見順・著|毎日新聞。「荒馬宗介」キャラクター名鑑

林原家

  • 2021/09/02 06:28
  • カテゴリー:読み物

「おまえが会社にしたことは許してもいいと思っている。社長として私が至らなかった面も大きいからだ」「いいか、今後一切、おまえと仕事をすることはない。会うこともない」

兄社長は、会社の実務全般を仕切っていた実弟の専務を責める。林原健著「林原家-同族経営への警鐘」(日経BP社、2014年)から(p94)。兄弟二人の著作を続けて読んだ。悪いのはおまえだ、と互いに責め合う、それが底流にあるように感じた。

兄の放漫経営と、弟の粉飾決算。幸い事業は回復基調で、嘘をついて借りた金を返済し健全化を進めようとしていた。が、私的な資金流用もあり、銀行の怒りを買い会社は破綻に追い込まれる。事実はそういうことなのだろう。二冊を読むとよく判る。

破綻(サイト内)。「破綻」からの引用(p145)

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